テラーノベル
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私は、何も出来ない子です。
お箸も、スプーンも、フォークも使えない。
お洋服に着替えることも、お風呂に入ることも
一人ではできないのです。
ただ
美しい顔で、綺麗な姿勢で、座っているだけなら出来るのです。
お人形さんになりきることで、生きていけるのです。
でも、お母さんも、お父さんも、私を必要としてくれなかった。
パチッパチッ
これは、皆からの拍手じゃない。
ただの、ひとりでさしたロウソクの火の音。
私、お誕生日か。でも、お母さんも、お父さんも、お祝いしてくれなくなった。
二年前までは、お母さんもお父さんも家にいたのに。いまではお父さんしか居ない。
ガチャッ
あれ
お父さん、帰ってきたんだ。
菊
父
その声は、優しかった。
でも
どこか棘があって、私を苦しめる。
菊
父
父
菊
父
父
父
菊
父
お父さんも、変わり果てた。
父
びょう、とう?
菊
菊
父
父
菊
私は、言葉を選ぶセンスもなかった。
病院には、真っ白なものしか置いていない。
でも
ここが私には、お似合いなのかもしれない。
簡単にた人の色に染ってしまうような私に、ピッタリではないか。
そう思うと、お父さんが私を捨てた理由がわかった。
お母さんは、死んだ。
単なる交通事故だった。
そして、私と暮らすのはお父さんとだけ。
いつもお人形のような私を可愛がったお母さんを、お父さんは眺めているだけ。
そんな光景が消え去った今、お父さんは私との接し方が分からなくて、不自由だったのだろう。
一緒に、居たくなかったのだろう?──
看護師さん、先生との接し方が分かりません。
私は、上手く喋れません。
お友達も、居ません。
耀
家
私には、分からなかった。
菊
菊
耀
好き?
分からない
菊
どうしよう、答えなきゃだよね?
ごめんなさい
言えない、分からないんだもの。
耀
菊
耀
その言葉だけは、伝わった。
そっか、記憶から、消せばいいか。
菊
そしたら、明日はもっと、いい日に──
な……る……?
フェリシアーノ
人が、叩かれてる?
殴られてる……
赤い
痛そうだ
でも、ここは階段下の奥
窓から日が差していて、明るいけれど、人目につかない。
周りに誰もいない。
助けなきゃ、かな?
でも、私が助けてなんの得になるのだろうか。
私は、言われたことをやれば、それでいいのに。
でも
どうして
体が動いているの?
菊
私は、二人の間に入った。
どうしよう、次は、どうしたら
ふたりとも、ポカーンとしていた。
菊
私は、なんで、ここに来た?
菊
どうしたら、いいんだろう。
誰か、私に、命令を──
フェリシアーノ
助けて? これも、命令かな。
菊
今できることは、これだけだった。
コメント
2件
好きやわフォロー失礼します