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告白から早数日が経過した。
イソップ
トレイシー
現在の時刻は午前二時。後少しで丑三つ時に回り、者どもをあっと驚かせる物怪が姿を現す頃合いだろう。
イソップ
トレイシー
ーーが、物怪など恐れの対象の候補にすらなり得ない二人は、誓いを交わした食堂で、あの時と寸分も変わらぬ位置で、一言も発せずお互いを凝視している。
イソップ
彼此三〇分は続く水打ち。流石の朴訥、またの名をイソップと言う男も、流石に此の静寂には耐えられなったらしい。 微量の困惑を目に乗せ、彼は静かに口を開く。
トレイシー
イソップ
生きる屍は、刹那だけ眼を見開いた。
トレイシー
トレイシーの奇想天外な行動の始まりは、建物の外に存在する小さなガーデンでの何ともない会話であった。
エマ
喉の奥から湧き上がる吐き気と煩わしさを必死に抑え、枯れ木で形成された不気味な案山子に抱き付くエマの姿が、トレイシーの眼前に映る。
エマ
淫靡ーー彼女と案山子の関係は、最後のパズルピースの様に然りと嵌った様な気がしたが、恐らく正解ではあるまい。
堂々巡りが彼女の思考を飽和する。 その間も、エマは案山子を恍惚とした顔で見つめ、時に淫らな声を漏らしていた。
トレイシー
エマ
トレイシー
エマ
トレイシー
エマ
見つめ合える。
エマ
近い距離で。
エマ
お互いがお互いを好きであれば、互いに愛する者だと認定しているならば。
エマ
その者を然りと見て、己を然りと見てくれる。
トレイシー
その声は、誰の耳にも届くことは無かった。