テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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人に優しくしたら、自分が壊れた。

第7話 - 第７話

2021年03月19日

#ミステリー

#いじめ

#学園

#ホラー

#青春恋愛

#ドラマ

クリオネ

平澤由佳里

(昨日の上原くんの話が本当なら、今日から私へのイジメが始まる)

平澤由佳里

(なるべく真世と姫川さん以外、誰とも関わらないようにはするけど…)

平澤由佳里

(大丈夫、堂々としていればいい)

平澤由佳里

(私は、間違った選択はしてないから)

平澤由佳里

……ん？

下足箱の扉に、紙切れが挟まっているのに気付いて手に取った

平澤由佳里

なにこれ…？

死ねヤリマン

平澤由佳里

(まさか…宮坂さんの仕業？)

山中真世

おっはよー由佳里！

平澤由佳里

ま、真世…！

山中真世

…どしたの？

ヒョイッと真世が手紙を覗き込んだ

山中真世

なに…？それ

山中真世

由佳里の下駄箱に入ってたの…？！

平澤由佳里

…うん

平澤由佳里

多分、宮坂さんだと思う

山中真世

そんな…どうして？！

山中真世

姫川さんから、由佳里にターゲットを変えたってこと…？！

平澤由佳里

わからない…

平澤由佳里

上原くんと私のこと知って、怒ってるんだよ…きっと

山中真世

でもそれって…逆恨みでしょ？

平澤由佳里

うん、私…上原くんとは付き合えなかったから

平澤由佳里

それは宮坂さんも知ってるはずなんだけどな…

山中真世

……ひどいよ、ヤリマンなんて

山中真世

許せない…！

真世は手紙を由佳里の手から奪うと、グシャグシャに丸めた

由佳里と真世が教室に足を踏み入れると、異様な光景が広がっていた

宮坂樹里

おっはよー！お二人さんっ！

女子

クスクス…

取り巻きの女子数人に囲まれて、樹里は座っていた

由佳里の机の上に…

山中真世

…ちょっと宮坂さん！

山中真世

そこ、由佳里の席なんだからどいてっ！！

平澤由佳里

真世…！

宮坂樹里

やだー、超コワ〜イッ！（笑）

山中真世

…早くっ！

宮坂樹里

山中ぁ…

宮坂樹里

あんたもさ、平澤と仲良くしてたらヤリマンだと思われちゃうよぉ？（笑）

女子

そうそう、性病とかうつされちゃったらたいへーんっ！（笑）

平澤由佳里

やっぱり…あの手紙は宮坂さんだったんだ

山中真世

由佳里は…そんなんじゃない！！

山中真世

ふざけるのもいい加減にしなさいよ！！

宮坂樹里

はいはい、わかりましたよー

樹里は由佳里の机から降りて、由佳里の方へと歩みを進めた

そして、すれ違いざまに囁く

宮坂樹里

…あんた、今に一人ぼっちになって惨めな思いすることになるから

平澤由佳里

……え？

黄色い声で笑うと、樹里は取り巻きと一緒に教室を出て行った

山中真世

ねぇ、黒板に書いてるのって…

平澤由佳里

あ……！！

平澤由佳里は誰でもやらせるヤリマンでーす♡ クラスメイトの好きな人にも平気で手を出す汚いメスブタでーす！ヤリたい人、随時募集中！

平澤由佳里

………っ

山中真世

ひどい…！

姫川麗蘭

おはよう

平澤由佳里

姫川さん…

姫川麗蘭

なに、この黒板…

姫川麗蘭

やっぱり…宮坂さんたち、平澤さんにも…

平澤由佳里

…そうみたいだね

姫川麗蘭

ご、ごめんなさい…

姫川麗蘭

私を庇ったばかりにこんな目に遭わせてしまって…！

平澤由佳里

違うよ、姫川さん

平澤由佳里

それもあるかもしれないけど…

平澤由佳里

宮坂さん、他のことが理由で私のことが気に入らないみたいだから

姫川麗蘭

でも…

平澤由佳里

それに、前に言ったでしょ？

平澤由佳里

『私までいじめられることになっても、そんなの跳ね返してやる』って

平澤由佳里

だから大丈夫だよ

平澤由佳里

一緒に闘おう、姫川さん

姫川麗蘭

…うん

上原勇也

おはよー

平澤由佳里

う、上原くんっ…！

平澤由佳里

(やだ…黒板の落書き、見られた…！)

