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9 - 💟 サンドリヨン

♥

627

2023年10月11日

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ここはスワローテイル王国

ここの王国では誰もが翼を授かっている

エリナ

はぁ……

私はこの王国の姫……らしい

父は王様、母は王妃

その娘の私は王女に当てはまる

なりたくもないお姫様を演じて、生まれてすぐ人々に見せつけられ

正直いい気分では無い

そしてこの国の頂点として相応しい羽は天使のような大きな翼

それに反して私のはよく分からない小さい羽

飛べないし

両親は大きくて立派なものを持っているのに私にはない

恥ずかしくてろくに国のみんなに顔を見せてない

どうせ笑われる

コンコン

エリナ〜?

エリナ

はーい……

今回の舞踏会も行かないのか…?

エリナ

行かない……

そうか……

…エリナ

扉を開けて…?

エリナ

嫌だよ…

エリナ

恥ずかしいもん……

お母さんは好きだよ、エリナの翼

他と違くてかっこいいじゃないか

エリナ

それが嫌なの…!!!

エリナ……

エリナ

きっとお父さんもお母さんもせっかく生まれた娘が綺麗じゃなくていい気持ちじゃないでしょ!?

エリナ

それなのに…そんな嘘並べられても嬉しくないよ……

エリナ

私だって…普通の女の子が良かった…

エリナ

容姿なんて気にしなくて‪いい…普通の女の子に……

まぁきっと普通の女の子になったとしてもこの羽を笑いものにされることは変わりない

本当に最低だ。自分が憎いからって両親に当たって

私なんて、どうせ不幸を呼び起こす悪魔なんだ

もう何年両親に顔を見せていないだろうか

本当に私は親不孝者だな

エリナ

(ここから出たくもないし出る勇気もない…)

エリナ

(私…このまま一生こうして生きていくのかな…)

自然と涙が零れた

機能しない翼なんていらない

だったら取ってしまった方がいい

だけどこの国で生きるには翼が必須

翼があることによってこの国の国民としての象徴となる

王女である私が翼を切除したなんて言ったら即監禁

苦しい

エリナ

もう嫌……

「おわぁあっ!?」

エリナ

!?ビクッ

窓の上から男の人の叫び声が聞こえた

エリナ

(なに…侵入者……?)

エリナ

(お父さんに報告しなくちゃっ…)

その場を後にしようとした時、

「うわっ!!」

エリナ

っ!!

姿が見えた

窓に掴まって落ちないように必死だ

───助けなきゃ…

エリナ

掴まって!!

そう言って手を差し伸べた

エリナ

ふんっ………!!!!

思いっきり力を込めて…

エリナ

わっ…!!!!!

部屋の中へ引っ張った

「わっ…」ドサッ

エリナ

んっ…?

目を開けると直ぐに顔があった

床に倒れており逃げ道がない

エリナ

うわぁあああ!!!!!

「わぁあああ!?!?!?」

お互い絶叫

「ごごごっ…ごめん!!!!」

そう言って急いで立ち上がり手を差し伸べてくれた

悪い人ではなさそう…?

エリナ

大丈夫ですか…?

「大丈夫!!!」

エリナ

お名前を聞いても…

「あぁ、忘れてた」

スティーブ

俺はスティーブ

スティーブ

貴方の心を盗みに来ました

エリナ

……へ?

スティーブ

うわっ…決まった〜…✨

エリナ

……????

なに、?この人…

スティーブ

いや〜…長年の夢だったんだよねぇこれ言うの!

スティーブ

叶っちゃった〜✨✨

エリナ

よ…良かったです……?

ちょっとよくわかんない……

エリナ

でも…スティーブさんはなぜここに…?

スティーブ

涙の落ちる音がしたから

エリナ

え……

まぁ…泣いたのは間違いないけど…

スティーブ

嘘嘘冗談!!

スティーブ

少し用があってね

エリナ

用…?

スティーブ

エリナ、狙われてるよ

エリナ

……狙われてる……?

私が…?なんで……

しかも…なんで私の名前を…?

エリナ

貴方…何者なの…

スティーブ

俺?

