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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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俺は自分の目を疑った

何度も何度も表紙を見返す

ノートの表紙にはこんな見出しがついていた

「大戦記録 No.76 -人造兵器開発-」

人造兵器開発__

あまりにも見飽きた文字の羅列がそこにあった

暇72

なあ

俺は表紙を凝視したまま

いるまに声をかける

暇72

なんで知ってる?

いるまは少し溜めてから

いるま

手伝う気になった?

少し煽るような口調で告げた

俺は彼の方にゆっくりと向き直って

静かに問い詰める

暇72

おまえ

暇72

何者だ?

暇72

まさか“そっち”側?

彼は答えない

ただ無言で俺を見つめているだけだ

分かってる

おまえがこの程度で

口を割る人間ではないことくらい

ならば

暇72

おまえも俺を裏切るのか

これでどうだ?!

吐き捨てるような俺の呟きに

彼の眉がピクリと動く

ようやく反応を示した彼は

いるま

ふぅ

少しだけ息を吐いて

意味不明なことを口にする

いるま

同類だよ

どーるい、、、同類?

何を言ってるんだ?

脳が言葉の処理を拒む

暇72

何が同類だ

暇72

俺のこと何も知らんくせに💢

俺は声を荒げた

もう我慢ならない

こいつは俺の地雷を

1ミリのズレなく踏み抜きやがった

許せない許せない許せない!!

俺の気持ちは考えてすらないんだろうな

さらに彼はこんなことまで口走りはじめた

いるま

おまえ、俺を信じるって言ったよな

暇72

……は?((震

俺は引き攣るように笑う

この男は俺を裏切った挙げ句

俺の信頼を盾にするのか

どこまで自己中心的な人間なんだ

暇72

この状況でまだ信じられてると思ってんのかよ

暇72

ふざけんな!

暇72

頭お花畑か?💢

暇72

____!💢

俺は彼を罵倒し続けた

頭に血が上っているせいだろうか

自分が何を言っているのか

見当もつかない

そんな俺とは対照的に

いるまはとても冷静だった

いるま

一度言った言葉には責任を持て

いるま

おまえのあの言葉は、想いは

いるま

そんなに薄っぺらいものだったのか?

俺は口を開いたまま固まった

先程までの勢いは見る影もない

俺は何も言い返せなくなってしまった

いるまの言葉が俺に重くのしかかる

俺が信じると言ったのは

紛れもない事実なのだから……

あの言葉は

俺なりにたくさん考えて

悩み抜いた末の結論だった

俺の導き出した答えだった

でも“間違って”いた

現実というのは残酷で

努力と結果は比例するわけではない

たくさん考えたからといって

世界はそれを正解だとは認めてくれない

どうしようもない

俺にはどうにもできない

あれ以上の考えが浮かんでこなかったんだ

あの人だったら

正しい答えを見出せたのかな

じゃあ……

あの時間は

今まで考えてきた俺の時間は

全部無駄、だったってこと……?

俺はショックを受け

その場に座り込んだ

いるま

思い込みだけで相手を判断するのは

いるま

おまえの悪い癖だ

いるま

人の話は最後まで聞け

何も聞こえない

いや、頭に入ってこないと言うべきか

彼の口から発せられた波が

右から左へと流れていく

それでも

いるま

俺はおまえを裏切ったつもりはない

いるま

さっきも言った通り

いるま

俺とおまえは同類

いるまは話し続けた

いるま

“被験者”、と言えば分かるか?

被験者

俺の鼓膜がようやく振動を捕らえた

途端に辛い記憶が溢れ出す

このとき俺は初めて

彼の言った言葉を

“同類”の意味を理解した

まさか

次から次へと押し寄せてくる記憶の断片

1つずつ繋ぎ合わせていくと

俺はある答えに辿り着いた

また間違っているかもしれないとも思った

だが俺にはそんな気持ちをも押しのける 何かを持っていた

そうだ

被験者は

俺だけじゃなかった

暇72

いるまも、なのか…?!

