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悠希
悠希
大雨で白く霞んでいる帰り道で鞄を頭に載せ走りながら大きな独り言を言う
私…悠希(はるき)は生粋の雨女だ 小学校の遠足を潰した回数12回 運動会を潰した回数5回 そして傘を持っていないときに限って雨に降られた回数…図り知れず 人呼んで妖怪雨女
悠希
…雨の中悪態を付きまくっている中学2年生だ
雨降る帰り道をしばらく走っていると、雨宿りできそうな神社を見つけた 手入れは行き届いている神社だったので、雨宿りに少しお邪魔することにした
悠希
悠希
カバンを開けて無事に濡れた教科書を確認しながらため息を吐く
悠希
そこそこ凹んだ気分なんとか切り替え、雨宿りしてる周囲のの景色を見た
周囲の木々は青々としており、雨の霞みと相まってとても美しく、吸い込まれるような神秘性がある
社殿の方は古めかしく歴史がありそうな雰囲気がしているが手入れが行き届いているため木のささくれや腐食などは無いようだ
悠希
悠希
感傷に浸りながら風景を眺めていると背後から猫の声が聞こえた
にゃんこ
悠希
悠希
にゃんこ
自然とほほが緩み、その場の流れで小さな同居人と会話を進めた
悠希
にゃんこ
悠希
にゃんこ
悠希
にゃんこ
悠希
それから私達は色々な会話をした 何歳かだの何が好きかだの本当に色々 相手側は鳴き声しか出さないので会話として成立するかは怪しかったが不思議と相手の言いたいことが分かるような気がした
そして1時間位経ち、雨もかなり止んできて、雲の隙間から青空も見え出した
悠希
にゃんこ
悠希
小さく独り言を呟いた後、猫に別れを告げようとした
悠希
にゃんこ
心なしか猫の目が潤んだ気がした
…家は一戸建てで両親共にアレルギーはない事を思い出す 母親の説教も猫を連れて帰ったら減るかな…と考え、猫に一つ質問をしてみた
悠希
にゃんこ
即答だった
そしてその後家に帰り、考えていたこととは真逆にお母さんに散々怒られたがこの猫は無事に私達の家族になった
それが10年前の話
悠希
アキラ
…この子はアキラ 10年前あの猫を家に連れ帰った後風呂にいれていると急に猫耳美少女に変わった 漫画みたいな展開にビックリした
最初はまさかと思ったが目の前でもう一度猫に変わられると何も言えない 取りあえず家族の前では猫の姿でいてくれるようお願いをしてなんとか実家では誤魔化すことが出来た
その後アキラに聞いたのだがどうやらアキラはもともとあの神社の宮司のような存在らしく、本来の神主さんが他の土地へ所用で移住した後神社の管理を任されていたらしい そのため神社も綺麗に保たれていたし雨宿りしていたときも濡れていなかったらしい
なんで私に話しかけるときに猫の姿だったのか聞くと
アキラ
と言い切られた
悠希
悠希
アキラ
悠希
アキラ
悠希
アキラ
どうやら宮司の仕事をしつつ自分のご飯も作っていたらしく家事全般が得意らしい 家に帰る楽しみも増えた
そして風呂場で服を脱ぎ、湯船に満たされているお湯のなかに入り、一日のつかれを全てため息で吐き出し、ボソッと独り言を呟いた
悠希
唐突だが私はアキラが好きだ 容姿端麗家事完璧性格最高というのもあるが、単純に彼女に惚れてしまったのだ 辛いとき優しい言葉をかけてくれて励ましてくれたり悩みを聞いてくれたりするその姿勢に惚れてしまった
悠希
人間は停滞を好む 無理に進んで失うより停滞して小さな利益を得る方が好きなのだ
悠希
そこで一旦区切りをつけ、湯船から勢いよく出てそのままの勢いで洗顔洗髪を済ませアキラが待つ食卓へ向かった
告白すると決めたためかいつもよりご飯の通りが悪い 味は美味しいため少しもったいないと思いつつも完食した
アキラ
悠希
アキラ
悠希
食後の団欒もそこそこに私は部屋へといき、布団を整えた アキラは自分の枕を持ってきていた
悠希
アキラ
素直に喜んでくれるとこっちも嬉しい だがこの後のことを考えるといつもよりも喜べない これが最後の可能性もあるからだ
そしてよく干されてお日様の匂いがする布団に二人で入り、目を見合わせる
悠希
アキラ
落ち行け あせるな 言うと決めただろう?
悠希
もう一息!
悠希
アキラ
いつも通りの笑顔を見せてくる
悠希
アキラの表情が固まった
悠希
悠希
アキラ
アキラが口を開いた
アキラ
アキラ
アキラ
アキラ
悠希
アキラ
いつもの調子で笑ったアキラだが、頬は少しほてっていた
私は自分の心配が只の杞憂だと知って安心した
悠希
悠希
アキラ
二人一緒に涙目になりながら微笑みあった
その後私達はもう一度目を見合わせた後、何時ものように手を繋ぎ目を閉じた