音子
...(なんで?
どうして?)

音子
(どうして体が動かないの?)

音子
「ん?ここはどこだ...?」

見渡す限り、地平線が広がっていて
夕陽が沈みかけている
音子
「...誰かいるのかな?
...とりあえず歩き回るか」

音子
(...ダメだ、どれだけ進んでも全く同じ景色だ)

音子
(人も全然いないし...)

音子
途方にくれていた時

黄昏ホテル
←こちら
と書かれている看板を見つけた
音子
「黄昏...ホテル?
まあ行ってみるか」

音子
(あれー?
ちゃんと看板の方向に向かったんだけどなあー?)

音子
「どっしよーかなー...」

音子
「はい?」

目の前にはさっきまでなかったホテルがそこに建っていた...
そのホテルはレトロな感じで
単純にいえば、異人館のような一風変わった建前だった
音子
「えっとー...
なんかよく分かんないけど...入ってみるか?」

そのホテルは中も随分レトロを感じさせるものでまた一風変わっている
音子
「誰かー、いませんか?」

支配人
「ようこそいらっしゃいました」

支配人
「黄昏ホテルへ」

支配人
「では早速宿泊の手続きを」

音子
「は?」

音子
(ちょっと待てい!!この人頭燃えとる!!そもそも人じゃない!!)

支配人
「ここは生と死の狭間にあるホテルでございます」

音子
「えとー、つまり?」

支配人
「三途の川と似た系統ですかね」

音子
「うーむ、信じられん」

支配人
「そもそも私で人の常識を越えている...と、認識しております」

音子
「あ、そっかそうですよね
じゃあ、もう信じてる前提でいきます」

支配人
...はい、では

音子
「あ、このホテルのことは分かったんですけど、私お金持ってません」

支配人
「ここのホテルは料金は頂いておりませんので」

音子
「え?」
(じゃあ、このホテルはいったいどうやって経営してるんだ)

音子
(まあ、さておきこの状況ですしね)

音子
「じゃあ、お願いします」

支配人
「はい、かしこまりました
ではお部屋へ案内いたします」

支配人
「阿鳥くーん、お客様を案内してさしあげて」

阿鳥先輩
「分かりました支配人」

音子
カッコいいし...

阿鳥先輩
「ではお客様、お部屋へ案内させていただきます」

音子
「はい」

阿鳥先輩
「ここでございます
どうぞ」

音子
「ありがとうございまーす」

音子
「わあー、素敵なお部屋ですねー!」

室内には雰囲気を感じさせる木の家具やベッドが置かれていた
阿鳥先輩
「このホテルはお客様によって部屋が変わるんですよ」

音子
「そうなんですか!?なんかスゴいですね...」

阿鳥先輩
「なので、部屋にはお客様の記憶にまつわるものが置いてあることがあります」

音子
「なるほど...」

阿鳥先輩
「そこで、私達従業員はお客様のお手伝いをさせていただいております」

阿鳥先輩
「お手伝い致しましょうか」

音子
「あ、はいよろしくお願...あっ、やっぱり一人でやります」

音子
「ほら、私いかにも年頃の女の子って感じじゃないですか、変なもの出てきたら困りますし」

阿鳥先輩
「はい、分かりました
何かあればいつでもお呼びください」

音子
「はい」

音子
「さぁーて、探すか」

...なぜか部屋の中でひときわ目立つクローゼットに鍵が掛かっていた
音子
「ありゃ?鍵が掛かってる
鍵があるかもしれない」

音子
「あ!こんなところに」

落ちていた鍵を拾い
それを使った
すると
ガチャッと鍵の開く音がした
音子
「さあ、何が入ってるのかな?」

音子
「お!この中に何か入ってないかな?」

音子
「塚原音子(つかはらねこ)?」

音子
「そうだ!そうだよ!
私の名前だ!」

音子
「何で今まではっきり思い出せなかったんだろ...」

音子
「えっと、そうだ
報告!」

音子
「あのー!」

阿鳥先輩
「お客様、何か思い出せましたか?」

音子
「はい!私の名前は塚原音子です塚原音子」

阿鳥先輩
「そうですか、名前思い出せて良かったですね!」

音子
「はい!」

音子
「あ、あのー、阿鳥さんですよね?」

阿鳥先輩
「はい、僕は阿鳥遥斗(あとりはると)と申します」

音子
「阿鳥さんも私と同じように?」

阿鳥先輩
「はい、僕は恥ずかしながら初日は驚きっぱなしでしたのですが...」

阿鳥先輩
「塚原様はそんなに驚いている様子ではないですね」

音子
「いや、これでもけっこう驚いてますよ」

阿鳥先輩
「そうですか、失礼致しました」

音子
「いえいえ、ところで...」

音子
「とりあえずここにしばらくいそうなんですけど、暇を潰せるようなものはありますか?」

阿鳥先輩
「ビリヤードなら」

音子
「もっと、機器的なものは...?」

阿鳥先輩
「ラジオなら」

音子
「...これじゃ、暇死にしそうですね」

阿鳥先輩
「はい、僕も三日目は発狂しそうになりました」

音子
「発狂...えと、それで従業員になられたんですか?」

阿鳥先輩
「はい、そうですね」

音子
「それって高校生でも働けますか?」

阿鳥先輩
「はい、大丈夫です
支配人に話してきましょうか」

...私、塚原音子はこうして
黄昏ホテルの従業員となったのであった
続く