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??

柚月は、いわゆる いじめには遭ってないかな?

吉田

吉田

……さぁな

??

正直に言って欲しい

??

あとから「やっぱり こうでした。ごめんなさい」は嫌いなんだ

??

答えてくれたら俺は帰るからさ

それは「答えるまで帰らない」と言う意思表示でもあった。

取り巻き達は泣きそうな顔でサラリーマンと吉田の間で視線を往復させる。

___吉田は組んでいた足を解くと背もたれに深く背中を預けて天井を向いた。

吉田

……まぁ無いと言ったら嘘になるな

秀平

吉田っ……

秀平が焦った表情で腰を浮かせる。 吉田は片手で秀平を制すると、目だけサラリーマンに向けて口を開いた。

??

……そうか

吉田

……………でも

吉田は唇を舌で舐めると体ごとサラリーマンに向き直った。

吉田

今は柚月にもトモダチ?みたいな奴がいるんですけど

吉田

そいつ最初は、柚月にちょっかい出してたグループにいたんだよね

吉田

まぁ簡単に言うと寝返り

吉田

…あれはオレもびっくりした。今は柚月の理解者はこの俺です、みたいな感じだけどさ

吉田

おい待てよと。お前も同罪だろと。あとで説明するけど、そいつ相当いろいろやってたんだぜ

サラリーマンはしばらく吉田をじっと見据えていたが、やがて鼻を鳴らして視線を逸らした。

??

………確かに…話を聞く価値はあるかもね

瞬間。 吉田の目と口が卑しく弧を描いた。

だが それも一瞬のことで吉田はすぐに明朗とした笑みを浮かべる。

吉田

. ....
オレからは大した情報あげられなかったからお詫びとして、そいつの情報教えてあげる

吉田

正義の味方気取りの自称柚月のオトモダチ__

吉田は足を組むと、スマホにその写真を表示させてサラリーマンに提示した。

スマホには2年の時に撮った 山崎孝太の写真が表示されていた。

吉田

山崎孝太って言うんだけどさぁ…

信太郎

な、なぁオレ達大丈夫だよな…?

秀平

大丈夫だって。吉田が上手いこと孝太に水向けてくれたんだからさ

吉田達は店を出ていた。 入り口近くに設けられているスロープに屯(たむろ)し、時折ガラス張りの窓から店内を窺う。

信太郎

でも…アイツ柚月の___なんだろ?オレ達のこと どっかに報告したりとか…

秀平

だから!吉田が上手く誤魔化しただろ。お前吉田が

吉田

あいつさ、全然表情変わんなかった

尚も不安気な信太郎に、吉田は諭すように続けた。

吉田

ずっと営業スマイル。フツー「そう言う時」ってもっと切迫詰まってるもんだろ?

吉田

実際オレらに話しかけるまでずっとパソコンやってて、「あ、そう言えば」みたいな感じで話しかけて来た

吉田

___あいつが欲しいのはたぶん証言だけ。だからオレ達がどうこうってのは無い

信太郎

そ、そっか吉田がそう言うならそうだよな

秀平

だから言ってんだろ

吉田

……………けど

秀平

え?

吉田は再びガラス張りの窓に目をやった。 店内にはまだサラリーマンが座っている。

サラリーマンの指は軽快にパソコンのキーボードを叩き、時折手元のスマホを確認する。 吉田はそれを目を細めて眺めていた。

信太郎

吉田?

