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カワノベさん

第6話 - 第6話願いが叶うおまじない

2025年03月29日

#一次創作

#ホラー

#バトル

#幽霊

宵月シノ

『カワノベさん』

大変だよ！

『カワノベさん』

このままじゃ学校の生徒が呪われちゃう！

川野辺喜雨

……え？

あまりにも突然で突拍子のないカワノベの発言に、喜雨達は首を傾げた。

『カワノベさん』

最近学校の生徒達の様子を観察していて気付いたんだ。

『カワノベさん』

この学校の生徒達───特に1年生を中心に、とあるまじないが流行っているらしいね。

太賀萩

遠木は1年の中で流行ってるなら知ってるんじゃないか？

遠木凛華

まじない……？

川野辺喜雨

……その様子じゃ知らないみたいだね。
カワノベ、それって本当に流行ってるの？

川野辺喜雨

それに、まじないがどうとかなんて今初めて聞いたんだけど。

毒野夜宵

……わたしもまじないなんて今初めて聞いた。

『カワノベさん』

本当に流行っているみたいだよ。
1年生はほとんどその話ばっかりだった。

川野辺喜雨

……それで？

川野辺喜雨

俺達にそのことを話したってことは死霊退治に何か関係があるんだよね？

『カワノベさん』

勿論！

『カワノベさん』

そのまじないがとても危険なものでね。
下手したら学校の生徒全員呪われるかも……

太賀萩

そんなこと有り得るのか？

『カワノベさん』

有り得るから大変なんだよ〜！

『カワノベさん』

そのまじないの元凶が、結子っていう名前の女性の霊なんだけど……

『カワノベさん』

特定の場所でとあることをすると彼女が現れて、召喚者の願いをひとつ叶えるんだ。

川野辺喜雨

でも、代償があるんだよね？

『カワノベさん』

勿論！

『カワノベさん』

霊であれば誰も代償のない契約なんてしないさ。

『カワノベさん』

重要なのはその代償がどれほど重大なものなのか、っていうところだよ。

『カワノベさん』

その結子っていう霊……高代結子は召喚者への代償で、死を求めてくるんだ。

太賀萩

マジかよ……。

川野辺喜雨

……その犠牲になった人は？

『カワノベさん』

今のところは居ないよ。

『カワノベさん』

でも、いつ誰が試すかすら分からないんだ。

『カワノベさん』

だから、早く祓えるといいんだけど……

高代結子

あら……。
今、私のことを呼んだかしら？

川野辺喜雨

もしかして呼び出しちゃった？
お呼びじゃないんだけどね。

『カワノベさん』

いや、今回は彼女を呼んだことにはなっていないはず。

『カワノベさん』

そうだよね？高代結子。

高代結子

ふふふ……。

つい先程まで話題に上がっていた女の霊、高代結子はカワノベにそう問われると笑みを浮かべる。

すると───

高代結子

はあ……君のせいでバレちゃったじゃない！
もう少し人間の反応を楽しもうとしたのに。

『カワノベさん』

キミのその性格、全く変わってないね。

川野辺喜雨

……は？

結子が残念そうにそう言う。突然の結子の登場で緊張していた4人は、予想外の展開に拍子抜けしてしまったのだ。

毒野夜宵

……これが高城結子？

毒野夜宵

随分とフレンドリーな霊なんだね。

川野辺喜雨

で、話題沸騰中の幽霊さんは何をしに来たのかな？

高代結子

あらあらそんなに怖がらないで。
安心して、ただの様子見よ。

高代結子

──今はね♪

高代結子

あぁ、一つだけ言っておくわね。

高代結子

私は私を呼び出した人の願いを聞いて、その代償を求めているだけ。

高代結子

おかしなことはひとつもしていないじゃない。
貴方達に祓われるつもりはないわ。

『カワノベさん』

でもキミ……“話を聞く”だけだよね？

『カワノベさん』

霊的な存在でなくても出来るようなことの代償に死を求めるなんておかしくないかい？

