ここはスワローテイル王国
ここの王国では誰もが翼を授かっている
エリナ
私はこの王国の姫……らしい
父は王様、母は王妃
その娘の私は王女に当てはまる
なりたくもないお姫様を演じて、生まれてすぐ人々に見せつけられ
正直いい気分では無い
そしてこの国の頂点として相応しい羽は天使のような大きな翼
それに反して私のはよく分からない小さい羽
飛べないし
両親は大きくて立派なものを持っているのに私にはない
恥ずかしくてろくに国のみんなに顔を見せてない
どうせ笑われる
コンコン
母
エリナ
父
エリナ
父
母
母
エリナ
エリナ
母
父
エリナ
母
エリナ
エリナ
エリナ
エリナ
まぁきっと普通の女の子になったとしてもこの羽を笑いものにされることは変わりない
本当に最低だ。自分が憎いからって両親に当たって
私なんて、どうせ不幸を呼び起こす悪魔なんだ
もう何年両親に顔を見せていないだろうか
本当に私は親不孝者だな
エリナ
エリナ
自然と涙が零れた
機能しない翼なんていらない
だったら取ってしまった方がいい
だけどこの国で生きるには翼が必須
翼があることによってこの国の国民としての象徴となる
王女である私が翼を切除したなんて言ったら即監禁
苦しい
エリナ
「おわぁあっ!?」
エリナ
窓の上から男の人の叫び声が聞こえた
エリナ
エリナ
その場を後にしようとした時、
「うわっ!!」
エリナ
姿が見えた
窓に掴まって落ちないように必死だ
───助けなきゃ…
エリナ
そう言って手を差し伸べた
エリナ
思いっきり力を込めて…
エリナ
部屋の中へ引っ張った
「わっ…」ドサッ
エリナ
目を開けると直ぐに顔があった
床に倒れており逃げ道がない
エリナ
「わぁあああ!?!?!?」
お互い絶叫
「ごごごっ…ごめん!!!!」
そう言って急いで立ち上がり手を差し伸べてくれた
悪い人ではなさそう…?
エリナ
「大丈夫!!!」
エリナ
「あぁ、忘れてた」
スティーブ
スティーブ
エリナ
スティーブ
エリナ
なに、?この人…
スティーブ
スティーブ
エリナ
ちょっとよくわかんない……
エリナ
スティーブ
エリナ
まぁ…泣いたのは間違いないけど…
スティーブ
スティーブ
エリナ
スティーブ
エリナ
私が…?なんで……
しかも…なんで私の名前を…?
エリナ
スティーブ
ケロッとした笑顔で聞き返した
そして少し考えたあとに
スティーブ
そう小さく笑った
エリナ
隣国……
確かに翼がない…
でももしバレたら……
エリナ
スティーブ
エリナ
スティーブ
エリナ
スティーブ
エリナ
スティーブ
スティーブ
エリナ
なに…この気持ち……
スティーブ
スティーブ
そしてまた窓から外へ出ようとした
エリナ
スティーブ
聞きたいことがありすぎて…
スティーブ
エリナ
スティーブ
エリナ
何故だろう、皮肉に聞こえない
スティーブ
私の心に温もりを与えて去っていった
エリナ
胸にそっと手を添えた
不思議と高鳴っている
…何だったんだろう
エリナ
胸が苦しい…これはなに…?
また会えるかなぁと思いながら窓の外を眺める
……昨日のは夢だったのかな
トントントン
スティーブ
エリナ
窓を叩く音と同時にスティーブさんの声がした
急いで窓を開ける
スティーブ
エリナ
スティーブ
座り込んで上目遣いで私を見てきた
不覚にも可愛く見えてしまう
エリナ
スティーブ
スティーブ
別に頼んでないけど…と思いながらも言わないでおいた
スティーブ
エリナ
スティーブ
エリナ
キラキラした目で見つめてきた
エリナ
スティーブ
エリナ
スティーブ
エリナ
予想外の答えだった
練習…?
エリナ
エリナ
エリナ
スティーブ
窓に手をかけて続ける
スティーブ
スティーブ
そして月明かりに照らされながら私を見た
スティーブ
そっと私に手を伸ばす
スティーブ
エリナ
正直少し怖い
外の地を踏むなんて何年ぶりだろう
スティーブ
エリナ
スティーブ
スティーブ
ぐいっ、とスティーブさんの方に体が寄せられる
恥ずかしさよりも怖さの方が大きく、体に顔を埋めてしまった
スティーブ
スティーブ
そんな私の姿を見て優しく声をかけてくれる
なんだろう…感じたこととない安心感…
温かくて…優しくて…
スティーブ
エリナ
ふぅ…と深呼吸をしてから一言
スティーブ
エリナ
そう言って一気に窓から飛び降りた
エリナ
スティーブ
吹き抜けるような風
怖さもあったがそれとは反対に爽快感を覚えた
風をきって地へと降りていく
もう地面が近づいてきた
このままじゃ地面にたたきつけられる
エリナ
スティーブ
落ちながら笑顔で私の方を見た
スティーブ
──今……??
