この森に来てから三回日が登った。
始めてここに突然放り込まれた時は昼くらいだったから、三日程経ったと思う。
私は何とかこれまで生き延びていた。
水もあり、暖を取る方法も手に入れて、 そして季節は春だからフキノトウやワラビらしき山菜も見つけられ、川には魚も居た。
野生動物も沢山いて肉類も食べたかったけど、捕まえてから解体するまで想像するとやる気にもなれない。
幸いな事に、クマやイノシシなどの大型獣とは出会してない。
こう思うともし冬の季節にここに居たら、凍死か餓死で死亡間違いなしだっただろう。
本当に私は運が良い。
…ここに突然連れてこられたのが運が良いとは言えないけど。
そんなこんなで、今日は散策範囲を広げようと思う。
私は帰り道に迷わないように置いていく目印用の灰を入れた袋と、水の入ったペットボトル、燻製にした魚を鞄に入れ背負う。
そして、もしも近くに人が住んでいるということも考えて、 助けを求める為に狼煙をあげ、近くに 「助けて下さい」と書いた手紙を添える。
旅度 さくら
私は生きる勇気を出す為に、元気な言葉と笑顔を無理やりでもつくる。
そうすれば自然に楽しくなって元気が出るとお母さんがよく言っていた。
旅度 さくら
数日この森を野宿して過ごしたので、それなりに森の中での歩き方が分かってきた。
旅度 さくら
旅度 さくら
森を抜け、開けた河原までついた。
川の流れは随分と緩やかに蛇行していて、幅も家が一軒建てられるくらい。
野宿でお世話になってる拠点から出発して数十分経っただろうか。
かなり順調に進むことが出来ている。
そんなことを考えていたら、 ふと鼻に刺すような、塩辛い刺激が風と共に私へと運ばれて来た。
一言で言えば、潮風。
つまりは……。
旅度 さくら
ここに来る前からも年に数回しか実際に見なかった海の風景。
久々に見るので白い砂浜を走り回る。
__数分後。
旅度 さくら
はしゃぎ過ぎて息切れして疲れたので一旦直に砂の上に座る。
旅度 さくら
呼吸が落ち着いてきた頃、私は一つ不意に疑問を抱いた。
旅度 さくら
私が良く知る日本の海はこんなに透き通っていて綺麗なスカイブルーじゃない。
海岸も眩しいくらいに白くも無い。
何よりゴミが一欠片も落ちていないし、海面に漂っていない。
旅度 さくら
人が近くに住んでいてゴミを回収しているのなら納得いくが、この数日間一度も私以外に人とは出くわしていない。
旅度 さくら
考え始めると埒が明かないので、思考するスイッチを切って、私が生き残る為のスイッチを付ける。
旅度 さくら
旅度 さくら
塩さえ手に入れれば、淡白な微妙な食事に塩気が足されて随分とマシになる。
そう思うと、夕飯が楽しみになってきた。
私は空になったペットボトルに海水を入れ、来た道を戻り始めた。
塩を手に入れ、焼き魚に塩を振って食べた私は、
嬉しさと旨さと感動によって号泣したのは言うまでも無い。