上原勇也

誰だよ、こんな下らないこと書いたの

勇也はツカツカと黒板に向かうと、黒板消しで落書きを消し始めた

上原勇也

…気にすんなよ、平澤

上原勇也

こんなの、幼稚なガキのすることだから

平澤由佳里

上原くん…

平澤由佳里

(やっぱり私のこと、助けてくれるんだね)

平澤由佳里

(ありがとう、上原くん)

平澤由佳里

(私、何があっても負けないからね)

ガラッ

教頭先生

上原勇也くんはいるかな？

上原勇也

えっ…

上原勇也

はい、俺ですけど…

教頭先生

少し聞きたいことがあるんだが…

教頭先生

生徒指導室まで来なさい

上原勇也

わかりました…

平澤由佳里

(上原くん…どうしたのかな…)

上原勇也

なんすか？

上原勇也

俺に聞きたいことって…

教頭先生

君…

教頭先生

今まで何度も、試験中にカンニングをしているね？

上原勇也

な、なんでそんなこと…

教頭先生

何度か試験監督の先生からの報告があったんだが…

教頭先生

すべて、上からの指示で有耶無耶にされてきた

教頭先生

それが先月の中間試験の時に関してだけ、有力な情報が手に入ったんだ

上原勇也

…情報って、どこからの情報なんです？

教頭先生

……ある生徒の目撃証言さ

上原勇也

！！

上原勇也

(樹里か…！)

上原勇也

(俺が平澤のこと庇おうとしたから)

上原勇也

(邪魔するなってわけだな…)