___店内のサラリーマンがパソコンを片付け始めた。 吉田は窓から視線を外すとスロープを下った。

信太郎

吉田

秀平

吉田
なんか気になることでも

吉田

今日はもう解散

取り巻き達が慌ててあとを追う。 吉田は振り替えらずに淡々と告げた。

吉田

ちょっと用が出来た

柚月の英単語帳はまだ見つからないらしい。

「100問テスト」の貼り紙を見た日から柚月の英単語帳が行方不明だ。家にも塾にも無かったらしい。

たかが学校内で行われる小テストだけど、柚月の(今の)お父さんはかなり厳しいらしくて勉強しないわけにはいかないらしい。

だから見つかるまでは俺の単語帳を柚月と一緒に広げている。

___でもこんなに不自然に単語帳が紛失すると、考えざるを得ない。

事実、100問テストが近いのに、最近毎日 吉田の取り巻き達がこの教室に来て信太郎と騒いでいる。

そして額をつつき合わせて単語帳を捲る俺たちを見て 「陰キャどうしがイチャイチャ」だの「あんなんで勉強出来んのか」だの「孝太はもう受かったからお遊び感覚」だの好き勝手言っている。

……やっぱりあの人達が関係しているんだろうか。 それとも先輩が危惧してた三津屋が…?

だとしたら俺がしっかりしないといけないのに。 先輩にも「お前がしっかりしろ」と言われたのに。

山崎 孝太

はぁ…

自分の不甲斐なさに対する苛立ちで、知らずため息が溢れた。 向かいに座っていた柚月が顔を上げた。

柚月は今のため息を違う意味で解釈したらしい。 泣きそうな顔で俯いた。

鳴沢 柚月

……ごめんね。僕が単語帳無くしちゃったから…勉強しにくいよね

山崎 孝太

あっ…いや……

鳴沢 柚月

ごめんね。あとは孝太君が使っていいよ

俺が弁明の言葉を挟む前に、柚月は立ち上がって教室を出て行ってしまった。

追いかけようと席を立った俺の右肩に____ 小さな嘲笑がぶつかった。

100問テストの勉強で教室はいつもより静かだから聞こえた。

そっと振り向くと、さっきまで騒いでいた吉田の取り巻き____信太郎と秀平がニヤニヤ笑いながらこっちを見ていた。

山崎 孝太

……………

……秀平は取り巻きの中で一番吉田に忠実だ。 きっと今の状況を余さず吉田に伝えることだろう。

あの人がこの状況を看過するはずがない。

…………俺がしっかりしないといけないのに。

しかし予想に反して 柚月の単語帳はその後すぐ見つかったようだ。

ロッカーに入っていたらしい。 不自然な決着だったが、なんとなく暗い空気を払拭するように努めて明るく「よかったな」と答えたけど

返って来た柚月の返事は「ごめんね」だった。

~jealousy 3~

秀平

なんで単語帳返したんだよ

昼休み。 僕は「無法地帯」にて吉田の取り巻き達に囲まれていた。

取り巻き達の顔には怒りが色濃く浮かんでいる。 ___無理もない。

彼らがリスクを犯して鳴沢柚月の英単語帳を僕に託してくれたのに、 後ろめたさに勝てず鳴沢柚月の元に返してしまったのだから。

信太郎

オレがどんだけリスク犯したと思ってんだよ

秀平

吉田もオレ達もお前に協力してやったのに何勝手なことしてんの?

勉強道具が無くなってしまえば、僕は鳴沢柚月の上に立てる。

そう、思ってたけど。だけど。

相手の一方的なハンデで得た結果を、完全な勝利と言っていいのだろうか。 そうでもしないと僕はあの人に勝てないのだろうか。

違う。 正々堂々、同じ条件下で戦っての勝利を僕は望んでいたはずだ。 __だから単語帳を鳴沢柚月に返したけど

信太郎

一番になりたいんじゃなかったのかよ

秀平

柚月を抜かしたかったんだろ?

彼らの非難を浴びていると、自分が間違っているように感じてしまう。やっぱり返すべきじゃなかったのか…。

口ごもっていると、秀平が苛立たし気に舌打ちした。

秀平

なんなのお前。せっかくオレ達が協力してやってんのに

秀平

元生徒会長だからってオレ達を見下してんだろ。
吉田に言って次の「透明人間」お前にして貰うからな___

吉田

___ずいぶん怒(いか)ってんなお前ら

踵を潰した上靴を引きずるようにして歩きながら、渡り廊下に吉田が現れた。

吉田

西村からお前らがここにいるって聞いたんだけど、オレ抜きで何してんの?