ケロッとした笑顔で聞き返した

そして少し考えたあとに

スティーブ

隣国に住むただの狩人だよ

そう小さく笑った

エリナ

っ……

隣国……

確かに翼がない…

でももしバレたら……

エリナ

…早く帰った方がいいです

スティーブ

ん?

エリナ

翼がない者が許可なしに侵入したら…

スティーブ

知ってる

エリナ

え…?

スティーブ

知ってるよ、この国の掟

エリナ

なのになぜ…

スティーブ

狙われてる貴方を守りたかったから

スティーブ

エリナに逢いに来た理由は、それだけじゃダメかな、

エリナ

っ…

なに…この気持ち……

スティーブ

今日はそれを伝えたかっただけ

スティーブ

じゃあね!

そしてまた窓から外へ出ようとした

エリナ

待って…!!

スティーブ

ん?

聞きたいことがありすぎて…

スティーブ

…あ

エリナ

スティーブ

その翼、とっても素敵だね

エリナ

!!!

何故だろう、皮肉に聞こえない

スティーブ

じゃ!

私の心に温もりを与えて去っていった

エリナ

……

胸にそっと手を添えた

不思議と高鳴っている

…何だったんだろう

エリナ

っ…

胸が苦しい…これはなに…?

また会えるかなぁと思いながら窓の外を眺める

……昨日のは夢だったのかな

トントントン

スティーブ

エリナー!!!

エリナ

!!!

窓を叩く音と同時にスティーブさんの声がした

急いで窓を開ける

スティーブ

ふぅ…ありがとう!

エリナ

また来たんですか…?

スティーブ

…嫌だった……?

座り込んで上目遣いで私を見てきた

不覚にも可愛く見えてしまう

エリナ

べっ…別に……////

スティーブ

なら良かった!!

スティーブ

それに俺はえりなを守ろうと思ってここへ来てるんだからね?

別に頼んでないけど…と思いながらも言わないでおいた

スティーブ

ねぇねぇ

エリナ

…?

スティーブ

それ、飛べるの?

エリナ

っ……

キラキラした目で見つめてきた

エリナ

……飛べない

スティーブ

飛べないの?

エリナ

…うん……

スティーブ

じゃあ練習しよ!!!

エリナ

……え…?

予想外の答えだった

練習…?

エリナ

でも…外に出たら…

エリナ

バレちゃうよ…

エリナ

私たちばらばらになっちゃう…

スティーブ

大丈夫

窓に手をかけて続ける

スティーブ

今は夜だよ

スティーブ

みーんな寝てる

そして月明かりに照らされながら私を見た

スティーブ

誰も見てないさ

そっと私に手を伸ばす

スティーブ

おいで

エリナ

っ……

正直少し怖い

外の地を踏むなんて何年ぶりだろう

スティーブ

怖い?

エリナ

…コクッ

スティーブ

大丈夫だよ、俺がついてる

スティーブ

俺にちゃんと捕まってね

ぐいっ、とスティーブさんの方に体が寄せられる

恥ずかしさよりも怖さの方が大きく、体に顔を埋めてしまった

スティーブ

スティーブ

大丈夫

そんな私の姿を見て優しく声をかけてくれる

なんだろう…感じたこととない安心感…

温かくて…優しくて…

スティーブ

絶対俺から離れないでね

エリナ

…はい……

ふぅ…と深呼吸をしてから一言

スティーブ

一気に行くよ!!!

エリナ

えっ…

そう言って一気に窓から飛び降りた

エリナ

うわぁああああ!!!!!!

スティーブ

っ……!!!!

吹き抜けるような風

怖さもあったがそれとは反対に爽快感を覚えた

風をきって地へと降りていく

もう地面が近づいてきた

このままじゃ地面にたたきつけられる

エリナ

(どうしよう…)

スティーブ

ほら!!!!!

落ちながら笑顔で私の方を見た

スティーブ

今だよ!!!!

──今……??

もう地上だ

怖い…落ちる……

エリナ

っ…!!!!!

思い切り目を瞑った

エリナ

っ……?

だけどなぜ…?すぐそこにあった地面に到着するのには時間がかかりすぎている

さっきまで吹き抜けていた風もいつの間にか無くなっている

恐る恐る目を開けた

エリナ

っ……

エリナ

え……??

ほんの数センチ、浮いていた

私の翼がヒラヒラと小さく動いている

―私…飛べてる…!?