教頭先生

…どうなんだ？

教頭先生

カンニングしたことを認めるのか？

上原勇也

………

上原勇也

……はい

教頭先生

なぜカンニングをした？

教頭先生

君は授業態度も悪くはないし、入試の成績も上から５番目だったそうじゃないか

教頭先生

そこまでして、成績トップになりたい理由があるんだろ？

上原勇也

………

教頭先生

おおかた、ご両親への反抗といったところか…

教頭先生

今時の高校生にはよくあることなのかもしれないが…

上原勇也

…そんなんじゃないですよ

教頭先生

じゃあ…

上原勇也

上から５番目なんかじゃダメなんですよ

上原勇也

俺は…完璧な息子になりたかったんです

教頭先生

なぜ…？

上原勇也

俺って本当は、優等生でも何でもない、ただの自己中心的な子供なんです

上原勇也

中学の頃から両親は毎日喧嘩ばかりで、家に帰るのがイヤになっちゃって…

上原勇也

ろくに帰らずに遊んでばかりで、真面目に恋愛すらしたことなんてないんですよ

上原勇也

そんな頃に、とうとう母さんが外泊を重ねるようになっていって…

上原勇也

俺が悪いんだって…

上原勇也

俺がこんなだから、母さんはもう愛想尽かして出て行くんだって思って

上原勇也

俺、母さんに見捨てられたくなかったんです…！

上原勇也

だから遊ぶのもやめて必死に勉強して、名門校で成績トップでいたら、母さんを喜ばせてあげられるし

上原勇也

俺を捨てるのがもったいなくて、ずっと家にいてくれるんじゃないかって…思ったんです…！

教頭先生

…ほう、なるほどなぁ

教頭先生

……で、お母さんは今は外泊せずにいてくれてるのかな？

上原勇也

そ、それは…

勇也が口ごもって俯くと、教頭は小さくため息をついた

教頭先生

君ねぇ、そんな過ちを犯したってなんの意味もないんだってことがわからないのか？

教頭先生

悪いことをしても、誰も幸せになんてなれないんだよ

上原勇也

………

上原勇也

先生がそういう考えなら

上原勇也

今、学校で起きてるイジメのことに関してもそう言えますか？

教頭先生

い、イジメ…？

上原勇也

俺のクラスの２年3組で、女子がイジメに遭っています

上原勇也

…それも、元々いじめられてたクラスメイトのことを助けたから、です

上原勇也

悪いことをしても誰も幸せになれないって言ってる教頭先生なら、きっとやめさせることだってできますよね…？！

教頭先生

………

教頭先生

２年３組といえば…

教頭先生

市議会議員の宮坂さんの娘さんがいるクラス…だったな

上原勇也

そうです

教頭先生

……そ、それは…

上原勇也

何が問題なんですか？

教頭先生

それは、だな

教頭先生

…我々は理事長からの指示に従う義務があって…

上原勇也

義務ってなんなんですか？！

上原勇也

生徒が辛い目に遭ってるっていうのに…！

上原勇也

あんたたち大人は、いつもそうやってすぐ勝手な都合で逃げてばっかりだ！！

教頭先生

くっ…！

教頭先生

こ、子供には到底理解し得ない、事情というものがあるんだ！！

上原勇也

………

教頭先生

今回の件で…謹慎は免れないと思いなさい！

上原勇也

…そうですか

上原勇也

そうやって、目の前のことから目を逸らし続けるんですね（笑）

上原勇也

停学だろうが退学だろうが、罰は受けますよ

上原勇也

でも、１つだけ覚えておいて下さい

上原勇也

…あんたたちみたいな身勝手な大人にも、必ず罰は下るってことを……

山中真世

大丈夫だよ、由佳里

山中真世

私もいるんだし、宮坂さんだってさすがに３人相手はしんどいはずだから

山中真世

そのうち、手出しできなくなるよ！

平澤由佳里

ありがと、真世…

平澤由佳里

真世にまでこんな思いさせてごめん…！

平澤由佳里

でも…私っ…

山中真世

…わかってるよ

山中真世

私も、由佳里の選択は正しいと思うから

平澤由佳里

姫川さんのこと…わかってくれたんだね、真世…

山中真世

…うん

山中真世

でも…

平澤由佳里

どうしたの？

山中真世

ねぇ、姫川さんって…本当に信用してもいいのかな？

平澤由佳里

…どうして？

山中真世

こないだ、姫川さんから変な相談持ちかけられたの

山中真世

