轟 健二
このニュース、覚えてるか?
加藤 恭子
当たり前ですよ。事件から1週間が経つのに犯人の手掛かり1つ掴めて無いって、山田さんも躍起になってましたね。
”山田”と言うのはN県警の警察官で轟 健二の腐れ縁でもある。
轟 健二
それで、俺が呼ばれた訳だが…
加藤 恭子
全く、折角、旅行の計画を立てていたのに、空気の読めない警察ですね。
加藤 恭子
久しぶりに轟さんとイチャイチャ出来ると思ったのに!
轟 健二
それは知らんが確かに旅行の計画が台無しだ。
轟 健二
移動費や必要経費は県警で落ちるらしいから、ふんだくってやる。
うわ〜、轟さんのあの顔はマジな時の顔だ〜。N県警もご愁傷さまですね。
加藤 恭子
それより、たまにはこんな風に電車に揺られるのも良いですね〜
轟 健二
あぁ、そうだな。雪がまた良い。
轟 健二
それはそうと………ん?
加藤 恭子
?どうかしましたか?
轟 健二
……どう言う事だ?
加藤 恭子
…逮捕されましたね。
轟 健二
…取り敢えず、電車降りたらあの野郎に電話するか。
恭子と健二は暫く、窓の外の景色を眺めながら、電車に揺られていた。
加藤 恭子
着きましたね〜
轟 健二
結構、雪が積もってるな。かなり寒いな。
加藤 恭子
手が冷えますね。
轟 健二
そうだな。
轟 健二
取り敢えず、あの野郎に電話するか。
健二はコートのポケットから携帯を取り出し、山田に電話を掛けた。すると、山田はすぐに電話にでた。
山田 隆夫
轟さん!今何処ですか!
轟 健二
A駅に着いたとこだ。それより、どう言う訳だ。事件の犯人が捕まったって。
山田 隆夫
それは後で話します!今、駅の近くに車を停めています!すぐに来てください!
轟 健二
通話
00:33
轟 健二
なんだ、あの野郎。
加藤 恭子
どうしたんですか?
轟 健二
あの野郎、自分の事だけ喋ったら電話切りやがった。
加藤 恭子
珍しいですね。山田さんってそんな事しない人なのに。
轟 健二
なんでも、近くに車を停めてるから、そこまで来てくれとの話だ。
加藤 恭子
取り敢えず、行ってみましょうか。
轟 健二
あぁ、そうだな。
健二と恭子が駅を出ると、近くには小さな駐車場があり、車も何台か停まっていた。
辺りを見渡してみると、奥の方にパトカーとそのすぐ側に1人の男性が立っていた。
轟 健二
あれだな。
加藤 恭子
あれですね。
山田 隆夫
あ、轟さん!加藤さん!こっちです!
轟 健二
お前は何でよりにも寄って、パトカーで来てんだよ。
山田 隆夫
覆面パトカーが全部、出払ってるもんですから。兎に角、乗ってください。詳細は中で話します。
山田 隆夫
どうぞどうぞ、加藤さんも。
加藤 恭子
ありがとう。
健二と恭子はパトカーに乗り込み、山田の運転で目的地の豪邸に向かった。
轟 健二
それでどう言う状況だ。事によっちゃあ何発か蹴りいれてやるからな。
山田 隆夫
止めてくださいよ!
山田 隆夫
兎に角、この資料を見てください。
山田が健二に渡した資料には、事件の詳細が書かれていた。
轟 健二
えーと、被害者は後藤 大輔。年齢は37で身長172の体重はおよそ55前後。頭髪の色は黒で服装は使用人全員着用の制服。
轟 健二
発見者は地元の猟友会のメンバーの1人で、発見時刻が早朝6時頃。当初は人物不明だったが、服装や身体的特徴、頭髪のDNAで近くの豪邸の使用人、後藤 大輔と判明か。
轟 健二
で?こんな資料を見せてどうするんだ?
轟 健二
犯人はもう逮捕されたんだろ?
加藤 恭子
携帯に速報で出てましたから、会見でもしたんでしょうか?
山田 隆夫
いえ、会見などはしていませんし、逮捕もしていません。
山田 隆夫
山田 隆夫
ですが実は…
実は、今回の事件の被害者、佐藤邸の使用人後藤 大輔さんは、佐藤さんのお気に入りなんですよ。
それなのに、1週間経っても犯人に手掛かりも掴めていない県警に苛立ち、圧力を掛けてきまして…
加藤 恭子
圧力って、そんな簡単に掛けれる物なんですか?
轟 健二
いや、無理だろう。そもそも、普通の人は掛け方も知らん。
轟 健二
だが、佐藤とか言う奴は、ここら一帯の名士。様々な事業に手を出していて、警察にもその繋がりはある。
轟 健二
大方、その繋がりで圧力を掛けて来たんだろう。
そんな理由で県警も躍起になって捜査した所、聴き込みで被害者の後藤さんと同じ、使用人の亜希子と言う人物が、後藤さんと男女の関係にある事が判ったんですよ。
それで、県警は亜希子さんに被害者の死亡時刻のアリバイを訊いた所…
轟 健二
それで、アリバイは無く、県警で取り調べの真っ最中か。
加藤 恭子
それを何処かの記者が逮捕と勘違いしたんですね。
山田 隆夫
えぇ、そう言う事です。
轟 健二
だが、その勘違いが現実になりそうだな。
山田 隆夫
それが問題なんですよ。
山田 隆夫
あ、着きました。あそこです。