エリナ

飛べてる!!!スティーブさん!!!!

エリナ

…スティーブさん…?

辺りを見回したら地面に倒れてるスティーブさんを見つけた

エリナ

スティーブさん!!!!

急いで駆け寄り声をかける

スティーブ

いてて……

エリナ

なんでそんなっ…こんな高いところから降りようなんてこと…!!!

スティーブ

だってそしたら飛べるでしょ?

エリナ

……!!!

そうか…そういう事だったのか…

私を飛ばせるために自分を犠牲にしてまでこんな無茶なことをしたのか

エリナ

ありがとうございます…

エリナ

それよりお怪我は…?

スティーブ

ん?

体を見ると擦り傷があちこちに見受けられた

スティーブ

こんなの全然屁でもないよ

スティーブ

そんなことより!!!

勢いよくガバッと起き上がった

スティーブ

飛べた!!?

犬のようなキラキラと澄んだ瞳

それに私は笑顔で答えた

エリナ

飛べた…!!!飛べました!!!

スティーブ

ほんと!!!

エリナ

はい!!

スティーブ

やった!!!!!やったねエリナ!!!✨

エリナ

でも…ほんの数センチです…

悲しんじゃうかな

怒っちゃうかな

ボロボロになってまで飛び降りたのに飛べた高さは数センチなんて言ったら

打ち明けるのは正直勇気がいるのだった

スティーブ

え?

エリナ

っ…

ごめんなさい…ごめんなさい…

スティーブ

それがどうしたの!

エリナ

…え……?

スティーブ

全く飛べなかったのに今は飛べたんだよ!

スティーブ

数センチだけでも飛べたことに変わりは無い!!

スティーブ

すごいことじゃん!大成功だよ!

エリナ

……!!!!

この時わかった

スティーブさんは私の光だ

スティーブ

どうしてそんな悲観的なの?

エリナ

……

エリナ

ずっと…自信がなかったんです

エリナ

結局何やっても上手くいかないんだ、って

エリナ

……でも

エリナ

スティーブさんと出会って…何か変われた気がします☺️

初めて心の底から笑えた気がする

スティーブ

……!

スティーブさんの顔がぽっ、となった

どうしたんだろう

エリナ

スティーブさん…?

のぞきこんで顔色を伺う

スティーブ

…なんでもないよ☺️

いつもの笑顔に戻った

スティーブ

ほら、もう夜が明ける

スティーブ

俺とはバイバイだよ

そっか…いつか終わりは来る

スティーブ

でもどうするの?

エリナ

え、?

スティーブ

上から飛び降りてきた訳だし、夜だから門もきっと空いてない

スティーブ

空いてたとしてもなんでエリナ様が外に、!?ってなって城中大騒ぎ

スティーブ

さぁどうする?

エリナ

…降りてきた私の部屋の窓から戻る…

スティーブ

それしかないよねぇ

スティーブ

…そのためには?😏

エリナ

…!!

あぁ…これも作戦通りなんだ…

「飛ばないと帰れない環境を作り出す」

飛べた感覚を体が忘れないようにもう一度飛ばせようとする考え

わざわざ部屋から降りたのもその理由込みだろう

本当に凄いなぁ

エリナ

飛ぶ…飛んで帰る…!!!

スティーブ

うん…!!!

エリナ

でも…結構高いし…

スティーブ

大丈夫

スティーブ

1度できたんだもん

スティーブ

可能性は無限に拡がったよ

スティーブ

あとはその可能性を自分がどれほどまで発揮できるか

エリナ

またっ…!

スティーブ

…?

エリナ

また…会えますか…!

スティーブ

……

スティーブ

さぁね🤭

エリナ

…!

スティーブ

ほら!!飛んでみな!!!

そう言って私を抱き抱えた

エリナ

えっ!?!?

スティーブ

よし…

思いっきり力を入れたと思えば…

スティーブ

せーのっ…!!!!!

エリナ

わぁあああ!!!!?!!!!?