由佳里が、菱木先生と付き合ってるとかなんとか…

平澤由佳里

私が、菱木先生と…？

平澤由佳里

な、なんで姫川さんがそんな嘘つくの…？！

山中真世

わからない

山中真世

ただ、私が思うには…

山中真世

私のことが邪魔なんだと思う

山中真世

姫川さん、由佳里のこと独り占めしたいんだよ…きっと

山中真世

だから、私が由佳里のことを嫌いになるように仕向けてるんじゃないかな？

平澤由佳里

そんな…！

平澤由佳里

あっ…だから真世、こないだ私のこと避けてたの？

山中真世

うん…ごめん

平澤由佳里

どうして？！

山中真世

写真まで見ちゃったから…

山中真世

由佳里にどう接したらいいのかわからなかったの

山中真世

けど、絶対に何かの間違いだと思ってるから、信じてなんかないよ！

平澤由佳里

写真って何？

山中真世

そ、それはね…

姫川麗蘭

違うの！

平澤由佳里

ひ、姫川さん？！

姫川麗蘭

私…宮坂さんに脅されてて…！

姫川麗蘭

菱木先生と由佳里ちゃんがラブホテルに入ろうとしてるふうに加工した写真を送りつけられたの！

姫川麗蘭

これを山中さんに見せて、２人の間を引き裂かなきゃ…

姫川麗蘭

私に対してもっと酷いイジメをしてやるって…！！

平澤由佳里

そ、そんなことが…？！

平澤由佳里

ひどい…宮坂さん…！

山中真世

姫川さん…それ、本当なの？

山中真世

じゃあ、どうしてあの時私に本当のこと話してくれなかったの？！

姫川麗蘭

ごめんなさい…

姫川麗蘭

私…宮坂さんが怖かったの！

姫川麗蘭

本当に…ごめんなさい…！！

山中真世

………

平澤由佳里

姫川さん…

平澤由佳里

泣かないで

平澤由佳里

大丈夫だよ、真世と私の仲は壊れてなんかないから

姫川麗蘭

………

平澤由佳里

悪いのは、ここまで酷いことができる宮坂さんだよ…！

平澤由佳里

私…

平澤由佳里

絶対に許さない…！！

平澤由佳里

徹底的に戦ってやる…

平澤由佳里

絶対に負けたりなんかしないから！

宮坂樹里

へぇー、それは頼もしいわね

平澤由佳里

宮坂さん…！

宮坂樹里

そうだ…

宮坂樹里

昨日の体育倉庫であんたが見た良い物の感想、まだ聞いてなかったね

宮坂樹里

…どうだった？

平澤由佳里

………

宮坂樹里

勇也に助けてもらおうなんて思わない方がいいよ？

宮坂樹里

あの勇也ですら、私のことが大好きな駒なんだから（笑）

宮坂樹里

私の言うことなら、なーんでも聞いてくれるんだからっ！

宮坂樹里

…残念だったね、平澤（笑）

宮坂樹里

エッチまでしちゃったのに…可哀想（笑）

平澤由佳里

……！！

宮坂樹里

それにね、勇也は今までの悪事がバレて…多分しばらくは自宅謹慎決定だから

平澤由佳里

う、上原くんが…謹慎…？！

宮坂樹里

そう

宮坂樹里

だから、あんたがどれだけ泣き喚いたって勇也は助けになんて来てくれないからね（笑）

平澤由佳里

……っ

宮坂樹里

あ、それとブス川ぁ

姫川麗蘭

な、何？

宮坂樹里

…あんた、何もかも私のせいにして逃げようとしてたでしょ

姫川麗蘭

そ、そんな…

姫川麗蘭

違うの！

宮坂樹里

まぁいいや…

宮坂樹里

本当にもっと酷いこと、すればいいだけの話だから（笑）

宮坂樹里

それが嫌なら…

宮坂樹里

よく考えて行動することだね…

姫川麗蘭

……！！

宮坂樹里

ほら…私って…親の権力とお金で、何したって大抵のことは許されちゃう特別な存在でしょ？

宮坂樹里

パパとママは盲目的に私のこと良い子だって信じきってるし

宮坂樹里

だからね、誰も私には逆らえないの

平澤由佳里

………

平澤由佳里

宮坂さん…

宮坂樹里

なによ？

平澤由佳里

あなたって、可哀想な子なんだね

宮坂樹里

可哀想…？

平澤由佳里

そうやって、親を盾にしないと自分を守れないんだもん

宮坂樹里

！

平澤由佳里

あなたって、本当は寂しくて仕方ないんじゃない？

平澤由佳里

取り巻きの女子たちも…

平澤由佳里

それに、あなたが好きだって言ってる上原くんからも

平澤由佳里

誰からも「あなた自身」を見て大切に想ってもらえてないんだから

宮坂樹里

なっ…

平澤由佳里

だからそうやって、誰かを傷つけないと自分を保てない…