もう地上だ
怖い…落ちる……
エリナ
思い切り目を瞑った
エリナ
だけどなぜ…?すぐそこにあった地面に到着するのには時間がかかりすぎている
さっきまで吹き抜けていた風もいつの間にか無くなっている
恐る恐る目を開けた
エリナ
エリナ
ほんの数センチ、浮いていた
私の翼がヒラヒラと小さく動いている
―私…飛べてる…!?
エリナ
エリナ
辺りを見回したら地面に倒れてるスティーブさんを見つけた
エリナ
急いで駆け寄り声をかける
スティーブ
エリナ
スティーブ
エリナ
そうか…そういう事だったのか…
私を飛ばせるために自分を犠牲にしてまでこんな無茶なことをしたのか
エリナ
エリナ
スティーブ
体を見ると擦り傷があちこちに見受けられた
スティーブ
スティーブ
勢いよくガバッと起き上がった
スティーブ
犬のようなキラキラと澄んだ瞳
それに私は笑顔で答えた
エリナ
スティーブ
エリナ
スティーブ
エリナ
悲しんじゃうかな
怒っちゃうかな
ボロボロになってまで飛び降りたのに飛べた高さは数センチなんて言ったら
打ち明けるのは正直勇気がいるのだった
スティーブ
エリナ
ごめんなさい…ごめんなさい…
スティーブ
エリナ
スティーブ
スティーブ
スティーブ
エリナ
この時わかった
スティーブさんは私の光だ
スティーブ
エリナ
エリナ
エリナ
エリナ
エリナ
初めて心の底から笑えた気がする
スティーブ
スティーブさんの顔がぽっ、となった
どうしたんだろう
エリナ
のぞきこんで顔色を伺う
スティーブ
いつもの笑顔に戻った
スティーブ
スティーブ
そっか…いつか終わりは来る
スティーブ
エリナ
スティーブ
スティーブ
スティーブ
エリナ
スティーブ
スティーブ
エリナ
あぁ…これも作戦通りなんだ…
「飛ばないと帰れない環境を作り出す」
飛べた感覚を体が忘れないようにもう一度飛ばせようとする考え
わざわざ部屋から降りたのもその理由込みだろう
本当に凄いなぁ
エリナ
スティーブ
エリナ
スティーブ
スティーブ
スティーブ
スティーブ
エリナ
スティーブ
エリナ
スティーブ
スティーブ
エリナ
スティーブ
そう言って私を抱き抱えた
エリナ
スティーブ
思いっきり力を入れたと思えば…
スティーブ
エリナ
力いっぱい私を空高く投げた
そんな私は自然と羽を広げられた
エリナ
エリナ
ふわふわとあちこちに移動して見せる
ふとスティーブさんを見たらこちらを見て嬉しそうに手を振っていた
───また会いたいな
夜明けの空に舞う貴女はとても美しかったんだ
また会いたい
初めて見せた無邪気な笑顔を見て、ただそう思った
次の日も私に会いに来てくれた
相変わらずボロボロになりながら
エリナ
スティーブ
スティーブ
照れくさそうに目線を斜め上に上げ片手を首の後ろに回した
多分、癖なんだろうな
エリナ
でもよく考えたらそうだ
いつも窓に必死に掴まって私を呼んでいるし
スティーブ
エリナ
スティーブ
エリナ
痛いところを突かれた
胸の奥がきゅっ、と締め付けられる
エリナ
スティーブ
エリナ
そうだ、もう前までの私とは違う
自分を見つけたんだ
エリナ
スティーブ
エリナ
スティーブ
自分の事のように喜んでいる
私の成長をたくさん喜んでくれる
だから私も少しづつ頑張ろうって思える
久々に自分の部屋を出て廊下を歩いた
両親に会うためだ
エリナ
2人は椅子に座っていた
父
母
力いっぱい私を抱きしめてくれた
さぁ、本題だ
エリナ
エリナ
母
父
まるで夢を見ているかのよう
本当にこんなことになるなんて
エリナ
母
父
エリナ
母
父
父
エリナ
いつ見ても2人の翼は美しかった
それを見るとやっぱり私は惨めに見える
でも、いいの
私はこの翼が好き
他の誰にもない、思い出が沢山詰まってるから
今日も夜が来た
外は星が輝いている
窓に腕を置きながらいつものようにスティーブさんを待っていた
でも今日はなんだか遅い
エリナ
すると城の下から銃声と金属の重なる音が響いた
エリナ
するとそこにはスティーブさんがいた
エリナ
エリナ
城の兵たちがスティーブさんを仕留めようと攻撃をする
きっとバレてしまっんだ
他国への侵入が。
もうどれくらい攻撃されていたのか、スティーブさんはボロボロだった
トドメをさそうと兵隊が弓を構えた
エリナ
エリナ
気づいた時にはもう窓から飛び降りていた
翼を広げ全速力でスティーブさんの元へ降りる
エリナ
スティーブ
驚いた表情で降りてくる私を見上げた
そんなスティーブさんに飛びつき庇うように抱きしめる
理解に追いつかなかった兵隊は弓をそのまま放った
エリナ
スティーブ
脳を切り付ける音が響いた
何事だと思った
だけど今はスティーブさんを守ることに全てを捧げた
エリナ
エリナ
スティーブ
悲しい顔をして私を見る
なぜ悲しむの?守ったことが余計なお世話だった、?