力いっぱい私を空高く投げた

そんな私は自然と羽を広げられた

エリナ

高い…さっきよりも高く飛べてる…!!✨

エリナ

スティーブさん!!!見て見て!!飛んでるよ!!!✨✨

ふわふわとあちこちに移動して見せる

ふとスティーブさんを見たらこちらを見て嬉しそうに手を振っていた

───また会いたいな

夜明けの空に舞う貴女はとても美しかったんだ

また会いたい

初めて見せた無邪気な笑顔を見て、ただそう思った

次の日も私に会いに来てくれた

相変わらずボロボロになりながら

エリナ

あの…どうしていつもこんなボロボロになって来るんですか、?

スティーブ

だって俺には羽ないもん、

スティーブ

よじ登ったり木を利用したりで結構アドベンチャーにここまで来てるんだよね

照れくさそうに目線を斜め上に上げ片手を首の後ろに回した

多分、癖なんだろうな

エリナ

そうだったんですね、、

でもよく考えたらそうだ

いつも窓に必死に掴まって私を呼んでいるし

スティーブ

…ねぇエリナ

エリナ

…?

スティーブ

舞踏会、行かないの?

エリナ

……

痛いところを突かれた

胸の奥がきゅっ、と締め付けられる

エリナ

…怖い…

スティーブ

俺と出会って変われたんじゃないの、?

エリナ

…!!

そうだ、もう前までの私とは違う

自分を見つけたんだ

エリナ

少し…頑張ってみようかな……

スティーブ

ほんと、、、?!!

エリナ

はい…!

スティーブ

やったやった!!!✨

自分の事のように喜んでいる

私の成長をたくさん喜んでくれる

だから私も少しづつ頑張ろうって思える

久々に自分の部屋を出て廊下を歩いた

両親に会うためだ

エリナ

…お父さん、お母さん……

2人は椅子に座っていた

エ…エリナ…!!!!

寂しかった…寂しかったわエリナ…!!ギュッ

力いっぱい私を抱きしめてくれた

さぁ、本題だ

エリナ

あのね……私ね…

エリナ

今度の舞踏会…行こうと思うの

…!!!!

本当か……!!!!

まるで夢を見ているかのよう

本当にこんなことになるなんて

エリナ

うん…!

あぁ…エリナ…本当にいい子だわ…

ありがとうな…

エリナ

私頑張る!!!

そうね…!

大丈夫だ、お父さんとお母さんがついてる

思う存分羽を伸ばしなさい……!

エリナ

うん!!

いつ見ても2人の翼は美しかった

それを見るとやっぱり私は惨めに見える

でも、いいの

私はこの翼が好き

他の誰にもない、思い出が沢山詰まってるから

今日も夜が来た

外は星が輝いている

窓に腕を置きながらいつものようにスティーブさんを待っていた

でも今日はなんだか遅い

エリナ

(潮時だったのかな…)

すると城の下から銃声と金属の重なる音が響いた

エリナ

なんだろ……

するとそこにはスティーブさんがいた

エリナ

スティーブさん…!!!?

エリナ

なんでっ…

城の兵たちがスティーブさんを仕留めようと攻撃をする

きっとバレてしまっんだ

他国への侵入が。

もうどれくらい攻撃されていたのか、スティーブさんはボロボロだった

トドメをさそうと兵隊が弓を構えた

エリナ

(嫌だ……)

エリナ

っ…!!!!

気づいた時にはもう窓から飛び降りていた

翼を広げ全速力でスティーブさんの元へ降りる

エリナ

スティーブさん!!!!

スティーブ

っ…!?!?

驚いた表情で降りてくる私を見上げた

そんなスティーブさんに飛びつき庇うように抱きしめる

理解に追いつかなかった兵隊は弓をそのまま放った

エリナ

っ…!!!!!

スティーブ

エリナ!!!!!

脳を切り付ける音が響いた

何事だと思った

だけど今はスティーブさんを守ることに全てを捧げた

エリナ

スティーブさん…スティーブさん…!!

エリナ

大丈夫……??

スティーブ

っ…

悲しい顔をして私を見る

なぜ悲しむの?守ったことが余計なお世話だった、?

スティーブ

エリナっ…翼が……

エリナ

え……?

