元ヤンキー、陰キャになる

まずは、人に慣れる事から始めた。

看護師の人、担当医の人、同じ病室の患者さん。

触られるのはまだ、嫌だけど話すのは結構慣れてきた。

同じ病室の患者さんとも仲良くなれたし、ちょっとずつ話せるようにもなった。

みんな優しくて、嬉しかった。

次に、暗闇だ。

暗闇に至っては、トラウマのせいか動けなくなる。

2人に支えてもらいながら、毎日、毎日病院内の暗い所を歩いたりした。

そしたら、ちょっとずつ、2人の補助付きだけど歩けるようになった。

食べ物はまだ、慣れなかった。

あの時の、光景が頭から離れなくて、辛くて、苦しくて。

匂いを嗅ぐだけで吐いてしまう。

だから医者の命令で、ご飯はちょっとずつ、慣れていってからと、ちょっとずつ食べていっている。

ｻﾜｯ

人に触られるのは何回練習しても慣れなかった。

何度もトラウマがあるからだろうか。

虐められて、2回も誘拐されてるから。

バレー部の人達にも、仲間のみんなにも触ってもらってるけど、唯一触っても怯えないのはケーちゃんだけだった。

父さんは東京で社長をしてるせいで俺の見舞いには来れなかった。

だから、休みを取って来るらしい。

怒られるかな···。

あの時みたいにまた、心配させちゃうかも。

ｶﾞﾗｶﾞﾗ

ｷﾞｭｯ

ｶﾞﾗｶﾞﾗ

ｷﾞｭｯ

馬鹿なことした···そう思った。

誰も心配しないって、俺なんかみんな嫌いだって思ってたから。

あんな姿を見ても、見てなくても、みんな、俺の事大好きなんだ。

父さんが泣いてるのも、そうだ。

俺が大好きだから。

父さんの息子だから。

だから、っ···。

ｷﾞｭｩ

こんなに幸せ···嬉しいな。

もっと···欲しい。

ずっと···欲しい。

俺は、なんて幸せ者なんだ。

俺、ちゃんと克服出来るよね。

大丈夫だよね？

後は、みんなに俺の正体伝えなきゃな。

どうなるんだろ。

拒絶されちゃうのかな。

それでも、話を聞いてくれるなら。

俺にはケーちゃんも、影山も、みんな居るから。

きっと大丈夫。