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このやり取りは、

数ヶ月前まで遡る。

SHiBAta

やぁ

SHiBAta

元気にしてるか?

EN

……なんですか

EN

突然電話なんてしてきて

SHiBAta

そう警戒するな

SHiBAta

と、言っても無駄か

EN

用件があるならさっさと言って下さい

SHiBAta

ふむ…まぁ、そうだな

SHiBAta

君に頼むことと言えば

SHiBAta

人殺し以外無いと思うんだが

EN

ええ、わかっていますよ

重いため息と共に言葉を吐き出す。

EN

今度は誰を殺せばいいんです?

SHiBAta

三上拓海

SHiBAta

実家で絶賛引きこもり中だ

EN

……引きこもりを殺すメリットなんて

EN

無いように思えますけど?

”貴方のような人には”

と言葉を続けた。

SHiBAta

はははっ!

SHiBAta

そうでもないさ

SHiBAta

理由が無ければ君に頼むわけないだろ?

EN

そうですね

EN

わかりました

EN

できるだけ早く

SHiBAta

一つ

EN

なにか?

SHiBAta

殺し方に注文を付けていいかな?

EN

…どうぞ

SHiBAta

三上拓海の死体はこちらで処分する

SHiBAta

出来る限り彼が殺されたという形跡を残さず

SHiBAta

逆に、彼が誰かを殺したように装ってほしい

EN

……随分と回りくどいことをするんですね

SHiBAta

まぁな

SHiBAta

大学受験に失敗した引きこもりが

SHiBAta

実は殺人鬼になっていましたっていうのは

SHiBAta

マスコミが好みそうな話じゃないか

EN

……

SHiBAta

どうせ君は相変わらず

SHiBAta

裏サイトで人殺しを請け負っているんだろ?

EN

あんまりそういうことはっきり言わないで下さいよ

SHiBAta

ははっすまないね

SHiBAta

三上拓海を殺害したあとは

SHiBAta

彼を装い生活して欲しい

EN

え?

SHiBAta

心配しなくても大丈夫

SHiBAta

三上拓海は部屋から出てくることはほとんど無く

SHiBAta

食事も扉の前に置かれるだけ

SHiBAta

実の母親でさえ

SHiBAta

彼の顔を見たのは数年前という悲しい話しだ

SHiBAta

だから、君と入れ替わっていたとしても

SHiBAta

バレはしないよ

EN

…はぁ

EN

いつまで彼のフリをすればいいんですか?

SHiBAta

うーん、そうだなぁ

SHiBAta

もしかしたら、三ヶ月以上はかかるかもしれない

EN

は?

SHiBAta

はははっ!

SHiBAta

どうせ君は相変わらず家も持たず

SHiBAta

ネカフェを渡り歩くような生活をしているんだろ?

EN

まぁ…

EN

そうですけど

EN

状況が違い過ぎます

EN

一緒に生活しているのは

EN

自分が殺した人間の家族なんですよ?

SHiBAta

確かにそうだな

SHiBAta

だがね

SHiBAta

私はこれでも君を高く評価しているんだ

SHiBAta

その程度のことで存在がバレたり

SHiBAta

思わぬミスをするようなことはない

SHiBAta

そう信じているよ

EN

…過大評価だと思いますけどね

SHiBAta

そう謙遜するな

SHiBAta

少し前までごく普通の大学生だったとは思えないほどの素質の持ち主だよ

EN

……

SHiBAta

おっと、これ以上言うと

SHiBAta

君に殺されてしまいそうだから

SHiBAta

この辺にしておこうか

SHiBAta

依頼内容をまとめると

SHiBAta

三上拓海を殺害後

SHiBAta

彼になりすまし

SHiBAta

彼の部屋で数ヶ月過ごし

SHiBAta

その間に受けた殺害依頼は

SHiBAta

三上拓海が行ったように装うこと

SHiBAta

これは

SHiBAta

私が”終わり”の合図をするまで

SHiBAta

続けること

SHiBAta

以上だ

EN

…報酬は?