そっと翼に手を添えると、それは綺麗に破けていた

さっきの酷い音はこのせいだったのか

活気を失った翼は酷く黒く染まり力無く項垂れている

エリナ

……嘘………そんな……

別に翼が破れたことがショックな訳では無い

じゃあなんでこんなにも悲しいのか

私にとってのこの翼は、スティーブさんとの思い出の全てだった

それが砕け散ったかのような喪失感を憶えてしまったからだ

兵隊は直ぐに城へ戻り両親や執事達に伝達をしに行った

この冷たく薄暗い夜に2人だけが残された

スティーブ

ごめん…ごめんね…

スティーブ

俺のせいで…俺がバレさえしなければ…

違う、違うよ、、

スティーブ

……いや、コソコソここへやってきたことがいけなかった

スティーブ

これからはエリナのためにもここには来ないようにする

それはまるで今までの思い出が全否定されたように聞こえた

エリナ

嫌だ……嫌だよ…

スティーブ

これもエリナのためだから……

もう二度と会えないのだ

ここへ来てくれないということは。

こんな最期でいいの、、?

遠くから大勢の足音が聞こえてきた

なら、最期に私が彼にしてあげられることをするのがいい

それは本当に辛いけれど。

エリナ

……足音が近づいてきてます

エリナ

早いところ逃げなければここに監禁され、処刑です

エリナ

……後ろの木々を抜ければ隣国まですぐです

エリナ

早く逃げてください

スティーブ

……

立ち竦んでいる

早く行って

ここにいたら殺されちゃう

本当に逢えなくなっちゃう

エリナ

早く!!!!!

声を張り上げ我に返らせる

スティーブさんはそのまま私に背を向け走り出した

エリナ

っ…!!!

涙が止まらない

それは痛みでも悲しみでもない

言葉で言い表せることが出来ない感情を抱いた

ただ聞こえるのはスティーブさんの足音をかき消す兵隊の足音のみだった

私の翼はスティーブさんと共に消えてしまった

あの日から数日、

両親は酷く悲しみ涙を流した

それは翼を失ったショックだろう

そんな薄っぺらい感情の涙見て心底不快だった

あんなことが起きてから、城の警備がより厳重になったこと

故にスティーブさんが会いに来れなくなったこと

私とスティーブさんの繋がりをねじ伏せたこの城が許せない

あの日以来もう会っていない

…エリナ…

エリナ

……?

舞踏会……無理していかなくてもいいよ…?

エリナ

……

無理してって何……?

なにそれ……

翼がなくなって…あぁ…どうすればいいんだ…

エリナ

……なにそれ

…エリナ…?

エリナ

…私のアイデンティティって翼なの?

エリナ

翼"だけ"なの?

エリナ

…もっと私自身を見てよ

エリナ

結局いつも伝統伝統…

エリナ

そういえば、私に目を向けてくれたことなかったよね

そんなことない……どうしたんだ…?

エリナ

こっちが聞きたいよ

エリナ

どうしたらそんなに人間性を失えることが出来るの、?

エリナ

……私が舞踏会に出るって言った時、凄く喜んでくれたよね

エリナ

結局あれだって、私が変われたことに対しての喜びじゃなくて、自分たちの代で伝統が途切れることが無くなったために出た安堵でしょう?

エリナ

自分らに責任を問われることが無くなったから

エリナ

そうじゃないの?

ちがっ……

エリナ

じゃあなに?

止まらなかった

今まで抱えてきた劣等感が炭酸が弾けたかのように溢れ出てきた

戸惑う両親の顔を見てうんざりした

図星らしかったからだ

エリナ

…どうせ2人には大切な人を失った悲しみなんて分かるわけない

エリナ

翼にしか脳がないのだから

エリナ

…私なんてこの城を受け継ぐためだけに生まれてきたお人形に過ぎない

エリナ

ごめんなさい。こんなねじ曲がったお人形で

エリナ

でももう限界

スティーブさんと、スティーブさんとの思い出が詰まった宝を失った私はもう壊れていた

エリナ

……私、舞踏会行くから

…!?

いいのよ行かなくて…!

エリナ

どうせそれだってお母さんお父さんが恥ずかしいだけでしょ

エリナ

"翼がない娘を産んだ出来損ない"って思われたくないから

エリナ

"伝統を途切れさせた卑怯な両親"って思われたくないから

エリナ

そうでしょ?

