約束の夢

羽山中学に入学して1年と2ヶ月

中学２年生の私は

全力で学生生活を楽しんでいた

毎年、夏に開催される吹奏楽の大会

各校、課題曲と自由曲を選び、演奏して競い合う

その練習が今日から始まるのだ

私には心に決めたことがある

友達と決めた約束

それは

吹奏楽の大会で金賞をとること

ゆあは私の友達で

同じトランペット担当の子

入部当初は部活に燃えていたのに

ここ最近、休むことが多くなった

翌日

その日の練習が終わり、片付けをしていたとき

先輩たちの会話が聞こえてきた

ゆあは一人が好きで人とはあまりつるまない性格だ

そのせいか誤解されることが多い

でも好きなことに対する熱量は人一倍あった

だから、わざと休んでいるわけではないはず

翌日、朝早くに行くとゆあはすでに来ていた

話をする間もなくゆあは教室を出て行った

ゆあは初めて会った時は冷たかった

けど、話していくうちに心を開いてくれるようになった

だから今回も話せば分かり合えると思った

けど、さっきのゆあは話すことなく冷たく突き放した

もし、ゆあが誰にも言えない事情を抱えているとしたら

あの冷たい態度にも納得がいく

ゆあは1人で抱え込むタイプだ

以前、クラスの女子から嫌味を言われた時もそうだった

あさひ先輩にお礼を言ってゆあを探しに校内へ走った

ゆあは1人が好き

誰もいなくて、静かで邪魔が入らない場所

ゆあは屋上にいた

私たちが初めて会った屋上に

入学して一週間

あまりクラスに馴染めなくて

1人で屋上に来ていた

そしたらそこにゆあがいて

最初は冷たかったけど

勇気を出して話しかけた

そしたら意外と優しくて

お昼休みに話すのが楽しみになった

そして2人とも吹部に興味があって

その時約束したんだ

小指を絡ませて約束した

ゆあは目に涙を溜めてニコッと笑って言った

ゆあがそう言って一ヶ月が経った

コンクールはもう間近で

部活は全体練習に入っている

不安だけど、ゆあが待っててと言ったら私は待つしかない

ゆあは呼吸を整えてみんなの前に立った

目があって、お互いに笑顔を見せた

ゆあは宣言通り曲を完璧に吹けていた

なぜ吹けるのかと聞くと

休んでいる時にもたまに来て練習していたらしい

1人が好きで

何でもかんでも1人で抱え込んで

心をなかなか開いてくれないのに

好きなことにはどこまでも夢中になる

ゆあが練習に参加した日から時間が早く過ぎて

ついにコンクールの日、結果発表の時間までになった

心臓はバクバクいって、手には汗が出てきた

1人で不安になっているとゆあが手を握りしめてきた

私は少し緊張が和らいでゆあの手を握りしめた

ゆあの手も少し震えていた

審査員が順番に発表していく

今年も金賞は少なく、銀賞や銅賞が多い

嬉しくて、ゆあに抱きついた

ゆあは今までに見たことないくらいの幸せそうな笑顔を見せて言った