テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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人に優しくしたら、自分が壊れた。

第8話 - 第８話

2021年03月20日

#ミステリー

#いじめ

#学園

#ホラー

#青春恋愛

#ドラマ

クリオネ

平澤由佳里

(あのまま菱木先生に車で家まで送ってもらったけど)

平澤由佳里

(なんだか頭がボーっとしてハッキリしないな…)

平澤由佳里

(先生の話によれば、宮坂さんたちも帰って姫川さんと真世はまだ学校にいるみたいだけど…)

平澤由佳里

(とにかく、２人が無事ならよかった)

平澤由佳里

(上原くん…)

平澤由佳里

(謹慎って…もしかして、カンニングが原因なのかな…)

平澤由佳里

(宮坂さんが親に頼んで揉み消してたみたいだけど…)

平澤由佳里

(どうしてこのタイミングで…？)

平澤由佳里

(まさか…)

平澤由佳里

(宮坂さんが、私を助けられないようにわざと仕組んだんじゃ…！)

平澤由佳里

(とにかく、上原くんに電話してみよう！)

何度掛けても、勇也が電話に出ることはなかった

平澤由佳里

(ダメだ…出ないし、LIMEも既読が付かない…)

平澤由佳里

(上原くんがしたことは確かに悪いことだから、仕方ないよね…)

平澤由佳里

(でも…)

ハラリと涙が頬を伝った

平澤由佳里

どうしてっ…

平澤由佳里

どうしてこんなことになっちゃったの…？！

平澤由佳里

私はただ…イジメが許せなかっただけなのに…！！

平澤由佳里

ねぇ、お婆ちゃんっ…！

仏壇の中で、優しく微笑んだままのお婆ちゃんの遺影に向かって問いただす

平澤由佳里

………

平澤由佳里

そう…だね

平澤由佳里

どんなことがあっても、人に優しく生きなきゃ…

平澤由佳里

姫川さん…！

平澤由佳里

姫川さんのこと、このまま放っておくことなんて私にはできない…っ！！

平澤由佳里

一緒に闘うって、約束したんだから！

平澤由佳里

上原くんに助けてもらおうなんて…甘えてちゃいけない

ガチャン

平澤梨沙

ただいまー！

平澤由佳里

り、梨沙…！

平澤梨沙

…あれ？

平澤梨沙

お姉ちゃん、今日は早いんだね？

平澤梨沙

テスト前か何か？

平澤由佳里

………

平澤梨沙

…泣いてるの…？

平澤由佳里

あ…違うの！

平澤由佳里

今日は生理痛がキツくって早退したんだ！

平澤梨沙

…そうなの？

平澤由佳里

…で、なんかお婆ちゃんの顔見てたらなぜか泣けてきちゃって（笑）

平澤由佳里

生理中でホルモンバランス崩れちゃって、ちょっと不安定なのかも

平澤梨沙

………

平澤梨沙

そういうの、よくあるっていうよね

平澤由佳里

うん…

平澤梨沙

お腹、冷やさないように暖かくしてね？

平澤由佳里

うん、ありがとう…梨沙

平澤由佳里

(梨沙には言えない…)

平澤由佳里

(私のことでこれ以上、この子に心配かけるわけにはいかないから)

平澤由佳里

(梨沙の笑顔を守るためにも、私がもっと強くならなきゃ！)

平澤由佳里

(菱木先生だっているんだし、大丈夫)

平澤由佳里

(絶対に負けるもんか…！)

平澤梨沙

………

不安な眼差しで、梨沙は由佳里のことを見つめるのだった

平澤由佳里

………

平澤由佳里

(大丈夫)

平澤由佳里

(教室の中に入れば、いつもの日常が待っていて…)

平澤由佳里

(いつもみたいに真世が『おっはよー、由佳里ーっ！』って出迎えてくれて…)

平澤由佳里

(真世のギンプリトークを聞かされて、私がため息なんてついちゃったりして)

平澤由佳里

(姫川さんだって楽しそうに笑ってくれてて…)

平澤由佳里

(そうに、決まってる！)

由佳里は、校門から中にその足を踏み入れた

平澤由佳里

………

少し躊躇ってから下足箱の扉を開ける

平澤由佳里

上履きが…ない…

平澤由佳里

(まだ、終わってないの…？)

平澤由佳里

(でも、後戻りなんてできない)