秀平

だって吉田っ!こいつは……!

吉田

___100問テストってさ、明日やるって発表されたんだろ?今日

信太郎

そうだよ。オレすっげー頑張って盗って来たのにこいつ柚月に返しやがったんだよ

吉田

………だからぁ。わかんねぇのお前ら

吉田

「単語帳無いから勉強出来なかった」って言い訳を潰したんだよ元生徒会長サンは。テスト前日に

吉田は僕の隣に立つと馴れ馴れしく肩に手を置いた。

吉田

「今さら見つかったところで どうしろってんだよ」って思わせる さ、く、せ、ん

吉田

いやー、普段から勉強してねぇと出てこねぇ発想。さすが元生徒会長

吉田は1人上機嫌に肩をバシバシ叩いて来る。痛い。 さっきまで怒りを露にしていた取り巻き達も馬鹿みたいに項垂れた。

秀平

なんだそうか。作戦だったんだ。…悪(わり)ぃ

信太郎

ごめんな

吉田

__こいつらは柚月と違ってちゃんと謝れんだよ。だから今回は多目に見てやってくれ悪いな

三津屋 篤

あ……うん

___やっぱりこの人達と僕は頭の出来が違う。

僕は間違ってない。

吉田の手を借りずとも、僕は鳴沢柚月を抜いて見せる。

吉田

_____で、話はマジ?

篤を教室に帰した後、吉田は上靴のまま渡り廊下の外に出た。

秀平

え?

吉田

柚月と孝太

信太郎

あ…ああ。なんか単語帳見つかってから柚月と孝太がギクシャクしてる

吉田

ふーん……ここまで都合いいとあのセリフ言いたくなるな

空は生憎の曇天だ。 灰色に濁った空を見上げて、吉田はラジオ体操を真面目にする小学生のように大きく両手を広げた。

吉田

……オレの時代だっ

信太郎

ぎゃはは何それ

秀平

それ悪役がよく言うやつ

吉田

何言ってんだよ「悪」はあいつらだろ

吉田

オレは矯正してやってんの。むしろ褒めて欲しいくらいだわ

吉田

……………被害者は、オレ

最後の言葉は、身を切るような冷たい風にかき消された。

吉田は鼻を鳴らすと、広げていた手を下ろした。

吉田

____だいたい1年だな

秀平

え?

吉田

孝太が裏切ってから

秀平

え、あ、うん

吉田

そろそろ「あいつ」も孝太に接触すると思うし

吉田

「借り」を返すなら今だな

吉田は3年の教室棟を見上げると、2月の風より冷たい声で呟いた。

吉田

_______倍にして返してやるよ塵屑(ごみくず)ども

絶 対 に 負 け な い

大丈夫。大丈夫だ。僕は完璧にやった。

「100問テスト」当日。 僕は解答用紙に100問全て埋めたことを確認すると、前の人に用紙を渡した。

回収された解答用紙は鈴木先生の元に集められ、その場で採点が始まる。 (その間生徒達は自習)

__教育方針なのか、この学校は点数の開示に積極的だ。(僕を悩ませるランキング表とか)

鈴木先生も例外ではなく、80点以上の獲得者がいると採点の手を止めてその人の名前と点数を読み上げる。

「100問テスト」はきちんと対策出来るテストだが、それは赤点にならない範囲での話だ。 80点以上を取ろうとするなら やはりかなり対策しないといけない___

「__鳴沢 柚月

教卓から聞きたくない単語が飛んで来た。 ……やはり呼ばれるのか…80点以上取ったのか………。

___91点」

………これまでの最高得点は西村の84点。それを7点も上回る点数。 今日初めての90点台。

教室のあちこちから小さく「すご」とか「やば」とか声が上がる。 教室中の視線を浴びて、鳴沢柚月は恥ずかしそうに俯いていた。

……ムカつく。 その反応が一番ムカつくんだよ。

__信太郎がややオーバー気味に肩を竦めたのが小さな励みだ。

「____三津屋 篤

僕の名前だ。シャーペンを持つ手に力が入る。 ……90点より上。90点より上を取ってますように…

90点…………

きゅうじゅうはちてん」

一瞬何を言っているのかよく分からなかった。

きゅうじゅうはちてん?……きゅうじゅうはち…98… 98点?

