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消灯時間を過ぎた部屋は、カーテン越しの街灯の光だけがぼんやりと残っていた。
他の部屋からは、笑い声や足音がかすかに聞こえる。 それなのに、この部屋だけは妙に静かだった。
なつきは布団の中で、目を閉じたまま天井を見ていた。 眠れる気は、まったくしなかった。
奏
奏
なつき
奏は、しばらく黙っていた。 からかうときの軽さも、いつもの余裕もない。
奏
奏
暗闇の中で、布団がきしむ音がした。 奏が、少しだけ体の向きを変えたのが分かる。
奏
奏
奏
心臓が、どくん、と音を立てた。 返事は、すぐには出なかった。 でもなつきは、布団の中で、ぎゅっと手を握った。
奏
なつき
一瞬の沈黙のあと、奏は小さく笑った。
奏
その声は、からかいでも冗談でもなかった。
奏
奏
放課後。
サッカーの練習が終わって、校庭に夕焼けが落ち始めたころ。
奏
奏が呼んだ。 今日は、からかう声じゃなかった。
奏
短くそう言って、奏は先に帰っていった。
海の手前の道路は、静かだった。 潮の匂いが風に混じって、車もほとんど通らない。
なつきが着くと、奏はガードレールにもたれて立っていた。
奏
なつき
なつきが聞くと、奏は少しだけ息を吸った。
奏
奏
奏
しばらく、波の音だけがした。 なつきは、足元のアスファルトを見つめてから、顔を上げた。
なつき
なつき
奏の目が、少し見開かれて、 次の瞬間、ふっと力が抜けたみたいに笑った。
奏
奏
奏は、少し照れたように言った。
奏
なつきは、うなずいた。
奏
学校では、相変わらず奏は人気者で、 なつきは相変わらず「不思議ちゃん」だった。
でも、帰り道が同じになったり、 サッカーの帰りに缶ジュースを分け合ったり、 名前を呼ばれる声が、少しだけ特別になった。
奏
なつき
それだけで、 今日もちゃんと前に進めてる気がした。
切なくて、ややこしくて、 でも選んだ未来は、間違ってなかった。
海は、今日も変わらずそこにある。
けれど、二人の世界は―― 確かに、少しだけ変わっていた。
奏