夏 夢

名前はろうと言います。

齢15、6月に生まれ三兄弟の末っ子 として甘やかされて育ってきました。

家族の腕の中でスヤスヤと眠り、 こんなにも大きくなりました。

私は夏が好きです。

うるさいくらいのセミの声も

焼けたアスファルトの匂いも

溶けてしまいそうなアイスも。

でも、夏って少し意地悪です。

夢みたいに楽しいのに あっという間に背中を向けられ

手を振る前に、姿を消してしまう。

私の夏はいつだって暖かくて ちょっぴり寂しいのです。

今年も、夏が始まります。

ひまわりの背がグンと伸びて

アイスの棚に悩んで

家族で囲む冷やし中華に、 きゅうりを山ほどのせて。

夏が来る度、心の中で静かに思います。

ああ、また好きな季節が始まる。

また、ちょっとだけ大人になってしまう

でも、今はまだ

麦わら帽子の影の中、

私は今年も、末っ子のままで 笑っていたいのです。

名前を、ろうと言います。

齢15、今年もまた、家族に 愛され、夏を過ごしていきます。

2025.夏