震えながら彼を見上げる

いるまは俺の期待した通り

ゆっくりと首を縦に振った

心なしか

肩の荷が下りたように感じる

こんなところにいたのか

この記憶を共有できる人間が

俺の目から自然と涙がこぼれ落ちた

いるま

ほら、なつ

暇72

……ん

暇72

(ズズッ)

いるま

少しは落ち着いた?

暇72

コク((頷

俺は両手で握ったカップを見つめながら

小さく頷いた

温かいものが喉を通って

全身に広がっていく

熱すぎずぬるすぎずな

ちょうどいい温度

あの後いるまは

泣きじゃくる俺を

愚痴一つ溢さず

最初にいた部屋まで背負って運んでくれた

俺をソファに寝かせると

どこからかカップを取り出し

ココアを淹れて俺に渡した

俺が落ち着いたのを確認すると

俺の向かいのソファに腰を下ろす

いるま

説明、始めても良い?

暇72

………

無言を肯定と取ったのか

いるまは喋りだした

いるま

わざと試すような物言いをした…ごめん

彼は一呼吸置いて再び話し出した

いるま

さっきの話でわかったと思うけど

いるま

俺はおまえと同じく

いるま

“被験者”として生きていた頃の記憶を持っている

いるま

あのときは理由も分からず実験台にされていたけど

いるま

今は状況が変わった

いるま

俺達は自由に動くことができている

いるま

いくらでも情報を集められる

いるま

だから

いるま

知りたいんだ

いるま

俺たちは何故作られたのか

いるま

その根幹を__

いるま

改めて、俺の調査を手伝ってくれないか?

いるまは本気だ

本気で俺に協力してほしいと思ってるんだ

それなのに俺は……

暇72

(ぐすっ)

やべ…また涙が

いるま

…泣くほど嫌?

暇72

違うッッ!!

俺は食い気味に否定した

嫌じゃねーよ全然

そこじゃなくて……

沈黙を続けていた俺がいきなり喋るものだから

いるまは面食らったような顔をした

暇72

あ、えと

暇72

………ッッ

暇72

その、

暇72

申し訳無いなって

いるま

申し訳無い…?

俺は頷き、俯(うつむ)いて喋りだした

暇72

信じるとか言っておきながら

暇72

勘違いですぐ手のひら返して

暇72

おまえにひどいこと言って

暇72

それでもまだ

暇72

いるまに「手伝ってほしい」って言われるのが

暇72

頼られるのが嬉しい、なんて

暇72

俺最低だなって思って…

暇72

まじで、ごめん

沈黙が流れる

いるまの顔が見れない

いるま

……なt

暇72

ちょっとさ

俺はいるまの言葉を遮った

にも関わらず

彼は俺が話すのを待ってくれた

暇72

時間頂戴

暇72

今日いろんなこと起き過ぎて

暇72

訳わかんねぇ

暇72

整理する時間だけ、ください

俺はいるまに向かって頭を下げた

顔を見なくても 彼が戸惑っているのが伝わってくる

いるま

な……ッッ

彼は何かを言おうとしたようだが

いるま

分かった

その一言だけを残し

この場から去っていった

暇72

時間頂戴

そう言われてから随分時間が経ったが

彼が尋ねてくる様子はない

いるま

はぁ

大きなため息をつく

今日中に話の決着をつけるのは難しそうだ

俺は諦めてベッドに潜り込んだ

さっさと寝よ

目を瞑る

眠れない……

考えないようにと努力しても

気が付けば

なつのことで頭がいっぱいになっている

考える時間をあげたとはいえ

何時間も音沙汰無しは

精神的にくるものがあった

明日には話してくれると良いけど…

今はそう願うしかない

外が明るくなってきた頃

俺はようやく睡魔に襲われた

普段より布団が温かかった気もするが…

まあ、、、気のせいだろ

俺、恩師に裏切られました

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