夏帆
私のせいでママとは仲が悪くなったままだし、 パパとも喧嘩したし、どうしよう……
と思いながら森の奥へと歩いているうちに湖のほとりにやって来ていた。
すると湖の水面に映った自分の姿が目に入った。
髪の色こそ違うけど、それは間違いなく自分がよく知るピノンの姿だった。
驚いているとまた別の映像が映し出された。
今度はあの黒いドレスを着た少女がいた。
「私の名はラティアナ。この世界の全ての知識を持つ者よ。
我が名のもとに命ずる。我を開放せよ!」
ルナの呪文と共に彼女の体から光輝く魔力が放たれると、床に描かれた魔法陣の上に浮いていた 黄金の鍵がひとりでに浮かび上がり、ルナの手の中に収まる。
「やったわ。これでまたあの子達に会えるんだわ」
喜び勇んで外に出たルナだったが、そこには思い描いていた光景はなかった。
変わり果てた姿になった故郷を見て呆然とするルナ。だがその時背後に気配を感じ振り向くと そこには漆黒の鎧に身を包んだ暗黒騎士の姿があった。
「何奴!?」
剣を抜き身構えるルナに暗黒騎士は無言のまま斬りかかる。だがルナの剣の方が速く相手の胸を貫く。すると暗黒騎士の体が黒い霧となって消えていく。しかし次の瞬間には別の場所に現れ、再び斬りかかってくる。それを何度も繰り返しているうちに暗黒騎士の姿が見えなくなるほど霧に覆われてしまう。そして暗黒騎士の姿を確認できなくなった時、不意打ちで斬られてしまう。傷口から血が流れる中ルナは自分の死期を悟ったのか、目を閉じながら言う。
「私の命と引き換えに……せめてあの子だけでも助けてください」
「それはできぬ相談じゃな」
「!?」
声のした方を見るとそこには老婆のような姿をした女がいた。その女の頭の上には三日月の形をした白い耳があり、背中からは羽が見える。
「貴様何者だ?」
「お主に名乗る名前などありゃせんよ。それよりもこの子を救いたければワシを倒すしかあるまい」
「ならば望み通り倒してくれる!」
ルナは一気に駆け出し、暗黒騎士に攻撃するが、暗黒騎士はそれを難無くかわす。そして反撃しようとしてきたが、ルナはその攻撃を紙一重で避ける。
「ほう。なかなかやるではないか」
「当たり前だ。この程度の相手に遅れを取るようでは私はここまで強くなっていない」
「ふっ、確かにそうかもしれんな。だがわしに勝つことはできんぞ」
「ふんっ!あんな奴の顔なんてもう見たくないわ!」とプンスカ怒るルナだが、 結局森の湖に行きつく。そこで水浴びをしていると不思議な声が聞こえてくる。
それは歌だった。綺麗な声で、優しい歌声で、どこか懐かしいような……。
気がつくとルナはその歌に惹かれるように森の中へと入っていく。
するとそこには小さな家があった。まるでお伽噺に出てくるような可愛らしい家で 思わず中に入ってしまう。
家の中には誰もいないようで静まり返っているが暖炉の上に一枚の絵がかけられていた。
そこには一人の少女の姿が描かれている。金色の髪に青い瞳の少女で、とても美しい姿であった。
「誰だろう?」と呟くとどこからか音が聞こえる。なんとこの絵に描かれている女の子の声だったのだ。