SHiBAta

二千五百万でどうだ?

EN

わかりました

三上拓海を殺す日は

あちらから指定してきた。

その日、

父親は長期出張、

妹は修学旅行、

母親は不倫相手と旅行に行っているそうだ。

勝手口の鍵は

開いているので

そこから入るように、

との指示だった。

(痕跡を残さずってことは)

(流血はNGだな)

(一番手っ取り早いのは絞殺か…)

(しかし)

(なんだって引きこもりを殺さなきゃならないんだ?)

(ほっときゃいいだろうに)

……

(まぁ、あいつらの思考なんざ)

(理解できない方がまともか…)

(三上拓海の部屋は二階だったな…)

彼は音も立てず、

部屋の鍵を開け

中に入る。

中ははっきり言って汚かった。

床に散らばる洋服に、

食べたお菓子の袋などが散乱し、

足の踏み場もないほどだった。

その部屋で

三上拓海は

昼間だというのに

ベッドで眠っており、

静かに寝息を立てていた。

……

彼は三上の上にまたがり、

上半身を固定すると

三上の顔に

濡れた布を被せた。

三上 拓海

んんっ!?!?

冷たさと

驚きで三上は起き上がろうとしたが

上手くいかず、

手で顔にかけられた布を取ろうとしたが

腕が固定されていたので

どう藻掻いても意味を成さなかった。

三上 拓海

んっ!んんっ!!

頭を持ち上げたところで

彼は素早く持っていた紐を

三上の首にかけ

思い切り

絞めた。

足や腕をバタつかせたが

何の抵抗にもならず

数分後

三上拓海は動かなくなった。

実に呆気ない幕切れだった。

遺体は

依頼人の指示を受けた黒服の男たちが回収し

どこかに運んで行った。

遺体がどうなるのか、

どうなったのか、

彼が知る由もなかったし、

知りたいとも思わなかった。

(で…)

(これからしばらく)

(俺は三上拓海にならなきゃいけないのか)

面倒だ

という言葉を吐き出す代わりに

重いため息をこぼした。

三上拓海を殺して

数日が過ぎた。

紫雲 かぎり

(まるでシリアルキラーだな)

手にした身分証明書を

机の一番上の引き出しに入れ、

鍵をかける。

紫雲 かぎり

(こんなことをして一体なんの意味があるんだ?)

紫雲 かぎり

(三ヶ月以上もその存在を偽る意味も…)

紫雲 かぎり

……

紫雲 かぎり

(意味があるように見せて)

紫雲 かぎり

(その実、意味など無いってのも)

紫雲 かぎり

(あいつの十八番だったりするからな)

紫雲 かぎり

(考えるだけ無駄だってわかってても……)

何度目かのため息をこぼし、

椅子に座ると、

パソコンの電源を入れる。

紫雲 かぎり

(SNSのアカウントはほぼ動いてない)

紫雲 かぎり

(情報を集めるだけのもの、か)

紫雲 かぎり

(ん?いや)

紫雲 かぎり

(鍵付きのアカウントが一つ……)

紫雲 かぎり

……

紫雲 かぎり

(医大の受験に失敗)

紫雲 かぎり

(親の過剰な期待に応えられず)

紫雲 かぎり

(自信を喪失し)

紫雲 かぎり

(引きこもりに…)

紫雲 かぎり

(まぁよくある話か)

紫雲 かぎり

(親に対する恨みつらみ…)

紫雲 かぎり

(六つ年下の妹に対しては)

紫雲 かぎり

(無理のない受験をして欲しい)

紫雲 かぎり

(自分のような失敗はしないで欲しい…か)

出口の無い

真っ暗な迷路の中を

三上拓海は

一人で彷徨っていたのが

手に取るようにわかった。

何度も

何度も

”死にたい”

と書き込まれていた。

”格安で人殺しを請け負ってくれる人がいるらしい”

”その人に頼んで殺して貰うか”

”いや、金なんて無かったわwww”

そんな書き込みを目の当たりにする。

紫雲 かぎり

……

何も聞かず、

何も話さず、

殺してしまったことに

少なからず

後悔の念に駆られる。

紫雲 かぎり

(いや…)

紫雲 かぎり

(話したところで)

紫雲 かぎり

(結果は変わらない)

紫雲 かぎり

(なら、これでよかったんだ)

紫雲は

そう

自分に言い聞かせた。

【さらに数週間後】

SHiBAta

やぁ、元気にしているかい?

