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山野英真

金棒……!

渋谷から貸与された霊能力が作用したのか

昨日は見えなかった篁の武器をはっきりと視認し、息をのむ

しかしそれに感嘆する間もなく、英真は篁に這い寄る

モヤのようなモノがぐにゃりと動くのを見た

山野英真

――っ!?

確実にこの世の者ではないソレに、総毛立つ

しかし身構えようともそれが英真を襲うことはなく

金棒を振り回す篁の隙を突くような攻撃を繰り返していた

鬼王篁

クッソ……!!

鬼王篁

なにが襲ってきてるんだ、これ……!!

金棒には実体がないように見えても、やはり重さはあるらしい

勢いをつけて振り回すことで体力を削られているのか

噴き出した汗を拭いつつ、篁が毒づく

時間が経つにつれ篁が不利になるだろうことを悟り

英真は焦燥感に駆られつつ、モヤを凝視した

山野英真

(せめて、なにか手伝えること……!)

不意に――

モヤを構成する粒子が、拡大したように視界に映る

その形に、英真は思わずまばたいた

山野英真

……ッ!

山野英真

文字……!?

モヤに思えたそれは、すべて文字で構成されていた

近くにある文字と繋がると、いくつかの言葉を成立させる

山野英真

(テストでいい点が取れますように)

山野英真

(遅刻しても怒られませんように)

山野英真

(2年1組の飯沼くんと付き合いたい)

山野英真

(いじめっ子に消えて欲しい)

山野英真

(これって……!!)

その瞬間、モヤの中央に大きく一つの文章が浮かぶ

吉崎先輩の怪我の原因が、私だってバレませんように

途端、弾かれるように理解した

山野英真

鬼王くん、それ!!

山野英真

お願いボックスに入れられた願いの集合体だ!!

鬼王篁

っ、はぁ!?

鬼王篁

アンタ、なにが見えて……!!

山野英真

なにかはよく分かんない!けど!

山野英真

鬼王くんが最初にぶっ叩いたところから字がこぼれてる!

鬼王篁

字!?

山野英真

そこから崩せると思う!!

鬼王篁

そこからって言われたって……!!

鬼王篁

俺は霊とか見えないんですよ!!

山野英真

え、マジで!?

山野英真

えっと、じゃ……

山野英真

あ、右に避けて!!

鬼王篁

っ!

山野英真

胸の前で金棒突き出して!

山野英真

そのまま突進!!

鬼王篁

説明してる暇がないのは分かりますけど……!!

鬼王篁

あとできっちり話してもらいますからね!!

英真の指示に戸惑いつつ、指示に従い突進する

鬼王篁

あ……っ!!

金棒の先は虚空がある

にもかかわらず、確かにそこにはなんらかの手応えがあった

英真の目から見れば、篁の突進によって文字の漏出が増加

そのまま、バラバラと崩れてどこかに消え去っていた

山野英真

……消えた

山野英真

鬼王くん、大丈夫?

鬼王篁

怪我の有無って意味なら問題ないです

鬼王篁

でも

鬼王篁

――アンタが一般人ってのは、嘘みたいですね

山野英真

嘘じゃないよ!!

山野英真

先輩の霊能力のせいだと思ってるんだけど!?

鬼王篁

渋谷先輩が文字を見たとか、聞いたことないですけど

山野英真

聞いてないだけかもしれないでしょ!

鬼王篁

……まぁ、そうですけど

ふて腐れたように唇を尖らせる篁に、英真は困って頬を掻く

英真になにもないことがよほど気に入らないのか

まるで英真がなんらかの能力を持っていることを望んでいるような

そんな仕草に、篁について聞くこともはばかられて目を泳がせた

山野英真

……あ

山野英真

色、戻ってきたね

鬼王篁

え?あぁ

英真の指摘どおり、篁の髪や肌、そして犬歯が元に戻っていく

やがて爪も短くなった頃、篁がぼそりと呟いた

鬼王篁

色変わったのも、見えてたんですね

山野英真

普通は見えないの?

