お嬢様の眷属

手足、そして首に付けられた首輪や鎖が重くて、冷たくて、もう自分が何故ここに来たのか覚えていない

奴隷として売られ、またここに戻る

何回、繰り返したんだろう

自分の名前、目の前で殺された両親、これまで私を買っていった女の顔、嬲られた方法

全てがフラッシュバックして何かを考えるのを放棄する

ｺﾂ、ｺﾂ、ｺﾂ、ｺﾂ

自分よりも高い所にある柵を座って見上げながら隙間から覗く月を見ているとブーツと、ヒールの音が近づいてきた

ああ、まただ

また、「販売」される

ｺﾂ、ｺﾂ……ｺﾂ

檻の前で足音が止まったのに気づいたが振り返りもせずにただ月を見つめていた

凛とした少し低い…？声、とても綺麗な声が聞こえてきてつい振り返ってしまった

パチッと目が合った「ソフィア」と呼ばれる彼女はサラッとした銀髪に、細い眉、長いまつ毛にパッチリとした銀の目、ぷっくりとした唇

背は低くてもピンッと伸ばされた佇まいに見惚れてしまった

彼女は懐から銃のようなものを男に向けて引き金を引くと男は縄に包まれ、拘束されて壁に抑え込まれていた

顔に似合わない言葉を吐き捨てる彼女

彼女は私に身体ごと向き直って凛とした姿で口を開いた

この人は私の

神様だ

古臭い牢屋の中小さく座り込んでる彼女を見下ろしていると彼女はゆっくりと立ち上がった

顔立ちの良さだけじゃない、背も私よりうんと高くてスタイルがとても良い

この子が高値で売られていた理由が何となく分かった

奴隷オークションなんて馬鹿げたものを無くすために来たけど、良い収穫があった

私は昔から女性にしか興味が無かったから、好きなタイプも女性になる

絹のような金髪に少しタレ目の青い眼 白い肌にスっと伸びた手足

何かを言いたげに彼女は口を開いたが恐らく水分を取っていないから喉が乾いて声が出ないのだろう

彼女は縦に首を振った

頷いた

懐から小型のソードナイフを取り出してボタンを押すと光線状のナイフが飛び出した

牢屋の鍵をなぞるとビュンッという音がして綺麗に切れた

ｷﾞｨｨｨｨｨｲｨッ

耳が痛くなるような音を鳴らしながら扉が開いた

カシャ、カシャン

しゃがんで足元の鎖を切断してから手首に繋いである鎖を切断した

「ありがとう」

多分、そう言いたいんだろう

ﾋﾟﾋﾟｯ

耳に着けてるインカムから通信が入った

学生の頃からの知り合いであり、現在の社員部下でもあるリリカからだ

チラッと男の方を見ると拘束が解けていた

手元を見るとバタフライナイフをパラパラと回していた

すると彼女は私の前に立った

男が彼女に向かってナイフを振り上げると、その瞬間彼女は自身を縛っていた鎖でナイフを受け止めた

ナイフを弾いて男の手を蹴りナイフが飛んで行った

声が鳴り響いたと共に銃声が鳴り響いた

ﾊﾟﾝｯ

男は倒れ込んでそのまま動かなくなった 多分麻酔弾を撃ち込んだのだろう

スナイパーライフルを背中に背負い直したリリカがムスッとした顔で言った

リリカを宥めているこの子はメイ、私の秘書でもある、要領が良くて懐も大きいから何かと頼る事が多い

彼女はペコッと頭を下げてからチラッと様子を見るように顔を上げた

目で圧を掛けてから出口へと向かう

彼女は驚いたように、でも嬉しそうに後ろを追いかけてきた

メイと呼ばれる女性が運転をして、後部座席にはソフィアさんと私が座っていた

ペットボトルに入っている水をすこし見つめてから口をつけて飲み始めた

リリカが振り向いて興味津々に私の方を見つめた

少し高い？いやでも透き通っていて、耳にスっと入ってくるような声

少し吃りながらも必死に思いを伝えるルーシーに胸がギュッと締め付けられる