???
あの……助けてくれてありがとうございました。

遠木 凛華
私は1年C組の遠木 凛華です。
先輩方のお名前は……?

川野辺 喜雨
俺は川野辺 喜雨。2年A組。
よろしくね、遠木さん。

太賀 萩
俺は太賀 萩。喜雨と同じ2年A組だ。
よろしくな。

遠木 凛華
よろしくお願いします!

遠木 凛華
あ、あと、そちらの方のお名前は……

『カワノベさん』
ん? ああ、僕?

『カワノベさん』
自由に呼んでくれていいけど……
周りからは『カワノベ』って呼ばれてるね。

遠木 凛華
カワノベって……あの『カワノベさん』ですか?

川野辺 喜雨
……え?

川野辺 喜雨
遠木さん、何か知ってるの?

遠木 凛華
はい! 勿論知ってます!

遠木 凛華
私、小さい頃から都市伝説とかそういうのが大好きで……。

遠木 凛華
幽霊だってずっと見たいと思ってたんです。

遠木 凛華
『カワノベさん』は私が1番好きな幽霊なんですよ!

遠木 凛華
カワノベさん……いやカワノベ様と呼ばせてください!

『カワノベさん』
うーん……。
せめてさん付けで……。

『カワノベさん』
何となく距離感じちゃうし、僕はみんなと仲良くしたいんだ。

川野辺 喜雨
……カワノベ、なんか人気者だね?

『カワノベさん』
まあまあ。
キミもカワノベじゃんか〜。

川野辺 喜雨
俺は君とは違うし。

『カワノベさん』
なに〜!?
確かにキミ幽霊じゃないけどさ〜!!

太賀 萩
……そういえば、魔法少女好きは?
名前はなんて言うんだ?

???
……あ、わたし?

突然声をかけられた少女はスマホから顔を上げた。
どうやら学習室に入ってからは暇でスマホを見ていたようだ。
太賀 萩
ああ。お前のことだ。
お前、名前は?

毒野 夜宵
……毒野 夜宵。
魔法少女に憧れる17歳。

毒野 夜宵
最近の好きな魔法少女物は「魔法少女ミーアの幻想」。

川野辺 喜雨
……あ、本当に魔法少女好きだったんだ。

『カワノベさん』
……そう、この子だよ!

毒野 夜宵
……何? カワノベ、だっけ?

『カワノベさん』
この子……夜宵こそが僕が2人に探すように伝えた能力者だよ!

『カワノベさん』
まさか本人から現れるなんて!

遠木 凛華
……?

遠木 凛華
毒野先輩が……ですか?

『カワノベさん』
ああ! その通り!

川野辺 喜雨
どういうこと?

川野辺 喜雨
……そのままの意味ってことでいい?

『カワノベさん』
勿論! それ以外に無いよ!

『カワノベさん』
僕の独自調査によると、キミは既に能力が覚醒しているはずなんだけど……

『カワノベさん』
何か身に覚えはない?

毒野 夜宵
そんなのあったら今頃魔法少女に憧れてるなんて言ってないよ。

毒野 夜宵
でも……

川野辺 喜雨
何か身に覚えがあるの?

毒野 夜宵
……昨日、おもちゃのナイフみたいな物を道端で拾ったの。

毒野 夜宵
何も切れなかったし、おままごと用の物をデコっただけに見えたんだけど……。

毒野 夜宵
何となく目が離せなくて、拾ったの。
実物、カバンの中に入ってるよ。見る?

『カワノベさん』
……それだ!

『カワノベさん』
そのナイフ、僕に見せて。

毒野 夜宵
……いいよ。これ。

夜宵の言う通り、夜宵が昨日拾ったというナイフはどう見てもおもちゃのナイフをデコレーションしたような物に見えた。
しかし、カワノベはそれを見た瞬間、やっぱりと呟いた。
『カワノベさん』
……やっぱり!

『カワノベさん』
おめでとう、キミは死霊を祓う能力者に選ばれたんだ!

『カワノベさん』
毒野 夜宵だっけ?
これからよろしくね!

川野辺 喜雨
……はあ?

毒野 夜宵
ええっと……?

毒野 夜宵
つまり……わたし、今日から魔法少女ってこと?

毒野 夜宵
このナイフをステッキ代わりにしてその死霊っていう奴らと戦うってことだよね?

『カワノベさん』
うーんまあ四捨五入したらそう!

川野辺 喜雨
適当ぉー……。

毒野 夜宵
ふふ……。

毒野 夜宵
魔法少女……。ステッキ……。

夜宵は、デコレーションが反射しキラキラと光っている武器のナイフを見ながら微笑んだ。
太賀 萩
そういや、遠木はどうしてあそこに居たんだ?

遠木 凛華
あ、ここで自習してたんです。
授業で分からないところがあって……

遠木 凛華
自習を終わらせて帰ろうとしたらあの化け物と遭遇したんです。

遠木 凛華
その死霊に追い詰められて死にかけた時に御三方が助けに来てくださって。

遠木 凛華
本当にありがとうございました。
皆さんは私の命の恩人です!

川野辺 喜雨
面と向かって言われると照れるね〜。
まあ別にいいんだけど……。

川野辺 喜雨
俺達はやるべきことをしたまでだから。

遠木 凛華
本当にありがとうございます!

太賀 萩
……なあ、喜雨。

川野辺 喜雨
何?

太賀 萩
……お前、カッコつけてる?

川野辺 喜雨
はあ?

『カワノベさん』
まあまあ。
本当のことだからいいじゃないか。

川野辺 喜雨
俺がカッコつけてるていで話を進めないでくれる?

毒野 夜宵
……あの、帰っていい?

毒野 夜宵
今日、漫画の単行本発売日だから今から本屋行きたいんだけど……。

『カワノベさん』
ああ、確かに遅くなっちゃったね。
それじゃあ今日は解散しよう!

『カワノベさん』
夜宵と凛華の2人も、僕に会いたいとか気になることがあって聞きたいとかあったら屋上に来てね。

『カワノベさん』
そこでなら色々話してあげるから!

遠木 凛華
え……でも屋上は立ち入り禁止じゃ……?

川野辺 喜雨
うわ、遠木さん優等生。
……どこかの誰かとは違って。

太賀 萩
お前も特に躊躇いもなく入ってただろーが!

『カワノベさん』
まあまあ。さ、生きてる人は帰りなよ!

『カワノベさん』
キミ達、まだ能力持ちの生徒を探さなくちゃいけないんだからね?

川野辺 喜雨
そうだったね。……めんどくさ。

太賀 萩
本音漏れてるぞー。

遠木 凛華
あの……

遠木 凛華
その能力持ちの方を探すお手伝い、できませんか?

遠木 凛華
皆さんの力になりたいんです!
……能力というものは持っていませんが

『カワノベさん』
うーん、まあそこはキミ達で相談してよ。
僕が全部判断するわけにもいかないし。

川野辺 喜雨
ま、何かしらは出来ると思うよ。
その何かしらがまだ思いつかないだけで。

『カワノベさん』
はいはい、それじゃあもう帰りな〜!
暗いと危ないからね〜。