スティーブ
エリナ
そっと翼に手を添えると、それは綺麗に破けていた
さっきの酷い音はこのせいだったのか
活気を失った翼は酷く黒く染まり力無く項垂れている
エリナ
別に翼が破れたことがショックな訳では無い
じゃあなんでこんなにも悲しいのか
私にとってのこの翼は、スティーブさんとの思い出の全てだった
それが砕け散ったかのような喪失感を憶えてしまったからだ
兵隊は直ぐに城へ戻り両親や執事達に伝達をしに行った
この冷たく薄暗い夜に2人だけが残された
スティーブ
スティーブ
違う、違うよ、、
スティーブ
スティーブ
それはまるで今までの思い出が全否定されたように聞こえた
エリナ
スティーブ
もう二度と会えないのだ
ここへ来てくれないということは。
こんな最期でいいの、、?
遠くから大勢の足音が聞こえてきた
なら、最期に私が彼にしてあげられることをするのがいい
それは本当に辛いけれど。
エリナ
エリナ
エリナ
エリナ
スティーブ
立ち竦んでいる
早く行って
ここにいたら殺されちゃう
本当に逢えなくなっちゃう
エリナ
声を張り上げ我に返らせる
スティーブさんはそのまま私に背を向け走り出した
エリナ
涙が止まらない
それは痛みでも悲しみでもない
言葉で言い表せることが出来ない感情を抱いた
ただ聞こえるのはスティーブさんの足音をかき消す兵隊の足音のみだった
私の翼はスティーブさんと共に消えてしまった
あの日から数日、
両親は酷く悲しみ涙を流した
それは翼を失ったショックだろう
そんな薄っぺらい感情の涙見て心底不快だった
あんなことが起きてから、城の警備がより厳重になったこと
故にスティーブさんが会いに来れなくなったこと
私とスティーブさんの繋がりをねじ伏せたこの城が許せない
あの日以来もう会っていない
母
エリナ
母
エリナ
無理してって何……?
なにそれ……
父
エリナ
母
エリナ
エリナ
エリナ
エリナ
エリナ
父
エリナ
エリナ
エリナ
エリナ
エリナ
エリナ
母
エリナ
止まらなかった
今まで抱えてきた劣等感が炭酸が弾けたかのように溢れ出てきた
戸惑う両親の顔を見てうんざりした
図星らしかったからだ
エリナ
エリナ
エリナ
エリナ
エリナ
スティーブさんと、スティーブさんとの思い出が詰まった宝を失った私はもう壊れていた
エリナ
父
母
エリナ
エリナ
エリナ
エリナ
エリナ
エリナ
エリナ
酷いことを言ってしまったなという気持ちは微塵もなかった
反対になんだか清々した
エリナ
そう冷たく放って追い払った
どうせ理解してくれない
だから別に理解して欲しいなんてことも思わなかった
舞踏会当日
正直気分はのってない
だけどスティーブさんとの約束を果たすために行く
結果はどうなるか分からない
でもそれでいい
行くことに意味があると思ったから
約束を守ることに意味があると。
スティーブさんが今も尚私に会いに来てくれていたところで、舞踏会にスティーブさんがいないのは変わらない
そう考えれば会えなくなった運命になったとしても結局変化は遂げなかったのだ
エリナ
無くなった翼と大きくなった自信
スティーブさんを失ったのと反対に大きな自信を手に入れた
何か手に入れれば代償は必ずある
そう自分に言い聞かせて城を出た
―今の私ならやれる。
初めての舞踏会はとても眩しかった
周りがキラキラと光っていてまるで別世界
右を向けば綺麗な女性たち
左を向けば美しい男性たち
自分に相応しい場とは到底思えなかった
エリナ
どうしたらいいか分からずソワソワしているとコソコソと声が聞こえてきた
「ねぇ、あの子ってスワローテイル王国の王女だよね?」
「そうだよね、、翼なくない??」
「あそこの国って確か翼が象徴じゃなかったっけ、、」
「えぇ…よく自国のシンボル無くしてまでここ来るよねぇ、、」
