テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ヴァルローゼ国の港〈ヴェルン〉からリビアーヌ国の王都近くの港〈ルダン〉に着いたのは5日目の昼過ぎ頃であった。
シェラ
アディ
港〈ルダン〉は、リビアーヌ国の王都近くの港であり、隣国であるヴァルローゼ国行きの船とルパニア国行きの船が出ている為、他国からの貿易が盛んな場所である。
アディとシェラは、色様々な服を見に纏った人々が行き交うのを横目に見ながら、人の流れに沿って歩いていた。
再び出航する船の合図を知らせる音が港に鳴り響き渡り。 行き交う人々の声と出航を知らせる合図が重なり合いアディとシェラの耳に届く。
シェラ
アディ
シェラ
アディ
アディとシェラはリビアーヌ国の左端にある港〈ルドリア〉へと歩みを進めていた。
アディ
アディが弾んだ声でシェラに伝えれば、シェラからそう、と安心したような声が返ってくる。
2日、宿屋に泊まりながら歩き続けたシェラとアディ。今日も道中にあった宿屋で、一夜を明かす。
シェラ
アディ
シェラ
時折吹く、春の心地良い風がアディとシェラの身体に当たる。
その度にアディのオレンジ色の髪とシェラの金髪の髪は靡いていた。
シェラが城から逃げ延びてから、7日が経った今日という日は過去の世界線の一つで、自分アディとシェラは追っ手に捕まり殺されてしまった日でもある。
過去の世界線の一つのように、またシェラと自分アディは殺されてしまうかもしれない。そんな少しばかりの不安がアディを襲う。
アディ
アディ
情報が広まるのは早い。
昼間、道中でシェラと共に立ち寄った店に置いてあった今日の朝出たであろう新聞記事にヴァルローゼ国の第一王女であるシェラが実の兄であり、第一王子を殺したことが公表されていた。
そして、見つけた者には報酬として多額の額を支払うという。
シェラ
アディ
アディはシェラに言えなかった。
新聞記事のことも、自分アディは何度もシェラと巡り合い、シェラが命を落とす度に過去に戻りやり直していることも。
いつか言える時がきたらその時は。
シェラ
アディ
シェラ
シェラ
シェラ
暗い部屋の中、シェラはベットに横になりながら、隣のベットに寝ているであろうアディにそう告げる。
アディ
未来を告げる姫。 シェラが見た未来を周りに告げる。 それがシェラの王女としての務めであった。
未来を見たくてこの力を使ったことは一度もない。いつかの世界線でシェラはそう言っていた。
アディはその時思った。本当は嫌であったのかもしれない。未来を見ることが。
今の彼女シェラが、どう思っているのかはわからない。
過去の世界線のシェラと今の世界線の彼女シェラはもしかしたら思っていることが違うかもしれないのだから。
シェラ
シェラ
アディ
アディは部屋の白い天井を見つめながら、優しい声色で隣のベットで横になっているシェラにそう告げる。
シェラ
シェラはそう言い残し、意識を手放した。
シェラの寝息が聞こえ始め、アディは暗い部屋の中、ベットに横になりながらぽつりと呟く。
アディ
夜暗い静かな部屋の中に、夜の月明かりが差し込みシェラとアディの姿を見守るように照らしていた。