信太郎

すげー、ほぼ満点じゃん

____教室を静かな水面(みなも)に例えるなら 信太郎はそこに投げた石に例えられるだろうか。

「すげえええぇぇ」 「98点!」 「誰?誰が98点って?」 「篤、篤」 「やばぁ」「普通にやばい」 「すごすぎん?」

教室内はあっという間に「すごい」の坩堝(るつぼ)と化した。 四方から感嘆の視線が飛んで来るのを肌で感じる。

信太郎

よっナンバーワン!

普段から吉田を立てているからか、祭り上げる才はあるようだ。 信太郎が手を叩くとすぐに教室全体に それは伝染した。

拍手喝采。 その中心にいるのは僕。

鳴沢柚月じゃなくて僕。 僕、僕、僕!

三津屋 篤

ありがとう皆

顔を上げると、クラスの皆に倣って手を叩いている鳴沢柚月が目に入った。 …いつもは僕が叩く側なのに!

勝った。

勝った 勝った 勝った 勝った 勝った 勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った

勝 っ た !

僕は鳴沢柚月に勝った!

吉田の手を借りなくても。 単語帳を盗まなくても。

僕は出来る。 実力だけで鳴沢柚月に勝てる。

いや今日から「勝てた」と言うべきか。 僕は鳴沢柚月に____

三津屋エグいな

___「100問テスト」のことは瞬く間に学年中の知る所となった。 どこを歩いていても誰かしらから話しかけられる。

放課後もまた。 受験勉強のことで職員室を訪れた帰り、階段を上っていると上階からまた僕の名前が出て来た。

98点取ったんだろ。相当勉強したんだろうよ

会話の主は階段の踊り場にいる別のクラスの男子生徒2人だった。 2人の位置から僕は見えないのか、2人は僕に気づかず話し続ける。

あいつが学年1位なんだろ?てっきり鳴沢柚月だと思ってたけど

それなんだけどさー

……たぶん三津屋、吉田のコネ使ってんぞ

え、マジかよ

だって最近吉田グループと三津屋よく一緒にいるしさー、たぶん間違いないと思うけど

それだったら納得だわー。絶対学力は鳴沢柚月が上なのに、三津屋が7点も差つけるとかおかしいと思ってたんだよね

どーせテスト勉強の妨害とかしたんだろ。単語帳盗むとか。そこまでして1位になりたいかって話だよ

てか、妨害工作に逢いながら91点取った鳴沢柚月の方がすごいと思う。親は難アリだけど

顔が熱くなった。 怒りでなのか羞恥でなのかは分からない。

ただ凄く惨めだ。 さっきまでの浮かれた気持ちが嘘のように流れ去っていく。

__気がつけば踵を返していた。

鳴沢柚月の方がすごいって何。

僕はあの人より点を取った。学年1位になったのに。

___いつもの場所、職員室横のランキング表の前。 気がつけば踵を返して、僕はそこに立っていた。

壁には早速、「100問テスト」のランキング結果が掲示されている。 一番上に、僕の名前があるのに。

どうして鳴沢柚月の方がすごいって…… 僕が一番なのに…一番は………

「すげぇ、98点って。ぶっちぎりの1位じゃん」

_____右隣に誰かが立った。

「すげぇなお前」

三津屋 篤

っ………

その人は 僕の欲しかった言葉、僕の欲しかった声音、僕の欲しかった態度で 僕を賞賛した。

吉田

1位おめでとう。お前なら やると思ってた________篤

本当に

__この人の洞察力はいったい何なんだろう。

女子大生と男子中学生が交際している話 シーズン2

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