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ヴァルローゼ国の王都から少し離れた場所に位置する港ルダン。 港ルダンから出ているリビアーヌ国行きの船にシェラとアディが乗ってから、もう4日経つ。
シェラとアディはあと1日でリビアーヌ国へと到着する為、何処か落ち着かない気持ちでいた。
船内は昼前であるせいか、甲板にはシェラとアディ以外にも人がおり、賑やかな声で溢れていた。
シェラ
アディ
シェラ
そう、昨日の夜、アディは船酔いした。 唐突に夜の海を見たいと言ってきたアディに付き添う形でシェラはアディと共に甲板に訪れた。
甲板に着いてから夜の水面を甲板から見下ろすように長い間見つめていたアディ。
そんなに長く下を向いていたら、船酔いするわよとシェラは注意したのだが、アディは『大丈夫だよ〜、心配無用』などと言いながら、笑みを溢していた。
アディ
シェラ
アディ
アディは謝罪をしてからシェラを見て優しく微笑んだ。
そんなシェラとアディの姿を遠目に見ていた一人の少女は、はっと何かに気付いたかのような顔をして止まっていた足を動かし歩き始める。
少女
少女は意味深な事を独り言のようにぽつりと呟き、シェラとアディの姿を桃色の瞳に映しながら足を早めた。
少女
シェラとアディが他愛のない会話を続けていた途中で、一人の少女が話しかけてきた。
その少女は桃色の瞳に、腰まである淡い緑髪を、時折吹く風によって靡かせながら、シェラとアディの姿を桃色の瞳に映している。
シェラ
シェラは話しかけてきた少女に向き直り、そう問い掛ける。少女はそんなシェラを見つめてから、口を開く。
少女
シェラ
少女
少女
少女はそこまで言い口をつぐむ。 シェラの隣にいるアディは何だろうか?と少女の顔を伺うように見ている。
少女はアディと距離を詰める為に、アディの前に向き直り、近寄る。 そして、距離を詰めた少女は少し背伸びをして、アディの耳元で何かを告げた。
少女
少女
少女はアディの耳元でそう告げると、二、三歩下がり、シェラに向き直る。
シェラ
シェラ
少女
少女
シェラ
シェラはわかっていた。 この先、追っ手に追いつかれて、捕まったら、騎士の手によって殺されてしまうかもしれないことを。
けれど、それでも逃げなければならない。第一王子ヴァリアントの死を唯一知っているのは自分シェラだけであるのだから。
少女
少女はそう言い、アディとシェラに背を向けてその場を立ち去る。
そんな少女の後ろ姿をシェラとアディは見えなくなるまで見つめていた。
少女が立ち去った後、アディとシェラは再び、話し始める。
アディ
アディ
シェラ
シェラはさっきの少女が、アディの耳元で何を告げたのか、気になっていた。
そんなシェラに問われたアディは、一瞬、表情を曇らせたが、すぐいつもの爽やかな顔に戻り、シェラの問いに返答する為、声にする。
アディ
アディはシェラにはまだ本当のことを言えないと思った為、適当に誤魔化すことにする。
しかし、案の定、シェラは眉間にシワを寄せて、アディのサルビアブルーの瞳を見つめてくる。
シェラ
アディ
本当はそんなこと言われてないが、この場を上手くやり過ごす為、アディは嘘つく。
シェラはアディの口から出た言葉に少し驚き、シェラが思っていた事と違った為か肩を落とす。
シェラ
アディ
シェラ
アディ
そんな二人の会話に重なるように、正午を知らせる鐘が船の中にあるスピーカーから流れ始める。
シェラ
アディ
シェラ
晴れた空の下。 春の陽気な陽の光がシェラとアディの姿を照らしていた。