平澤由佳里

そんな可哀想な人だって言ってるんだよ

山中真世

由佳里…！

宮坂樹里

………っ

宮坂樹里

調子に乗るんじゃねーよ！！

宮坂樹里

許さない…！

樹里が由佳里を睨み付けながら掴みかかった

山中真世

由佳里！！

女子

はいはーい、あんたはコッチ！

山中真世

あっ…何すんのっ？！

山中真世

離してよ！！

宮坂樹里

ちょっと勇也に優しくされたぐらいで…いい気になってんじゃねぇよ！！

樹里は怒りに任せて、そのまま由佳里の髪の毛を掴みあげた

平澤由佳里

痛っ！

宮坂樹里

ねぇ、茂山！

宮坂樹里

トイレ用のモップとバケツに冷たい水汲んで持ってきて！

茂山

…わかった！

平澤由佳里

何するつもり？

宮坂樹里

…薄汚いあんたの体を清めてあげるんだよ

山中真世

宮坂さん、やめてよ！

宮坂樹里

ついでに…ブス川のブスな顔も磨いて綺麗にしてあげる

姫川麗蘭

えっ…やだ…やだよ！！

姫川麗蘭

やめてよ宮坂さん…！

田中

おらっ！早くしなブス川！！

茂山

はい、持ってきたよ！モップと水汲んだバケツ！

宮坂樹里

じゃ、みんなでやっちゃおっか♪

宮坂樹里

せーのっ！

バッシャーン！！

平澤由佳里

つめたっ…！！

姫川麗蘭

ひ、ひぃぃっ…！

宮坂樹里

醜い声で泣いてんじゃねぇよブス川ぁ（笑）

宮坂樹里

ブサイクなのは顔だけにしとかなくっちゃ…

山中真世

こ、こんなの…もう私がどうにかできるようなことじゃない…！

山中真世

担任の菱木先生にこのこと、知らせてやるから！！

宮坂樹里

……勝手にすれば？

山中真世

離せよっ！この…！

女子の拘束から逃れると、真世は職員室に向かって走り出した

山中真世

菱木先生！！

菱木

ん？どうした、山中

山中真世

あ、あの…

山中真世

トイレで、平澤さんと姫川さんが宮坂さんたちに暴力を振るわれてて…

山中真世

いじめられてるんです！！

菱木

な、なんだって？！

山中真世

先生、とにかく宮坂さんたちにやめさせて下さい！

山中真世

このままじゃ…このままじゃ、由佳里が…！

菱木

そうか、わかった！

菱木

…すぐに向かおう！

山中真世

はい！

宮坂樹里

あんたの薄汚いその体…

宮坂樹里

勇也が触ったその体…

宮坂樹里

これで、綺麗にしてあげる…っ！

平澤由佳里

やめてよ！！

壁側に追い詰められた由佳里の抵抗は虚しく防がれ、樹里の持つ濡れたモップが体に叩きつけられた

平澤由佳里

うぅっ…！

宮坂樹里

そうだ…いいこと考えた

宮坂樹里

ねぇ、コイツの汚いアソコに…

宮坂樹里

コレ、入れちゃおっか？（笑）

ニタニタ笑いながら、樹里はモップの柄を先に持ち替えた

茂山

えっ…マジでやっちゃうの？（笑）

田中

うっわ…樹里って鬼畜ぅー（笑）

宮坂樹里

コイツ、もう処女じゃないんだし大丈夫だって（笑）

平澤由佳里

な、何すんの！！

宮坂樹里

ほら、じっとしてなきゃ痛い思いするだけだよー？

宮坂樹里

そっち、足しっかり押さえてて！！

平澤由佳里

宮坂さん…！

平澤由佳里

あなた、こんなことして何が楽しいの？！

キョトンとすると、樹里はニタァと笑って言った

宮坂樹里

…憎い奴が痛めつけられて、苦痛に歪んだ泣き顔を見るのが楽しいからだよ？

平澤由佳里

……！！

宮坂樹里

おいブス川！

宮坂樹里

次はあんただからね？（笑）

姫川麗蘭

い、いやだ…！

姫川麗蘭

助けてぇっ…！！

そこへ、真世と菱木が駆け付けた

菱木

おい！

菱木

お前ら、何してるんだ！！

宮坂樹里

先生…

平澤由佳里

…菱木先生！

平澤由佳里

助けて下さい！！

山中真世

宮坂さん！早く２人を離して！！

宮坂樹里

……チッ

樹里が由佳里から離れると、菱木が即座に由佳里の元へ寄り、その体を抱きしめた

菱木

由佳里…！

菱木

由佳里がどうしてこんな目に…！！

平澤由佳里

せ、先生…？

山中真世

ゆ、『由佳里』って…

菱木

お前ら！！

菱木

先生は由佳里を保健室まで連れて行くが…

菱木

その後、キッチリ話を聞かせてもらうからな！！

宮坂樹里

…はいはーい

山中真世

………

一瞬のうちに由佳里を抱きかかえると、菱木は保健室へと向かった

