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凛
美咲
私は凛。高校二年生。
放課後のチャイムが鳴るころ、私と美咲はいつものように昇降口で別れた。 美咲は小さなぬいぐるみを抱え、笑顔で手を振った。あの子にとって、それはお守りのようなものだった。
凛
私は部活に向かい、汗のにおいと掛け声に包まれる。外からかすかに救急車のサイレンが聞こえたときも、特に気にはしなかった。どこか遠くの出来事だと思った。
凛
夕暮れ、練習を終えて校門を出た。 帰り道の交差点に、赤いランプを回した救急車が止まっていた。ざわめく人だかり。胸騒ぎがして足が早まる。
凛
私は、近くにいた人にたずねた。
知らない人
そのとき、視界に飛び込んできたもの。 アスファルトに広がる血だまり。 太陽にきらめく車の欠片。
その中に、ぬいぐるみが転がっていた。 白くてーー
凛
私は声を出そうとしたが、喉が凍りついた。 なぜなら、そのぬいぐるみが すぐそばに横たわっている少女――美咲の、ものだったから。
凛
血が染みたぬいぐるみを手に、私は知った
美咲はもう、ここにはいない
でも、私の心の中ではずっと、 笑ってる。