「恥ずかしいとか申し訳ないとかって思わないのかな、、w」
「私なら絶対無理〜w」
エリナ
まぁ分かっていた
こんなことを言われることは覚悟の上だった
そりゃそうだ。シンボル無くしてここに来るのは本当に醜いことしていると思ってる
私だけに迷惑がかかる問題ではない
その国に住んでいる人々に影響を与えるのだ
王子
エリナ
ぼーっと考えていると前に人がいた
王子
エリナ
どうやら他国の王子のような人だ
王子
エリナ
王子
なぜそんなにも私に会いたかったんだろう
王子
エリナ
エリナ
心臓がぼっ、と弾けた
そんな単刀直入に言われて理解が覚束無い
王子
エリナ
笑いながら手を首の後ろに回した
笑顔が素敵
……スティーブさんみたい
王子
膝を地につき手を差し伸べてきた
……もう…
もういいか…
エリナ
私はゆっくりと手を伸ばした
その時だった
ふわっ……
エリナ
私の体を誰かが優しく包んだ
とても大きくて、暖かい
でもなんだろう、1度感じたことあるような懐かしさ……
王子
王子
目をゆっくり開けると
スティーブさんがいた
私の体をスティーブさんが包んでいた
とても綺麗な服を着ていて、いつも会っているような雰囲気とは打って変わって違う
スティーブ
王子
スティーブ
エリナ
スティーブ
誘拐犯…?
じゃあなんでそんな人が私の名前を知ってるの…?
……この人ってもしかして…初めてスティーブさんと会った時に言ってた…
私を狙ってる人……?
王子
小さく舌打ちをしてこの場を後にした
スティーブさんがゆっくり体を離す
スティーブ
エリナ
スティーブ
その笑顔はいつものような朗らかな表情だった
エリナ
エリナ
エリナ
スティーブさんがふふっ、と微笑んだ
どういう意味だろう
「え!待ってあの人って…!!」
「やばい……生ではじめてみたけど凄いかっこいい…」
「さすがだなぁ…」
エリナ
周りの反応を見て何となくわかった
エリナ
スティーブ
優しい笑顔で私の手を持った
そして地に膝をつき私を真っ直ぐ見つめた
スティーブ
エルミタージュ王国…
私の国のすぐ隣だ
大きな国ではないしあまり知られていない
裕福な国でもなく、王子を主体に国民みんなで支え合って成り立っている王国だ
だけどそこの国に住む王子だけはみんな知っていた
それがまさかスティーブさんだったなんて
エリナ
スティーブ
スティーブ
エリナ
スティーブ
エリナ
エリナ
スティーブ
スティーブ
全てそう仕向けていたのか
スティーブ
エリナ
スティーブ
スティーブさんは私の翼だけじゃない
私の中身、私の全てを見てくれる
心の深いところにまで目を向けて、私を変えてくれた
今日ここへ来れたのだってスティーブさんのおかげだ
翼と引き換えに、また新たなものを手に入れることが出来た
スティーブ
少し照れくさそうにかしこまってそう放った
エリナ
スティーブ
つい面白くて笑ってしまった
スティーブさんはあたふたしてる
だって──
エリナ
スティーブ
幸せな笑みを交わした
それは今までのような作り笑いではなく、スティーブさんのおかげで自然に身についた自然な笑顔
スティーブ
エリナ
スティーブ
エリナ
そう言って私の腕を引いた
エリナ
スティーブ
エリナ
スティーブ
スティーブ
スティーブ
スティーブ
No matter what you do, you'll always be my Cinderella.
貴女がどうなろうと、いつだって貴女は私のシンデレラだ
よりもと
よりもと
よりもと
よりもと
よりもと
よりもと
よりもと
よりもと
よりもと
よりもと
よりもと
よりもと
コメント
13件
スティーブさんめっちゃかっこいい✨ やっぱりお姫様は大変なのかなぁ 軽い軟禁状態になってそう... 今回も読んでて楽しかったです!
スティーブさんイケメン✨