エリナ

…私を見てない2人には分からないと思うけど、ちゃんと成長したから

エリナ

私なりに行かなきゃいけない理由が見つかったから

エリナ

お願いだから、もうこれ以上邪魔しないで

酷いことを言ってしまったなという気持ちは微塵もなかった

反対になんだか清々した

エリナ

……出ていって

そう冷たく放って追い払った

どうせ理解してくれない

だから別に理解して欲しいなんてことも思わなかった

舞踏会当日

正直気分はのってない

だけどスティーブさんとの約束を果たすために行く

結果はどうなるか分からない

でもそれでいい

行くことに意味があると思ったから

約束を守ることに意味があると。

スティーブさんが今も尚私に会いに来てくれていたところで、舞踏会にスティーブさんがいないのは変わらない

そう考えれば会えなくなった運命になったとしても結局変化は遂げなかったのだ

エリナ

……よし

無くなった翼と大きくなった自信

スティーブさんを失ったのと反対に大きな自信を手に入れた

何か手に入れれば代償は必ずある

そう自分に言い聞かせて城を出た

―今の私ならやれる。

初めての舞踏会はとても眩しかった

周りがキラキラと光っていてまるで別世界

右を向けば綺麗な女性たち

左を向けば美しい男性たち

自分に相応しい場とは到底思えなかった

エリナ

……

どうしたらいいか分からずソワソワしているとコソコソと声が聞こえてきた

「ねぇ、あの子ってスワローテイル王国の王女だよね?」

「そうだよね、、翼なくない??」

「あそこの国って確か翼が象徴じゃなかったっけ、、」

「えぇ…よく自国のシンボル無くしてまでここ来るよねぇ、、」

「恥ずかしいとか申し訳ないとかって思わないのかな、、w」

「私なら絶対無理〜w」

エリナ

……

まぁ分かっていた

こんなことを言われることは覚悟の上だった

そりゃそうだ。シンボル無くしてここに来るのは本当に醜いことしていると思ってる

私だけに迷惑がかかる問題ではない

その国に住んでいる人々に影響を与えるのだ

王子

こんばんは

エリナ

ビクッ

ぼーっと考えていると前に人がいた

王子

驚かせてしまったかな、?

エリナ

いえ……

どうやら他国の王子のような人だ

王子

スワローテイル王国の王女、エリナ様ですよね、、?

エリナ

はい…

王子

良かった…会ってみたかったんだ

なぜそんなにも私に会いたかったんだろう

王子

…実際に見るとほんとうに美しいね

エリナ

……

エリナ

…!!!!/////

心臓がぼっ、と弾けた

そんな単刀直入に言われて理解が覚束無い

王子

ごめんごめんw直球すぎたねw

エリナ

いえ……

笑いながら手を首の後ろに回した

笑顔が素敵

……スティーブさんみたい

王子

もし良かったら今夜、共に過ごしませんか?

膝を地につき手を差し伸べてきた

……もう…

もういいか…

エリナ

……

私はゆっくりと手を伸ばした

その時だった

ふわっ……

エリナ

……??

私の体を誰かが優しく包んだ

とても大きくて、暖かい

でもなんだろう、1度感じたことあるような懐かしさ……

王子

……

王子

……誰だ

目をゆっくり開けると

スティーブさんがいた

私の体をスティーブさんが包んでいた

とても綺麗な服を着ていて、いつも会っているような雰囲気とは打って変わって違う

スティーブ

……この子から離れて

王子

……?

スティーブ

誘拐犯め

エリナ

…!?

スティーブ

王子のような格好して来ても、無駄だよ

誘拐犯…?

じゃあなんでそんな人が私の名前を知ってるの…?

……この人ってもしかして…初めてスティーブさんと会った時に言ってた…

私を狙ってる人……?

王子

チッ……

小さく舌打ちをしてこの場を後にした

スティーブさんがゆっくり体を離す

スティーブ

…大丈夫…?

エリナ

スティーブさん…!!!!

スティーブ

久しぶりだね☺️

その笑顔はいつものような朗らかな表情だった

エリナ

でも…何故ここに…?

エリナ

今日は近国の王子王女の方々が来る舞踏会なのに…

エリナ

スティーブさん…狩人って……

スティーブさんがふふっ、と微笑んだ

どういう意味だろう

「え!待ってあの人って…!!」

「やばい……生ではじめてみたけど凄いかっこいい…」

「さすがだなぁ…」

エリナ

…!