EN

なんですか?

SHiBAta

君のお陰でこっちも順調だよ

EN

ということは

EN

この生活も終わりですか?

SHiBAta

残念ながら

SHiBAta

もう少し、かな?

EN

……そうですか

EN

え、もしかしてそれだけを伝えに?

SHiBAta

そうだよ

SHiBAta

他に何の用事があると思ったんだい?

EN

……

EN

苦情を言われるのかと…

SHiBAta

苦情?

EN

一つの集まりを潰したので

SHiBAta

うん?

SHiBAta

ああ、別に気にしてないよ

SHiBAta

一端の集まりだったし

SHiBAta

人数も五人か四人でしょ?

SHiBAta

捕まったのって

SHiBAta

それならどうということも無いさ

EN

……警察内部にも

EN

関係者がいるから、ですか?

SHiBAta

さすが!よく知っているな!

EN

……

SHiBAta

その通り

SHiBAta

中の人がちゃんと仕事をしてくれるはずだから

SHiBAta

君に苦情を言うことは無いさ

EN

……

EN

ということは

EN

今日、連絡してきたのは?

SHiBAta

元気にしてるのかなぁ?って思ってね

SHiBAta

これでも人並みに心配はしているんだよ

EN

…そうですか

SHiBAta

うん

SHiBAta

元気そうでよかった

SHiBAta

では、引き続きそのまま宜しく頼むよ

EN

…はい

紫雲 かぎり

何が心配しているだ……

紫雲 かぎり

お前の

紫雲 かぎり

お前らのせいで

紫雲 かぎり

俺の人生は……

紫雲 かぎり

……

紫雲 かぎり

……ああ、くそっ

時は戻って、

小山敏(こやま さとし)を殺害後、

いつものように財布から

身分証明書を抜き取り、

三上家に戻る。

時刻は真夜中、

家族は全員寝ている、

そう思っていた。

いつもより重い足取りで

二階の階段を上がる。

部屋の前まできて、

ふと、

視線を感じた。

首だけわずかに動かし、

視線の元を辿る、

そして、

目が 

合った。

(あ……)

すぐさま目を反らし、

部屋に入り、

そっとドアを閉める。

(見ら…れた?)

明らかな失態。

あり得ない失態。

(まずい)

(どうする?)

(どうする?)

(隣の部屋だからあれは妹か?)

(いや、落ち着け…)

(らしくないぞ)

ドアを背にして、

そのまま

ズルズルと座り込み、

フードを脱ぐ。

紫雲 かぎり

(明かりは消えていた)

紫雲 かぎり

(フードも目深に被っていた)

紫雲 かぎり

(目は合ったが…)

紫雲 かぎり

(はっきりとは見えてないはず)

本当に?

紫雲 かぎり

(見られていたら…?)

紫雲 かぎり

(もし、三上拓海ではないとバレたら…)

紫雲 かぎり

……

紫雲 かぎり

(逃げ出せば無かったのことになるだろうか)

紫雲 かぎり

(ここには俺が居たという形跡は無い)

紫雲 かぎり

(この暗がりの中だ)

紫雲 かぎり

(見間違えたと警察に言われるのがオチだろう)

本当に?

紫雲 かぎり

……

目撃者は

処分する

それが鉄則

そうだろ?

紫雲 かぎり

……

紫雲 かぎり

(何もしていない)

紫雲 かぎり

(ただ、俺の姿を見ただけ)

紫雲 かぎり

(それだけで)

紫雲 かぎり

(殺せ、と?)

