メシン
疑問が頭を埋める
白刀・白雪
それは、沙羅の刀
…でも、どこかで理解していたんだ
「選ばられるのは、ボクじゃない」
そんな、予感がしていた
風魔
風魔
風魔
風魔
風魔
風魔
風魔
メシン
確かに、それならボクが抜けなかったのにも理由が付く
と言うよりも
メシン
メシン
これが、ボクに言える最後の言葉
……最後?
…どうしてだろう
この時間が終わったら
風魔が、遠くに行ってしまいそうで
なにか、言わないと
風魔を、繋ぎ止められない気がした
メシン
風魔
メシン
メシン
メシン
メシン
メシン
これを、最後にしたくない
そんな、気持ちを込めて
凛として、覚悟を決めた顔で
そんなことを言う、メシン様に
何度目か分からない、巫女様の影を見た
一瞬だけ、ここに残りたいという感情があった気がした
…でも、違う
俺にとって、巫女様は
風魔
やっぱり、誰も敵わない
巫女様は、そんなお方だから
…でも、だからって
メシン様のことが嫌いとかは思わなかった
むしろ、好ましい方だと思う
それは、あくまでも
「友愛」、というものなのかもしれない
それでも
最大限の敬意を込めて
メシン様に、返事をする
風魔
風魔
そう言って
巫女様の元へ飛んで行った
間に合え、と
祈りを込めて
間に合え
間に合え
心の中で、祈り続けた
巫女様、どうかご無事で…
そんなことを願いつつ
次に映った光景は
世界の残酷さを、表していた
未門様の、光がない顔
巫女様の、死ぬ気でやるという覚悟の顔
そして、他の神の使いは介入が出来ないだろうと容易に予想ができる
そんな、術の戦い
一瞬、見蕩れて
次の瞬間
巫女様が、術で押し負けた
介入、出来るか
風魔
風魔
覚悟を決めて、おふたりの中に入り込んで
未門様の術を、相殺した
風魔
そのまま、巫女様に回復術を使う
……こんなに傷ついた巫女様、初めて見た
…正直、怖かった
巫女様はようやく気がついたのか
目が、少しだけ開いた
風魔
風魔
初めに口から出てきたのは
心の底からの謝罪だった
とにかく、不甲斐ないとしか言いようが無い
桃香
桃香
風魔
それは、正真正銘の本音だった
…これから、失うのだとしても
最後まで、それに抗いたかった
…まぁ、巫女様からは介入するなと言われていたから
最後まで、見届けるつもりだけど
桃香
桃香
聞こえないからなのか
巫女様の口から、未門様の名を聞けた
それが、なんとなく嬉しくて
だから、苦しい
多分、もう聞けない
風魔
桃香
そう、寂しそうに笑う巫女様
……あぁ、本当に
なんで、この方が
なんて、何回目だろう
桃香
よろけながら立ちあがる巫女様
…自惚れるつもりは無いが
自分が居なかったら、と考えると怖い
風魔
風魔
止めるなら、今だと思った
一言、逃げたいと言ってくだされば
ここから全員連れて逃げ切れる自信があった
…けど、そんなことを考えつつ
俺達の巫女様なら選ばない
そんな、自信があった
そして
桃香
なんて、不敵な笑顔で言う巫女様に
やっぱり、敬愛する巫女様は特別だ
なんて、感情を抱いた
風魔
そう言い、白い刀を渡す
巫女様の、「白刀・白雪」
よく、似合っていた
少し眺めていると
巫女様が、刀を構える
それを察し、邪魔にならない場所まで下がる
よく見たら、小雪や星奈も居る
……見届けます、巫女様
他の誰でもない、貴女様を
見届ける
決めていた、ずっと
それでも、残酷なものだと思ってしまう
今度こそ介入する暇のない
そんな、生死を賭けた戦い
やっぱり、未門様の方が1歩上手で
そして、遂に
終わる
そう、思った瞬間
桃香
あんなに嫌がっていた巫女様が
未門様の名前を呼んだ
次の瞬間
未門様の表情が一気に変わる
それは、俺達がよく知る
未門様のお顔で
…ただ、言えることがあるとするなら
風魔
目の前で、刺される巫女様
介入するな、と何度も頭の中で繰り返す
だけど……
風魔
無理だ、無理、無理に決まってる!!
