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山野英真

体験入部って、まさか……

久留間悟

今まじもの研究会に体験入部の方には、なんと!

久留間悟

古典の成績3割アップ!

渋谷大

してません

鬼王篁

嘘ついて勧誘しても、バレたら逃げられるでしょ

本田芙蓉

そのような贔屓はしておらんよ

久留間悟

うちの奴らのノリが悪い!!

あっさりと勧誘文句をひるがえされ、久留間が悔しげに机を叩く

それを困ったように見やりながら、渋谷は眉尻を下げて英真を見た

渋谷大

ごめんな、コイツうるせぇだろ

山野英真

あ、いえそんなことは!

渋谷大

でも、キミの手を借りたいのはホントなんだ

渋谷大

ちょっとでもこっち側に近い奴がいたほうが

渋谷大

手がかりも集まりやすいから

山野英真

手がかり……?

鬼王篁

今朝の朝礼の件です

山野英真

朝礼って……事故の?

鬼王篁

はい

鬼王篁

俺たちみんな、あの人に怪我をさせたのは

鬼王篁

なんらかの怪異じゃないかと思ってて

山野英真

なんで?

鬼王篁

校内で、不可解な事件が頻発してるんですよ

鬼王篁

もっとも、こんな騒ぎにはなっていませんが

久留間悟

ほい、資料

鬼王篁

あざっす

差し出された紙束を広げ、一つ一つ挙げていく

本田芙蓉

これは昨年の件じゃが

本田芙蓉

定期試験の問題が、一部生徒に流出した疑いがある

本田芙蓉

もちろん、管理が徹底されておったことは確認済みじゃ

久留間悟

こっちは校内で有名だったラブラブカップルの話

久留間悟

彼氏側が突然別れを切り出してね

久留間悟

その日から別の女の子と付き合ってる

渋谷大

違和感がスゲェのなら

渋谷大

イジメやってた連中が、まとめて引っ越したのとか

山野英真

まとめて引っ越し!?

鬼王篁

あとは厳しい先生が急病になったり、遅刻したり

山野英真

……確かに、変なところもあるけど

山野英真

偶然が重なったといえば、それまでなんじゃ……

鬼王篁

これらがすべて

鬼王篁

誰かの願いが叶った結果だとしても、ですか?

山野英真

――え?

まばたき、全員を見回す

その中で、本田がため息とともに手指を組み合わせた。

本田芙蓉

そういうことじゃ

本田芙蓉

問題は恐らく、お願いボックスと呼ばれる怪談にある

山野英真

お願いボックス?

鬼王篁

学校の七不思議の一つです

鬼王篁

屋上に向かう、閉鎖された階段の先にある箱で

鬼王篁

願い事を書いた紙を入れると、なんでも叶うらしいですよ

鬼王篁

その代わり、叶えてもらったら

鬼王篁

そのことは絶対口外しちゃいけないっていう

渋谷大

よくある話だと思うだろ?

渋谷大

普通、そんなもん叶うわけないもんな

久留間悟

なのに、さっき話した『偶然』で恩恵を受けた連中は

久留間悟

事件が起こる前に必ず

久留間悟

お願いボックスの話をしてるらしい

久留間悟

やってみようかな、なんてノリでさ

本田芙蓉

ただ、その箱が本当にあるのなら、じゃ

山野英真

……ない、ん、ですか?

鬼王篁

七不思議の内容を参照するなら

鬼王篁

箱は屋上に通じる階段の先に置かれているはずです

鬼王篁

となると中央棟の一ヶ所しか思い当たりませんし

鬼王篁

そこは状況や人数も変えて何度か見に行ってますが

鬼王篁

撤去された痕跡も、置かれていた様子もありません

本田芙蓉

あの階段は屋上にある貯水タンクの点検でも使うが

本田芙蓉

他の先生方や業者の者に聞いても

本田芙蓉

そういった物が置かれていた記憶はないそうでな

渋谷大

かなり新しい七不思議らしくて

渋谷大

あそこにいる姐さんたちに聞いても、わかんねぇんだ

親指で指し示した先には、先ほど英真を驚かせた怪談の主役たちがいる

面白そうににんまりと笑みを浮かべたまま手を振る彼女たちに

英真は引きつったまま、軽く会釈して見せた

しかし極力関わり合いにはなるまいと、慌てて渋谷に向き直る

山野英真

でも、おばけや妖怪がいれば先輩達には見えるんじゃ

久留間悟

ま、そこにいればの話だけどねぇ

渋谷大

せめて痕跡でもありゃ分かるけど、それもない

渋谷大

けど、俺らと違う感覚持ってる奴なら

渋谷大

見落としてるモノも見えるんじゃねぇかと思ってさ

山野英真

だから体験入部ですか……

山野英真

……

山野英真

気にならないと言ったら、嘘になります

山野英真

……オレ、昨日あの現場を目撃したんです

久留間悟

え!

山野英真

あの人を押した人や、犯人は見ませんでした

山野英真

だけど確かに、なにかに押されたように見えたんです

山野英真

でもあの人、人から恨みを買ってた様子もないし

山野英真

これといって悪いことをした過去もないじゃないですか

山野英真

だから正直、疑問があります

山野英真

なんで怪我を願われるようなことになったのか

山野英真

でも、オレが力になれる事なんてなんにも……

不意に顔を上げると、全員が驚いた顔で英真を見ていることに気付く

本田芙蓉

山野くん

本田芙蓉

お前さん、吉崎くんとは知人かの

山野英真

え?

山野英真

いや、事故現場を見ただけの他人ですけど

本田芙蓉

……ほうかぁ

渋谷大

憑いてる奴の影響とか、そういうのか?

