この森にいたのに気付いてから一時間くらいたっただろうか。
私はこの状況を呑み込めず、同じ場所で行ったり来たりしていた。
でも現状は一向に変わらないのも事実。
旅度 さくら
一先ず、今自分が持っている持ち物を確認する。
塾用の鞄の中に 筆箱、ノート、医学系の本、菓子パン一袋、空のペットボトル、一応入れていたアーミーナイフ(十徳ナイフ) 服装は学校の制服と運動靴。
森の中だと随分と動き難いが、ローファーではなくて運動靴を履いているからまだマシだと思う。
食料は菓子パン一袋だけだし、最低でも一日は保てば偉い。 それでも食料があると考えると、少し心に余裕が出来る。
落ち着き始めた頃、私はここはどこなのか少しでも情報を得る為、最悪の状況を考えて食料調達を兼ねて森の中を散策する事にした。
近くで水の流れる音が聞こえたから、川が流れてるのだろう。
先ずはそこを目指して歩き出した。
整備されていない、木の根で凸凹した道無き道を危なげに進む。
数分歩いただけでも息が上がってきたし、喉も乾いてきた。
傍にあった木に寄り掛かり、溜め息混じりに言葉を呟く。
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愚痴は言いながらも足を動かすのは止めず歩いていると、川の音が前の方向からよく聞こえてきた。
早く水が飲みたいが為か、早足になって危うく転びかけた。
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底がよく見える程に川は澄んでいて、よく見れば魚影も見えた。
私は思わず水に触れる。
冷たいが、体を動かしていて暑かったので丁度良かった。
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そう考えると直で飲んでしまうと病気にかかる危険性があるかもしれない。
煮沸消毒すれば良いのだが、その為の道具も体力も無かった。
せめて水でも飲めればと思ったが、私は飲むのを諦めて川の流れる真逆の方向に歩き始めた。
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私はそう願いながら歩く。
上に行けば行くほど川の幅は狭くなり、小川程の水量にもなっていた。
すると、小さな池のような水溜まりに着いた。
その池の中心部分の水面が浮き出ていた。
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そういうことにしておこうと心の中で呟いた。
その後は空のペットボトルに水をパンパンに入れた。
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今の私は制服姿。しかも夏用のセーラー服。
道中解けかけの雪が積もっていたから、たぶんここは冬が明けた早春くらいの時期だろう。
だから風が冷たくて寒さで死んじゃいそうだ。
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疲れて足が痛いが、寒さを凌げるのならばこんな痛みなど、どうて事ない。
運良く、この水源地の周りには小枝が沢山落ちており、湿気てもいなかった。
両腕で抱え切れる程の枝を集めたら、水源地から少し離れた平らな地面で枝を燃やせるようにバランス良く並べ、その隙間にそこら辺に落ちてた枯葉を丸めた物を置いた。
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私は鞄からアーミーナイフを取り出す。
実はこのアーミーナイフ、父からお土産で貰った物でファイヤースターターの機能もある。
貰った時はもっと他に買うものは無かったのかと思ったが、今思えば本当に感謝しかない。
ロッドという金属の棒を取り出し、アーミーナイフのナイフの背部分を何度か擦り合わせる。
初めは何も起きなかったが、数回やって漸く火花が飛び出して枯葉に火がついた。
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火が枯葉に一気に燃え広がるので驚いたが、直ぐに積んだ枝に入れ、火を移した。
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今やるべき事を終え、お腹が空いたので一つしかない大切な菓子パンをひと齧りする。
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突然、寂しさと涙が込み上がってきた。
突然だったので、自分自身でも困惑していたが、少し思い出す。
いつの間にか知らない森に居て、水を得るのも苦労して、慣れない事をして……。
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私は誰一人居ないこの森の中で、一人泣いた。
気付けば手元にあった菓子パンはもう無くなって、顔と手は涙で染まっていた。
そのまま私は泣き疲れて、焚き火を放って眠りに着いていた。
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