どうして、どうしてこの方が!?
そんな、この世界に対する怒りで
どうにかなりそうだった
そして、巫女様の言いつけを破り
巫女様に回復術を使ってしまった
だけど、「黒刀・蓬莱」の奪われる力によって何もかも奪われていく
桃香
普段からは考えられ無いほど、細い声でそういう巫女様
風魔
このまま、見殺しにしろと?
…それが、願いでも
今は、噛み砕けない
だが、時間というのは
残酷で
そのまま、巫女様は
愛する未門様の腕の中で
息を、引き取った
その瞬間
この目に見える世界が
ぼやけて、上手く見えなくなった
不思議と、声は出なかった
ただ、ひたすらに泣く自分を
客観視してるような
そんな、気分だった
一言、風魔は言ってから
見向きもせず、巫女様の元へ向かった
目の前から消えた瞬間
様々なものが、混ざり合う
メシン
メシン
メシン
1人になった瞬間
本音の弱音が、留まることなく流れる
メシン
メシン
メシン
メシン
メシン
メシン
そう、自分に言い聞かせた
……よく考えてみれば
もしかしたらボクは
風魔に認められたかったのかもしれない
……いや、違うな
きっと
メシン
その瞳には、いつも誰かいた
ボクを通して、誰かを見てた
メシン
メシン
確かに、ボクは
風魔の事を敬っていた
それと、同じくらい
メシン
メシン
そのままボクは家に帰った
きっとこれから先、ボクは沙羅として生きていく
…ねぇ、風魔
今度会う時は、もっと立派に巫女をしてるから
そしたら
今度こそ
メシン
あの後、駆けつけた白魔さんと秋霖さんから色々話を聞いた
八大陸のこと
巫女様と未門様のこと
白魔様方ご自身のこと
……そして
……陰りの段位のこと
どうやら、そんなものに選ばれたらしい
そして、この後は未門様と一緒に巫女様を待つ日々になるらしい
そこにクルトも居るらしいから本気で1発殴り飛ばそうと思う
そんなものじゃ死なないだろ、あの吸血姫
……でも、巫女様の所に来たがっていたらしいし
…やっぱり、ちょっとだけ加減してやろう
そう思ってみたり
これから俺達は「世界から愛された国」に向かう
そこで、クルトから全てを聞くらしい
この世界のこと
それと
謎に包まれた、調停者のこと
きっと何も知らずに生きていたんだ
…きっと、ここが最底辺だから
後は、上に登るだけ
風魔
風魔
風魔
風魔
風魔
風魔
そんな、祈りをした
苦痛の中で、生きていた
全てを背負って、生きていた
……もう、休んでもいいだろう
そんな、叫びに似た祈りを込めて
次の目的地
「世界から愛された国」へと向かった
去華就実の風、完結
NEXT→完璧の言葉が似合うこの国に終焉を
コメント
5件
風魔さんは最後までメシン様を「巫女」と呼ぶことはなかった。それはメシン様も分かりきっていたはず…だけど、風魔さんに『沙羅の巫女4代目当主、沙羅メシン』を見て欲しかったんだね……不老不死同士、いつかまた必ず出会えると思うから……それまでの間に『沙羅の巫女』としてメシン様には頑張って欲しいな……!! 桃香さんと未門さんの戦いはちょっとした描写でも読んでて胸が痛い……今回は風魔さんの想いが強く書かれて
去華就実(きょかしゅうじつ) 意味・見た目だけ着飾ることをやめて真面目な態度をとること。花を捨てて実を取るという意味で見た目よりも中身を大切にするということ。 本作においては桃香の外見がいくら変わっていようと中身をただひたすらに敬愛している風魔をイメージした。それと同時に不老不死で変われない風魔への皮肉を込めて。