宮坂樹里

はぁー、いいとこだったのに

宮坂樹里

それにしても…

宮坂樹里

菱木先生と平澤がデキてるって噂、本当だったんだね（笑）

山中真世

…どういうこと？

宮坂樹里

ラブホの前で撮られた写真も、加工なんてしてないんだよ

宮坂樹里

何より、平澤に対するさっきの先生の態度からして丸わかりだよね？（笑）

山中真世

………

菱木

さぁ、もう大丈夫だよ平澤…

平澤由佳里

ありがとうございます…

平澤由佳里

あ、あのっ、先生

菱木

心配ないよ

菱木

宮坂たちのことは、先生に任せて

菱木

君は、少し休んだ方がいい

平澤由佳里

はい…

菱木

ほら、暖かいお茶でも飲んで…

お茶が入ったマグカップを渡され、由佳里は受け取った

平澤由佳里

ありがとうございます、先生…

宮坂樹里

だからさぁ、山中…

宮坂樹里

あんたはね、ずっと平澤に影で裏切られてたんだって

山中真世

…うるさい！

山中真世

由佳里が、そんなことするはずない…！

山中真世

どうせ、あんたたちが仕組んだことなんでしょ？！

姫川麗蘭

山中さん

姫川麗蘭

私ね、前から…由佳里ちゃんの本性に気付いてたんだよ？

姫川麗蘭

由佳里ちゃんはね、私がいじめられっ子で弱い立場だからって舐めてかかって…

姫川麗蘭

山中さんのいない所で、私にだけいろいろ話してたの

山中真世

な、何を…？！

姫川麗蘭

『いつもギンプリの話ばっかでウザイ』とか…

姫川麗蘭

『菱木先生への片想いがうまくいかないからってアイドルに逃げてる可哀想な子』だとか…

姫川麗蘭

『だから、コッソリ菱木先生のこと奪ってやったんだ』って…

山中真世

う、うそ…！

山中真世

そんなの、嘘に決まってる…！

山中真世

由佳里が私のこと裏切るわけなんてない！！

宮坂樹里

…じゃあ、保健室のぞいてみれば？

宮坂樹里

今頃、２人が何をしてるのか…

宮坂樹里

その目で、しっかり見てきなよ

山中真世

……っ

山中真世

(ねぇ、由佳里…)

山中真世

(そんなの、嘘だよね…？)

山中真世

(全部、宮坂さんと姫川さんが仕組んだ罠なんだよね？)

山中真世

(私たち…親友…でしょ？)

そっと、扉の細い隙間から保健室の中を確認すると、由佳里が横たわるベッドの横に座る菱木の背中が見えた

菱木

由佳里…辛かっただろ…？

菱木

ああ…俺がついてるから、もう大丈夫だよ

山中真世

(菱木…先生…？！)

菱木

愛してるよ、由佳里…

そう言って菱木が由佳里にキスをした瞬間、真世の中で何かが音を立てて崩れ落ちた

山中真世

(うそ…)

山中真世

(由佳里…)

山中真世

(こんなのって…)

山中真世

(ひどいよ…！どうして？！)

山中真世

(どうしてなの？！由佳里！！)

滲む涙を拭いながら走り去る真世の足音を耳にした菱木は、スヤスヤと眠る由佳里から離れてスッとイスから立ち上がった

菱木

………

そしてスマホを手に取ると、どこかへと発信する

菱木

…もしもし、上原さん？

菱木

……終わりましたよ

菱木

ええ、これで…

菱木

僕たちの不倫疑惑は宮坂樹里の母親によって、揉み消されます

菱木

本当にビックリしましたよ

菱木

まさか、教え子の宮坂に僕たちがホテルに入ろうとしている所を写真に撮られて揺すられるとは思いませんでしたからね

菱木

当初は金が目的だと思ったのですが…

菱木

生徒に対して迫真の演技をするだけでいい、なんて言うものですから…

菱木

…まったく、こんな即効性の強い睡眠薬なんて一体どこで手に入れたんだか（笑）

菱木

最近の高校生は、やることが違いますね（笑）

菱木

…ええ、これでもうご主人や息子の勇也くんに不倫がバレることも、学校内での疑惑もなくなるはずですから

菱木

堂々と付き合えますよ…

菱木

…えっ？

菱木

その生徒に申し訳ないって？

菱木

何言ってるんです？

菱木

僕たち大人の世界に、子供同士のイザコザなんて必要ないじゃないですか（笑）

菱木

…そう

菱木

大人なんて、いくらでも権力で言い逃れできてしまうのですから…

人に優しくしたら、自分が壊れた。

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