???
それでは、試練を始めよう

???
時間は5分。君たちの本当の姿を、存分に曝け出したまえ

tr
痛った……、はぁ、はぁ……

pn
大丈夫か、トラゾー!怪我はないか?!

tr
あちこち擦りむいたけど、大丈夫…

kr
……で、どうする

sn
と、トラゾーさんを見殺しにして、3人だけ助かるなんて、嫌です……!

tr
考えるしか、ない…

tr
状況も、整理しないと…

pn
そうだな……俺も考える…

tr
犯人の目的は何だ?1つしかない

tr
デスゲームに翻弄されるのを見て、楽しむことだ

pn
あるいは。……それを裏サイト的なところで公開して、金を稼ぐとか…

sn
ありそうですっ。……如何にもありそうです…

tr
そこで、1つ、疑問があるんだ……

tr
ここには、カメラも盗聴器もないのにどうやって、俺たちを観賞するんだ?

kr
確かに……、覗くような隙間も無いし…

tr
だとすると、犯人はどこから、俺たちを観賞しているのか…

tr
俺は…、この中に犯人がいるんじゃないかって、思ってる…

sn
そっ、そんなっ……?!僕たちの中に、犯人なんて…

tr
だって、犯人が観賞するなら、どこが一番観賞しやすいと思う…?

tr
5分という短い時間で死ぬか生きるかのスリル…、

tr
友達同士が争っている様子……

tr
それを楽しむ為には、ここに混ざること…

pn
た、確かに……、よく映画でもあるよな!

pn
仲間の中に黒幕が居たり、友達が裏切ったりとかっ!

sn
でも、犯人は死ぬ可能性を考えなかったんですか…?

tr
そこで、それが疑問になる。

tr
でも、俺たちの配られたカードに死ぬ可能性がないカードが2枚あったよな?

kr
それって……、

pn
<断罪者>……?

tr
そうだ、<断罪者>は、どちらかを拷問すれば、リスク無しに出ることができる

sn
この中で、<断罪者>のカードを持ってるのは……

pn
……俺とクロノアさん……

tr
俺の考えが正しければ、2人のどちらが、このデスゲームの犯人ってこと

pn
俺目線…クロノアさんが犯人ってことになりますね…

kr
……………

sn
……あ、あの…本当に2人の中に犯人が居るんですか……?

tr
そうでなかったら、カメラと盗聴器がない理由は何なんだよッ!!?

tr
無能の単細胞生物は黙ってろッ!!

sn
ひッ、ご、ごめんなさいぃ……!!

pn
クロノアさん……そんな、嘘ですよね…?

kr
……………

kr
でも、俺たちが犯人側の人間だと断定できる証拠はない

kr
超小型のカメラや盗聴器があるかもしれないでしょ

sn
そ、そうですよ!今の時代、そんなのたくさんありますし……!

tr
何言ってるんですか、クロノアさん?

tr
もしかして、クロノアさんが犯人なんですか?

tr
今は、わずかな時間の限りを尽くして、犯人を見つけ出さないと全員が死ぬって時ですよね?

kr
それが、間違いだったとしたら?

kr
だとしたら、俺たちは、少なくとも3人は生き残れるチャンスを無駄にして、全員で犬死することになる

tr
俺を見殺しにして助かるなんて選択肢、最初から論外だろッ?

kr
トラゾーは、見捨てられたくないから、議論をデスゲームから逸らしているだけでしょ

kr
それ自体は、トラゾーが自身の為に出来る最善の努力だから否定しない

kr
だけど、俺も、自分たちの為に最善の努力をさせてもらう。

kr
それの、邪魔はさせないよ

tr
クロノアさんが犯人ですかッ?!

tr
俺が真相を見破ったから誤魔化そうとしてるんですよねッ?!

tr
ぺいんとッ、しにがみさんッ、耳を貸すなッ!!

tr
こんな近くに犯人がいるなんてなッ?!

tr
友達ごっこまでして、デスゲームをさせたかったのかよ?!?!

kr
黙れ……ッ!!!

