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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで

翌日、目が覚めると同時にベッド脇に置いてあった目覚まし時計を確認する時刻は既に八時を過ぎていた。

毛布から少し身体を出してみると、いつもよりも空気が暖かい感覚がした。伸びをするとくぐもった声が出る。

特に遊ぶ約束がある訳でも無い冬休み期間。俺がまず、しなくてはならないのはどっさりと出された宿題、そして受験勉強だ。

寒さに恐れを成すようにベットから這い出ると、箪笥へと向かいパジャマを着替えようとする。

日向

ん?

ふと違和感を感じ、行動が停止する。俺が着ていたパジャマはこんなにも緩かっただろうか。

袖口からは手が出せないし、裾は伸びに伸びきって膝小僧まで隠れてしまいそうだ。

ズボンに至ってはウエストが全く合っていないのか今にも脱げそうで、手で抑えないとストンと落ちていく。非常に歩きづらい。

視界の両端で揺れ動く髪の毛の束は雪のように純白で、背中越しにはサラサラと流れる同様の物が感触としてあった。

日向

どういうこと?

違和感は更に増した。自分の声があまりにも幼すぎたからだ。それも透き通っていてテレビで見たアイドルのような、可愛らしい声だった。

大きく垂れ下がった袖口を引っ提げた手を喉に当てれば喉仏は引っ込んでいて存在を確かめられない。

試しに「あー」と声を出せば、連動して喉は震えておりその音が自分の口から発せられている事実を突きつけられる。

サーッと血の気が引いていくのを感じた。

日向

確かにお願いしたけど、本当に実現するなんて思わねぇに決まってんだろぉぉおおおおおお!!

一思いにサンタクロースへの怨嗟を叫べば、自分のイメージとは裏腹に可愛らしいソプラノボイスが部屋に響く。

最悪のクリスマスプレゼントである。余計なお世話というやつだ。

頭の中では目の前の現実から逃避しようとセルフツッコミを繰り返していた

日向

いやしかし、本当にどうしたら良いんだろう

こんな出来事が起きるのは小説や漫画など妄想の中だけだと思っていた。枕元に置いたはずの紙片を探してみるが見当たらない。

外の景色は昨日と変わらず雪が降っている。スマートフォンを手に取りSNSを開いてみるが自分の投稿に変化は見られない。

とりあえず服を着替えようと思い立ち、箪笥を開ければ女物ではなくいつもの自分の服が整然と敷き詰められていた。

日向

並行世界ではないのか

他の服に着替えたところで、このだぼだぼの状態はどうにもならなさそうだった。

TS願望が多少有った俺はTS系小説を読み漁ったことも一度や二度ではない。その為、今の状況を冷静に観察する能力はある。使い所が限定的過ぎるが

並行世界でないということは、昨日の延長線上である可能性が高いということになる。それは、家族や親友や知り合いは俺の今の姿が初対面であるということだ。

端的に言えば、かなり面倒くさい。

TS願望があるとは言っても、別に現実になって欲しいわけじゃないし、するなら準備期間も欲しい……片道切符なら尚更、御免被る。

日向

はぁ〜……

溜息を吐く。

そういえば、高校生何だけど、受験生なんだけど、俺はどうなるんだ。

何事にも積極的になれず、嫌なことがあればゲームにばかり逃げていた俺は碌に将来の夢も考えていなかった。

ただ漠然と、安定した職についてその日暮らしができれば良いな、とか考えていたのである。

親からは公務員を薦められたりなどしたが、いまいちイメージは湧いてきてなどいなかった。

一先ず、両親と御対面しなければ。

次回 混乱

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