川野辺喜雨

うわ、本当だ……。

川野辺喜雨

確かに話を聞くって言ってた……。

高代結子

へぇ……面白いわね。

高代結子

それじゃ、私はここらでお暇しようかしら♪

高代結子

それでは皆さん、また今度〜♪

そう言うと、高城結子は一瞬にして空気に溶けるように消えた。

『カワノベさん』

ほら、これで分かったよね。
幽霊は趣味の悪い奴らばかりなんだよ。

『カワノベさん』

その中でも死霊は特にね。

川野辺喜雨

でも……高城結子を祓うなんてどうすれば……

太賀萩

やっぱり地道に情報収集からか？

『カワノベさん』

それじゃあよろしくね〜！
何かあったら教えてくれればいいよ。

毒野夜宵

わたし達に面倒事押し付けすぎじゃない？

毒野夜宵

カワノベも何か出来ることをしてよ。

『カワノベさん』

僕？僕は守護霊だからキミ達を守ることぐらいしかできないよ？

毒野夜宵

使えない守護霊……。

川野辺喜雨

それじゃあ分かった。

川野辺喜雨

俺達じゃ聞き込み調査は大変だと思うから、1年生への聞き込み調査は遠木さんに頼んでもいいかな？

遠木凛華

私がですか……？

太賀萩

お前がまじないについて知らなかった理由についても気になるな。俺もそれがいいと思う。

毒野夜宵

……わたしは誰でもいい。

『カワノベさん』

それじゃあ決定かな？
頑張れ凛華〜。

遠木凛華

はい！皆さんのお役に立てるように頑張ります！

遠木凛華

（と言っても、調査なんてどうしたらいいんだろう？）

遠木凛華

（頑張るって言った手前助けを求めるのも恥ずかしいし……。）

遠木凛華

（とりあえず図書室で調べなきゃ！
その為に来たんだもんね、うん！）

？？？

──出入口で立ち止まるのは通行の邪魔になりますよ。

？？？

……入るなら中に入ってくれませんか？

遠木凛華

あっ、ごめんなさい……！

いつの間にか凛華の背後には1人の女子生徒が立っており、凛華に入るなら図書室に入ってくれと促した。

凛華はそのまま図書室に入り、女子生徒が何をするのかを観察していた。

？？？

……。

遠木凛華

（あの子……隣のクラスの子だったはず。
確か名前は──）

？？？

……何かあるなら言ってください。

？？？

あなたの視線がうるさくて読書に集中できないのですが。

遠木凛華

あ、えっと、その、ごめんなさい！

遠木凛華

何をするのか気になって……。

？？？

はぁ。

？？？

……この本が気になるんですか？

遠木凛華

えっと──

遠木凛華

（よく分からないけどそう言って誤魔化すしかない……！）

遠木凛華

実はそうで！

遠木凛華

私も前からずっとその本が気になってたんですけど、図書室を確認しても全く無くて！

遠木凛華

（本当にその本初めて見たし、理由としてはおかしくないはず──！）

？？？

……まぁ、私が定期的に借りているので。

？？？

図書室に無いのは当然とも言えますね。
……私が読んでいたのはこの本です。

？？？

本の内容が気になるのでしょう？

そう言うと、少女は本のページにしおりを挟んでから凛華に本を手渡した。

？？？

挟んであるしおりはそのままにしておいてくださいね。

遠木凛華

あ、ありがとうございます……。

遠木凛華

（よく分からないけど何かの本だ……。
どんな内容なんだろう？）

“日本の伝説や怪談上の妖怪・幽霊”

遠木凛華

（日本の妖怪や幽霊についての本……？）

遠木凛華

（何かいい情報はあるかな？）

遠木凛華

……？

遠木凛華

（何だろう、この汚れみたいなもの──）

遠木凛華

──！？

凛華が本のページにある汚れのようなものに触れると、その汚れは宙に浮かび上がり──

少女の体の中へと入るように消えていった。

カワノベさん

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