誰も一度も聞いたことのないクロノアの大声に、トラゾーさえもが絶句してしまう……。
kr
その自己中もいい加減にしろッ!!

kr
どうせ、その後適当な嘘でも付いて、しにがみくんを<死刑囚>にすることは分かってんだよッ!

kr
いつもいつも、……いつもいつもいつも、付き合わされて、振り回されてきてッ……

kr
お前の心の鬱憤を叩きつける為だけの、ぶら下げられたサンドバッグだったッ!

kr
俺が付き合わないとッ…、

kr
冷たく当たってきたり、自暴自棄になったり、自殺をほのめかしたり!!

kr
俺が、どれほどの善意から……、

kr
そしてどれほどにお前に付き合わされてたなんかなんて、想像も出来ないだろッ!!

sn
……く、……クロノアさん………

tr
………………、

さっきまであんなに息巻いていたはずのトラゾーまでもが、絶句している。
トラゾーにとってクロノアは、どんな心の悩みも打ち明けられて、そして受け止めてくれる、無二の親友だと思っていたのだから。
kr
トラゾー。お前のこと、昔から、大ッ嫌い

kr
でもね、それでもお前のサンドバッグにはなり続けてあげた

kr
お前に、もうサンドバッグは嫌だと言い出すことさえ、面倒くさかったから

tr
………あんなに……、

tr
あんなに……、親身に……聞いてくれたのにですか……?

kr
頷いて適当な相槌を打ってれば、お前の心は楽になるんだろ

kr
その程度のことには付き合ってあげたよ。

kr
……俺たち、仲良し4人組だそうだから

tr
………、…………っ

tr
昔から大っ嫌いって、……いつの昔から……?

tr
……出会った1番最初からの訳、……ないですよね……?

kr
……………

kr
……うん。出会った一番最初は、俺にとっても、お前は親友だったよ

kr
でも、……多分、あの日を境に、俺の心の中で、それが変わったんだ……

pn
わ、わかんねぇよ……!?あんなに仲良かった2人が、どうして……!

kr
今思い出すと、本当に憎くたらしくて、悲しくって……

tr
一体……、俺は何を……、したって言うんですか………

kr
………………

kr
あの日ッ、お前は絶対に行くって言ったッ!!

kr
俺の為なら、取りに行くぐらい大丈夫だってッ!!

kr
それなのにトラゾーはッ、俺の命にも関わる、大事な薬を取りに行かなかった!!

kr
俺は、どうしてもその日はッ、留守にするなと親に言われてたからッ、家で待ってたッ!!!

kr
でもッ、でもッ、来なくて、ずっとずっと待ってたのにッ、来なくてッ!!

kr
死にかけたッ!!!呼吸も出来なくて、頭もガンガンしてッ、ついには倒れたんだよぉッ!!

kr
家には、誰もいない!!誰も助けてくれないッ!

kr
しかもッ、……雨で……、………雨で………ッ

kr
親は帰りが遅くなったッ、そして、俺が死ぬギリギリのところで帰ってきて…俺はあと少しで死ぬところだった。

kr
もちろん、100%、トラゾーが悪い訳じゃないだろうよ。

kr
俺にも非があったんだろうよ…

kr
お前になんかに頼まずに、俺が親に言われてたこと無視して、

kr
自分で薬を取りに行けばよかったんだろうから、俺ももちろん悪いんだろうけどさッ

kr
とにかくあの日から、俺はお前への見方がガラリと変わったんだッ!!

kr
あの日を境に、お前はもう親友じゃなかった!!

kr
だからあの日から!あの日からずっと!!

kr
トラゾーッ、お前なんか大ッ嫌い!!

kr
ようやくそれをこうして口に出せて、俺は心から清々するッ!!!