今まで何人殺してきた?

紫雲 かぎり

(そういう話しじゃない)

殺人現場を目撃した

大学生も殺したじゃないか

紫雲 かぎり

(でも、あれはそういう依頼があって)

依頼が無いと殺せない?

本当に?

紫雲 かぎり

……

”あの時”殺した彼女は

誰かに依頼されていたのかい?

紫雲 かぎり

……

そうではないだろ?

”あの時”君は

紫雲 かぎり

(煩い……)

紫雲 かぎり

(煩い煩いうるさいうるさい!!)

紫雲 かぎり

(あれは……)

紫雲 かぎり

(あれは事故だったんだ…)

紫雲 かぎり

(俺は彼女を助けたかった…)

紫雲 かぎり

(助けたかったんだっ…)

でも、

君は彼女を

殺したけどね。

ある意味あれも、

救いだったのかな?

SHiBAta

やぁ、おはよう!

SHiBAta

元気かい?

EN

……

SHiBAta

ん?どうした?

SHiBAta

元気じゃない

EN

用件はなんですか?

SHiBAta

え?

EN

下らない話しをする気分じゃないんです

SHiBAta

…そう

SHiBAta

では、簡潔に伝えよう

SHiBAta

追加で三上夏奈(みかみ なつな)も殺害してくれ

EN

は?

SHiBAta

三上拓海の妹

SHiBAta

隣の部屋にいる妹さんだよ

EN

なん、で?

SHiBAta

邪魔だから

SHiBAta

それだけだよ

EN

……

EN

……ハハッ

SHiBAta

どうした?

EN

いや……

EN

まさか

EN

あんたに救われる日が来るとはね

SHiBAta

どういうことだい?

EN

どうだっていいだろ?

EN

追加の件は了解した

EN

今日の夜にでも殺すよ

SHiBAta

いや、殺すのは今日の夕方にしてくれ

EN

夕方?

SHiBAta

母親の帰りが遅くなるらしい

SHiBAta

妹さんが先に帰って来るから

SHiBAta

帰ってきたら殺してくれ

EN

死体は?

SHiBAta

そのままでいい

SHiBAta

ちゃんと、三上拓海が殺したように装ってくれ

EN

……かしこまりました

SHiBAta

では、頼んだ

SHiBAta

彼女を殺害したら君は晴れて自由だ

SHiBAta

報酬は追加分も合わせて

SHiBAta

三千万、振り込んでおくよ

EN

ありがとうございます

ああ、

本当に

ありがとうございます。

あんたに心底感謝するのは

これっきりにしたいけど。

今は、

心から感謝しよう。

(これで俺は……)

ゆっくりと階段を降りる。

(依頼を受けたから)

(あの子を殺すんだ)

台所で

今までの犯行で使って来た包丁を

手に取る。

(自分の犯したミスを)

(無かったことにするために)

(殺すんじゃない)

洗面所へ向かうと、

勝手口のドアノブを

一生懸命捻っている

三上夏奈がいた。

(そうだ)

(俺は私利私欲のために殺す)

(小山敏とは)

(違う)

三上が振り返り、

目が合った。

三上 夏奈

あっ

大声を出そうとした口を

手で塞ぎ

(そう)

(違うんだ)

振り上げた

包丁を

首に

突き刺した。

……俺は

……俺は

……

ニュースキャスター

三上夏奈さんら七人が亡くなった事件の続報です

ニュースキャスター

先日亡くなった三上夏奈さんのお宅を調べたところ

ニュースキャスター

夏奈さんの兄、三上拓海さんの部屋から

ニュースキャスター

被害者の持ち物が複数発見されました

ニュースキャスター

警察は、三上拓海さんが事件と何らかの関わりがあると見て捜査を開始すると共に

ニュースキャスター

三上拓海さんを全国で指名手配することとしました───

便利屋・紫雲かぎり〜サクリファイスの花〜

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