不意に、梶井が首を噛む力が強くなったのを感じた
瑠音
……!
喉元にあの時と同じ痛みが あの時と同じ熱さが襲ってくる
梶井基次郎
……っは、君が魔性の女として作られたってのも頷ける
梶井基次郎
生きてる人間に対して此処まで興奮してきたのは初めてだよ
瑠音
………!
喉を食いちぎられて声が出ない
瑠音
(……これが、わたしの求めていたもの?)
瑠音
(きっと、そう)
瑠音
(だってこんなにも……あたたかくて、きもちいい)
ぼんやりとした意識の中、 梶井がわたしの中に入り込んでくる…
脳裏に浮かぶのは、 いつも夢に見るあの場所
は、はは、ははははははは!
不浄なる乙女よ、君が快楽に溺れる様を見るのはなんと愉快なことか!
そして私も!淫蕩と、嗜虐と、独善にてその身を形作る悪なるものだ!
夢の中のあの人は笑っていた
そして、今わたしを組み敷いて暴虐を尽くし 内臓の裏側まで全てを暴こうとする彼もー
梶井基次郎
うははっ!君の身体で起こる数多の事象!嗚呼、次はどんな死の色を見せてくれるんだい?
__同じように笑っていた
瑠音
(今まで、意識したことのないところまで、痛い……)
瑠音
(体を切り刻まれて、骨の一本一本まで確かめられて……)
瑠音
(………………生命のもとを与えられる)
瑠音
(…………ふしぎな感じ)
瑠音
(今、わたしは生きてる…………)
瑠音
(今までより、ずっと強く感じてる……)
は、ははは…………
ルネ、ルネ…………私は本当に「悪」なのか?
神は我らに祝福を与えたそうだ
「産めよ、殖せよ、地に満ちよ」と!
君を愛することは……善なるものではないのか?
私が乱暴を働いた他の連中だって……
パンをひとかけ盗んだヤツ、男の私と付き合おうとした男、戦場の人殺しども……
私が殺したのは罪人どもだ!罪人を殺すのは悪か!?
……なに?その理屈だと私は何をされても文句は言えなくなってしまう?
……確かにその通りだな
所詮、ヒトは罪を背負ったケモノだ
私も……ヒトの理に押し込めて貰えるなら、どれほど良かったことか
瑠音
……?
瑠音
(梶井に犯されてる間……)
瑠音
(あの人のことが、フラッシュバックみたいに何度もよぎって………………)
瑠音
(なんだか、さっきのはいつもと雰囲気が違うような…………)
瑠音
(あの人は…………何者なの?)
瑠音
(わたしは………………あの人の何?)
梶井基次郎
やあ、瑠音!お目覚めかい?
瑠音
きゃっ…………
瑠音
あれ、さっきまでのは…………?
梶井基次郎
今日のところは満足してしまったからね。一通り片付けておいたよ
瑠音
…………さっきまでと、別人みたい
梶井基次郎
ま、俗に言う賢者タイムというところだね
梶井基次郎
それはさておき……僕はそろそろデータを纏めにかかろうと思うのだけれど、君はどうしたい?
瑠音
わたし…………
瑠音
あの人のこと…………何度も頭の中に浮かんできた……
瑠音
でも、やっぱりあの人がなんなのか……わからない
梶井基次郎
ふぅむ…………「あの人」がサド侯爵だと言うならば、宇宙大元帥ならば何かご存知かも!
梶井基次郎
あの人、ああ見えて先の大戦で活躍した方らしいからね
瑠音
そう…………
瑠音
他の人にも、話を聞いてみる…………