それから、時間は流れた。
なつきはサッカーを続けた。 簡単な道じゃなかったけれど、諦めなかった。 何度も壁にぶつかって、それでも走るのをやめなかった。
奏は、変わらず優秀だった。 でも「人気者」であることより、 一人の人としてどう生きるかを大切にするようになっていた。
二人は、同じスピードでは進まなかったけれど、 同じ方向を向いていた。
離れる時期もあった。 すれ違うこともあった。 それでも、話し合って、待って、戻ってきた。
そして――大人になった。
役所の静かな一室で、 二人は書類に名前を書いた。
正式に、夫婦になった。
それからの生活は、 ドラマみたいじゃなかった。
朝はバタバタして、 どっちがゴミを出すかで小さく言い合って、 疲れて帰った日は、無言で隣に座るだけの日もある。
なつきは、今もサッカーに関わっている。 ピッチの上か、外か―― 形は変わっても、走り続けていた。
奏は、帰ってくるなつきを迎える。
奏
おかえり
その一言が、 なつきにとっては何よりの居場所だった。
なつき
ただいま
名前も、過去も、 簡単には説明できない二人。
でも。
不思議で、ややこしくて、 それでも確かに“異性どうしの恋”で、 確かに“GL”でもある関係。
誰かの理解を全部は必要としない。 選んできた未来が、 今ここにある。
奏
ねぇ、なつき
なつき
なに、奏
奏
私さ
奏
あなたと生きる人生で、よかった
なつきは、答えの代わりに、 静かにうなずいた。
奏
あなたが“帰る場所”なら、私は“待ってる理由”だよ。
この物語は、 特別じゃない毎日の中で、 ちゃんと続いていく。
――おわり。
そして、 ずっと、その先へ。