周りの反応を見て何となくわかった

エリナ

まさか……

スティーブ

…こんばんは、エリナ王女

優しい笑顔で私の手を持った

そして地に膝をつき私を真っ直ぐ見つめた

スティーブ

私はスワローテイル王国の隣に位置する、エルミタージュ王国の王子、スティーブと申します

エルミタージュ王国…

私の国のすぐ隣だ

大きな国ではないしあまり知られていない

裕福な国でもなく、王子を主体に国民みんなで支え合って成り立っている王国だ

だけどそこの国に住む王子だけはみんな知っていた

それがまさかスティーブさんだったなんて

エリナ

なんで…なんで……

スティーブ

隠しててごめんねw

スティーブ

びっくりさせちゃうと思ってさ

エリナ

いや…どちらにしたってびっくりしますけど…

スティーブ

そうだよねw

エリナ

…でも王子様なのにどうしてあの時攻撃されたんですか…?

エリナ

不法侵入だとはいえど、隣国の王子だったら攻撃までとはいかないと思います…

スティーブ

多分服装とかじゃないかな?

スティーブ

バレないようにあえて普通の服で来てたしねw

全てそう仕向けていたのか

スティーブ

舞踏会に誘ったのも、この為だよ

エリナ

え…?

スティーブ

エリナ様

スティーブさんは私の翼だけじゃない

私の中身、私の全てを見てくれる

心の深いところにまで目を向けて、私を変えてくれた

今日ここへ来れたのだってスティーブさんのおかげだ

翼と引き換えに、また新たなものを手に入れることが出来た

スティーブ

今夜、私と共にご一緒させて頂けますか?

少し照れくさそうにかしこまってそう放った

エリナ

……ふふっ

スティーブ

え…!!何か変だったかな…💦

つい面白くて笑ってしまった

スティーブさんはあたふたしてる

だって──

エリナ

だっていつも一緒に夜、過ごしてたじゃないですか☺️

スティーブ

…そっか…☺️

幸せな笑みを交わした

それは今までのような作り笑いではなく、スティーブさんのおかげで自然に身についた自然な笑顔

スティーブ

じゃあ今日は、いつもよりも素敵で思い出に残る夜にしましょうね

エリナ

はい…!!

スティーブ

…さ!行こ!!

エリナ

わぁ…!!!

そう言って私の腕を引いた

エリナ

どこにっ…!?

スティーブ

俺たちと言ったら、夜空の下でしょ!✨

エリナ

でも翼ないよ!?

スティーブ

翼がなくたってエリナはエリナ!

スティーブ

飛べなくたってエリナ!

スティーブ

変わらないよ!俺の中でエリナは!

スティーブ

ずっと、ずーっと!世界一素敵なお姫様だ!!

No matter what you do, you'll always be my Cinderella.

貴女がどうなろうと、いつだって貴女は私のシンデレラだ

よりもと

いやぁやっぱいつになってもお姫様ものってどきどきしますよね

よりもと

なんか自分たちでは味わえないロマンというか、、

よりもと

スティーブさんの素直な部分に惹かれる女性は少なくないと思うんですよね私がそうです。

よりもと

今回の王国の名前、それぞれちゃんと意味があるので機会があればぜひ調べてみてください🥳

よりもと

読み返してみると意外と伏線多かったりしますよ🫢✨

よりもと

今日のTikTokは!

よりもと

久々雰囲気です✨

よりもと

いやあの本当にTikTok、TELLOR共に投稿頻度が下がりまくりで申し訳ないです🙇🏻‍♀️

よりもと

本当はもっと投稿して皆さんに楽しんでもらいたい気持ちで山々なのに😭

よりもと

徐々に上げていけるようにしていきますのでこれからも閲覧してくれると本当に嬉しいです🥲🥲

よりもと

これからもよろしくお願いします🙇🏻‍♀️

よりもと

では……!!!👋🏻

この作品はいかがでしたか?

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コメント

13

ユーザー

スティーブさんめっちゃかっこいい✨ やっぱりお姫様は大変なのかなぁ 軽い軟禁状態になってそう... 今回も読んでて楽しかったです!

ユーザー

スティーブさんイケメン✨

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