鬼王篁

多少、違和感を覚えさせることはあるみたいですけどね

山野英真

じゃあ、それも先輩の霊能力のおかげだね

また沈黙が落ちる

一体なにがそんなに不満なのか問いただそうと口を開いた瞬間

篁がスマートフォンを取り出した

鬼王篁

とりあえず、先輩たちに連絡します

鬼王篁

もう校外に出たかもしれませんけど……

鬼王篁

時間的に、そんなに遠くには行ってないはずです

鬼王篁

もしかしたら、もう少し話が進展するかもしれません

発声タイミングを失い、仕方なく口を閉じる

篁が手早くメッセージアプリに打ち込むと、ほぼ時差なく返信が来た

しかしその文面に、篁はうんざりした顔を見せる

山野英真

なんだって?

鬼王篁

……二人とも、駅前にいるそうです

鬼王篁

駅前にある、サザンフラワーってカフェだそうで

山野英真

カフェ!!

山野英真

メガネの人、久留間先輩だっけ

山野英真

オシャレそうだもんね

鬼王篁

……まぁ、見た目は

山野英真

オレたちもそこに行くの?

鬼王篁

行くしかないでしょうね

ため息を漏らす篁の様子に首を傾げながら、英真は期待に足もとを踊らせる

やがて校門へと去って行く二つの背中を、散ったはずのモヤが見つめていた

山野英真

……はぁー……

感心とも放心ともつかない声が唇を割って出る

目の前に積まれていくパフェカップと皿は、すでに10を超えている

片付けられる次の瞬間には追加の注文品が並べられる事態に

英真はただ目を見開いてまばたき続け、篁は恥ずかしそうに顔を背けていた

久留間悟

悪いねーここまで来てもらって

久留間悟

今日はここで食べまくる約束してたんだー

渋谷大

バイト代が入った日はどっかしらで甘いモン食うんだ

渋谷大

気にしないで話していいぞ

山野英真

すいません、タイミングが掴めないので無理です

鬼王篁

人と話すときくらい食べるのやめてくださいよ

鬼王篁

つーか、毎回よくバイト代足りますね

渋谷大

ここ、安くて量あるから

鬼王篁

そういうことじゃねぇよ、嫌味だよ分かれよ

久留間悟

オニオン口悪いー

久留間悟

じゃああと三つパンケーキ来るから、それまで待ってて

久留間悟

すぐ食い終わるから

その後、無言で注文品を吸い込んでいく

まさしく吸い込む、という表現が似つかわしいその食べっぷりに

篁は死んだ目をして口を開いた

鬼王篁

オシャレだと思います?この二人

山野英真

……スイーツ掃除機にイメージが変わった

鬼王篁

よかった、俺も同意見です

鬼王篁

正しくは食い物掃除機ですけど

気取られないように机の下でかたい握手を交わし、二人を待つ

時を置かずに食べきり、勢いよく水を飲み干した久留間が

やがて晴れやかな笑顔を見せた

久留間悟

っはー、食べたぁー!

久留間悟

で、なんだっけ?

鬼王篁

久留間先輩、メガネに油ぶっかけていいっすか

久留間悟

悪質な嫌がらせはやめとけ!?

久留間悟

嘘だよ冗談だよ、アレだろ?

渋谷大

お願いボックスに入ってた……思念体に襲われた、だっけ

久留間の言葉を引き継ぎ、渋谷が口を開く

口まわりの生クリームを拭き取りながらの仕草は少々間抜けだが

その目だけで間違いなく、真剣な空気を取り戻させていた

渋谷大

お前、見えたの?

鬼王篁

いや、俺じゃなくて

山野英真

オレが見たんです

山野英真

モヤみたいなのが鬼王くんを襲って

山野英真

なにかできないかと思っていたら

山野英真

突然、モヤが文字でできてるのが見えて

山野英真

吉崎先輩の怪我の原因がバレませんように、って

鬼王篁

渋谷先輩は、文字が見えることとかあるんですか?

渋谷大

んーにゃ、ないな

渋谷大

でもさっき悟が言ってたことに合点がいった

鬼王篁

なに話してたんですか?

鬼王篁

部室でも確か

鬼王篁

この人に憑いている奴の見当がついたって……

久留間悟

その前に一つ聞いていいかな

久留間悟

オニオン、山ちゃんにずっと敬語だよね

久留間悟

それってなんで?

鬼王篁

は?

篁はきょとんと目を見開き、心底自覚のない様子で疑問符を投げる

鬼王篁

……俺、敬語なんて使ってます?

それを英真は驚愕の目で見やり

山野英真

えぇえええ……?

困惑の声を漏らすほかなかった

放課後閻魔堂【完結】

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