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あの方のお妃になれる──
そう思っていたのに…………
結婚式当日、突然現れた見目麗しい闖入者とともに、王子が姿を消してから数日が経った
国中が騒ぎになり、行方を追ったが手がかりは掴めなかった
ショックで部屋に引きこもってから、数日後──
王女
(あれから、何日経ったのかしら？)
王女
……もう、どうでもいい
王女
……うぅ
嗚咽をもらす
王女
王女
…………
王女
(……いつの間にか寝てた)
ベッドから起き上がり、背伸びをした
王女
……はぁ
テーブルの上には軽食と置かれていた
一口食べる
王女
(…………あまり、味がしない)
それを皿に戻した
？
？
コラぁ！
王女
……！
？
今日も残しやがったな！
？
もったいないだろ！
王女
(だ、誰……？)
王女
(そもそも、どうやってわたしの部屋に……？)
見張りが賊の侵入を許すはずなどない
王女
(見張りの目を盗むなんて──)
王女
(ほぼ不可能……)
思わず、後ずさりをする
？
どこへ行く？
？
オレの話、まだ終わってないぞ？
王女
ひぃ！
小1時間、こってりしぼられた
王女
(──こんなに怒られるなんて、思いもしなかったわ…………)
王女
王女
……あなた、いったいなんなの？
？
ん、オレか？
？
人間から死神って、呼ばれる存在だ
王女
……死神
死神
安心しろ
死神
今はお前の魂を狩る気はない
死神
──ただ、このままだと
死神
狩らざる得ないからな
王女
…………
死神
お前の生活リズムを正すため
死神
みっちりしごく
死神
覚悟しとけ
翌日
死神
起きろ！
死神
いつまで、寝っ転がってるつもりだ？
王女
…………
死神
──ったく
問答無用でブランケットを剥ぎ取った
王女
王女
何をするの！
死神
さっさと起きないからだろ
王女
……ブランケット、返して
死神
いいから、起きろ
王女
きゃっ……！
腕を掴まれ、強引に起こされた
死神
顔洗って、普段着に着替えてこい
王女
…………
しぶしぶベッドから下りた
メイドが持ってきたマッシュポテトのサラダを一口食べる
ぱくっ
王女
……はぁ
王女
……あまり、食欲がない
死神
食わないといざってときに、力が出ないぞ
王女
……どうしても、全部食べなきゃダメ？
死神
ダメに決まってるだろ
王女
王女
はぁ……
なんとか平らげる
規則正しい生活になってから、2週間が経過した
王女
(──体調がよくなった気がする)
少しずつだが、外にも出られるようになった
王女
(城の庭を散策する程度だけど……)
あずまやのベンチに腰を下ろす
王女
死神
ちったぁ、マシになったな
王女
……！
いつの間にか、隣に座っていた
死神
顔色もよくなった
王女
…………
死神
まだ元婚約者のことが、忘れられないか？
王女
王女
──元、じゃない
王女
今でも婚約者よ
死神
新しい恋でも、見つければいいのに
王女
王女
国が総力を上げて、行方を追っているの
王女
あの方がお戻りになるって、信じてる……
死神
希望的観測だな
死神
死神
元婚約者は戻ってこないぞ
王女
どうして、わかるの？
死神
オレの後輩と、イチャコラしてたから
王女
え？
王女
後輩……？
死神
──今ごろは後輩とハネムーンかもな
王女
死神
いい加減、フラれたことに気付け
フラれた──
ズキっ
王女
……っ…………
涙は枯れ果てたと思っていたのに…………
王女
……うぅ…………
人目をはばからず泣いた
王女
…………
死神
星の数ほど男はいるんだ
死神
必ずお前を見てくれるヤツが、いつか現れるだろうよ
王女
…………
死神
さてと──
死神
そろそろ、おいとまするか
死神
死神
じゃあな
煙のように姿を消した
王女
──はぁ
もう二度と、王子は自分の元には戻ってこないだろう
王女
(それでも、わたしは……)
王女
王女
……“あなた“が好きでした
電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
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