渋谷大

どういうアレだろうな、これ

久留間悟

俺はちょっと見当ついたかなー

久留間悟

オニオン、この子見つけたのお手柄かもだぞ

鬼王篁

だからタマネギ呼ばわりやめろっつってんのに

鬼王篁

耳掃除サボッてんすか、久留間先輩

久留間悟

先輩に対して毒舌が過ぎるぞオニオン!

鬼王篁

あの、……山野、さん

久留間の非難など聞こえぬフリで

篁は英真から目をそらしつつも向き直った

鬼王篁

よければ本当に、体験入部お願いします

鬼王篁

アンタがいると緊張するけど、たぶん――

鬼王篁

いい方向に、転がりそうな気がするんです

まるでハスキー犬が耳を垂れて見上げているような感覚

それに対する庇護欲に抗いきれず

英真はその場で、体験入部を承諾してしまっていた

山野英真

あー……思いがけないー……

山野英真

思いがけない事態に戸惑いが止まらないー……

鬼王篁

なんか、すいません

鬼王篁

無理なら、今からでも断ってもらえれば

山野英真

あ、違う違う!鬼王くんのせいじゃなくて!

山野英真

今まで触れることもなかった世界に触れたからさ

山野英真

頭の処理能力が追いついてないんだよね

山野英真

この学校、渡り廊下の下に庭園があるのいいなぁ

山野英真

気分転換になるや

鬼王篁

デッドスペース多いですからね、うち

鬼王篁

有効活用した結果でしょう

山野英真

デッドスペースっていうと身も蓋もないなぁ

ケラケラと笑ったあと、後ろから妙な気配を感じて振り向く

鬼王篁

山野さん?

山野英真

……いや、なんか

山野英真

今通りすぎたけど、あそこってさ

鬼王篁

理科棟ですね

鬼王篁

物理室や生物室、それぞれの準備室が入っている棟ですよ

鬼王篁

校舎各階から直接渡れますですけど、下からも登れます

鬼王篁

明日は物理があるし、行くと思いますよ

山野英真

そうなんだ

山野英真

オカルトな話を聞いたからかな

山野英真

なんか気になっちゃって

チラチラと振り返りつつ、後ろ髪を引かれる思いで前進する

オカルトと言えば理科室を思い浮かべる自分の単純さに苦笑が漏れた

山野英真

ねえ鬼王くん

山野英真

あの部活の人って、みんなああいう力持ってんの

鬼王篁

そうです

鬼王篁

先生と先輩二人は霊を見て、聞けて、触れる特殊体質ですね

鬼王篁

その上、渋谷先輩はさっきみたいに

山野英真

あー、人にそれを貸せる?

鬼王篁

はい

鬼王篁

久留間先輩は貸与はできませんが、祓うことに特化してます

鬼王篁

確か、家が神社だとかなんとか……

山野英真

漫画みたいだね!?

山野英真

ホントにそんなのあるんだ!?

鬼王篁

聞いただけなら眉唾物なんですけどね

鬼王篁

実際に初めて見た時には僕も驚きました

鬼王篁

体験入部するなら、そのうち見られるんじゃないですか?

山野英真

……ますます非現実的だなぁ

山野英真

でも見ちゃったもんなぁ……

鬼王篁

まぁ、信じがたいですよね

山野英真

鬼王くんは?

鬼王篁

はい?

山野英真

なんかあるから、あの部にいるんでしょ?

鬼王篁

あ、いやまぁ、俺は

言いかけた篁が、険しい顔で振り返る

ただならぬものを感じて視線の先を追うと、生臭いにおいが漂っていた

途端、臭気が一気に押し寄せる

鬼王篁

ぅわっっ!!

山野英真

っ、え!?

理解できず、ひとりでに吹き飛ばされたように見えた篁に声を上げる

そこには、篁以外の人影はない

しかし苦悶の表情を浮かべながら地面に押さえ込まれる姿は

そこになにかがいることをはっきりと示していた

山野英真

えっと、なにか……!

せめて鞄でも投げつければいいのかと思考を巡らせたときだった

鬼王篁

うご、か、ないでください……!

鬼王篁

今、俺が……!

喘ぐように漏れ落ちた言葉と同時に、篁の肌が黒みがかっていく

髪は赤く、犬歯までも異様に発達していく中で

爪の伸びた篁の手が、なにかを掴んだ

そしてその瞳までもが色を変え始める頃

鬼王篁

おぉおおおおおおおおおお!!

咆吼とともに、のしかかるモノを力の限り殴打した

山野英真

……っ!!

ちょうど丸一日前に感じた衝撃を再度体感し、目を見張る

ただし肩で息をしながら立ち上がった篁の姿は昨日と

そして先ほどまでとも、まるで違うものに変貌していた

鋭い牙を隠しもせず、黒い肌に赤い髪、金の瞳でなにかを睨む

そしてその手に見えたのは

山野英真

金、棒……!

黒々と鈍い光を反射し、痛みを与える鋭い突起のついた巨大なそれ

渋谷に貸与された霊能力のせいなのか、やけにはっきりと見えるそれに

英真は驚愕や恐怖よりも深く、なぜか腑に落ちた気持ちでいることに

自分自身でも気付いてはいなかった

放課後閻魔堂【完結】

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コメント

7

ユーザー
ユーザー

火曜の朝に読んだのに! 学校のせいで! ...コホン え、ま、うそ、金棒って鬼...ですか?だから苗字が鬼王...!? というかいきなり飛び掛ってくるとかマナーを弁えないとんでもないヤツですね...頑張れ篁君!

ユーザー
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