そして、由佳里が教室のドアを開けた瞬間だった

平澤由佳里

あっ…？！

パンパンパンッ！

グシャッ！

一斉に、無数の生卵が投げつけられ、由佳里の体に中身をぶち撒いて無惨に散った

クラスメイト

ギャハハハハ！！

クラスメイト

きったなーい！（笑）

平澤由佳里

……っ！！

クラスメイト

だって平澤さんって…

クラスメイト

体が汚いんでしょー？（笑）

クラスメイト

…なら、ちょっとぐらい汚れちゃったって問題ないよねー！（笑）

クラスメイト

そうそう、ヤリマンだもんね

クラスメイト

上原くんと菱木先生にまで迫ったんでしょー？

青山

いいなー

青山

なぁなぁ平澤、今度俺の相手もしてよー（笑）

青山

あ、父親候補がいっぱいいるんだったら…

青山

ゴムなしオッケーだよな？！（笑）

クラスメイト

やだー！

クラスメイト

性病もらっちゃうよー？あんた！（笑）

平澤由佳里

………

平澤由佳里

…私はヤリマンなんかじゃない

宮坂樹里

おはよーみんなー！

平澤由佳里

み、宮坂さん…？！

平澤由佳里

な、なんで…っ！

宮坂樹里

やだぁ、あんた生臭ーい！（笑）

宮坂樹里

…なんで私が学校に来れるの？って顔してるね？

宮坂樹里

そんなの、決まってるでしょ？

宮坂樹里

…私が、特別な存在だーかーらっ♪

平澤由佳里

そ、そんな…

平澤由佳里

どうして？！

平澤由佳里

だって菱木先生が…

ガラッ

菱木

やぁ、おはよう！みんな！

平澤由佳里

せ、先生っ！！

菱木

………

菱木

どうしたんだ、平澤…

菱木

そんなにドロドロになったりして…

平澤由佳里

あっ…

平澤由佳里

こ、これはここにいるみんながっ…

菱木

ダメじゃないか平澤…

菱木

…後で、ちゃんと床の掃除しとくんだぞ？（笑）

平澤由佳里

え…？

平澤由佳里

せん…せい…？

教室中に、ドッと笑いが溢れ返った

姫川麗蘭

ゆ、由佳里ちゃん…っ

平澤由佳里

(姫川さん…完全に怯えてる…)

平澤由佳里

(おかしいよ、この人たち)

平澤由佳里

(菱木先生まで…一体どうなってるの？！)

ガラッ…

山中真世

………

平澤由佳里

あっ…真世っ！

真世は由佳里の惨状を目にすると、一瞬驚きを見せた

菱木

おい山中、遅刻だなんて珍しいなぁ？

菱木

早く席に着きなさい

山中真世

……はい

平澤由佳里

真世…？

目も合わさずに脇を通ろうとする真世の腕を掴んで止めた

平澤由佳里

真世っ？！

平澤由佳里

ちょっと待ってよ…！

真世が、泣き腫らした目で由佳里を睨みつけながら振り返った

山中真世

…離してよ

山中真世

この…

山中真世

ヤリマン

平澤由佳里

……え

平澤由佳里

………真世？

山中真世

ずっと親友だと思ってたのに…

山中真世

あんただけは、絶対に許さない…！！

姫川麗蘭

……ふっ

平澤由佳里

どうして…？

平澤由佳里

真世…

菱木

なんだお前ら、朝から喧嘩か？

菱木

…ったく、続きは帰ってからにしなさい

菱木

さあ、ホームルームを始めるぞー

平澤由佳里

なんで…？

平澤由佳里

真世！

平澤由佳里

一体何があったっていうの？！

山中真世

………

山中真世

すみません、気分が悪いので…

山中真世

保健室に行ってきてもいいですか？

菱木

ん？ああ、かまわないが…

その場から逃げるように教室から出て行く真世を、由佳里が追いかけようとした

平澤由佳里

真世っ…！！

平澤由佳里

どういうことなの？！真世…！

菱木

おい！いい加減にするんだ平澤！

宮坂樹里

先生！

菱木

ん？なんだ、宮坂

宮坂樹里

…１つ提案があるんですけど

菱木

なんだ？言ってみなさい

宮坂樹里

授業を真面目に受ける気がない平澤さんと…

宮坂樹里

そこにいる目の毒にしかならないブス川さん…

宮坂樹里

そんな２人に、みんなで罰を与えませんか？

姫川麗蘭

そ、そんなっ…！

平澤由佳里

……！！

菱木

…まぁ、確かに罰した方が良さそうだな

菱木

授業の妨げになるような行為は、みんなの迷惑だからなぁ

宮坂樹里

こんなのはどうでしょう？

宮坂樹里

そこにある、黒板消しクリーナーに溜まったチョークの粉で…

宮坂樹里

ブス川さんのブサイクな顔を綺麗にお化粧してあげて…

宮坂樹里

口を閉じないウルサイ平澤さんの口に流し込んであげるのは、どうですか？

平澤由佳里

……！！

菱木

…おいおい、ちょっとやりすぎじゃないのかー？（笑）

宮坂樹里

大丈夫ですよ

宮坂樹里

死にはしませんから…（笑）

クラスメイト

え、マジでやっちゃうの？（笑）

青山

あ、じゃあ俺がチョークの粉持ってくるよ！

姫川麗蘭

い、いやだ…！

平澤由佳里

………

平澤由佳里

そんなこと、させない…！

平澤由佳里

姫川さん！

姫川の元へと駆け付けると、腕を掴んで引っ張って立たせる

姫川麗蘭

由佳里ちゃんっ…？！

平澤由佳里

…逃げるよ！

宮坂樹里

どこに行くつもり？

宮坂樹里

この学校には、あんたたちの味方なんて誰一人いないんだよ？（笑）

菱木

こらこら、ホームルームをサボる気か？

平澤由佳里

こんなの…

平澤由佳里

こんなの、ホームルームでも授業でもありません

平澤由佳里

これは…

平澤由佳里

集団によるイジメです！！

由佳里は、菱木をキッと睨みつけて言った

菱木

……それが、なんだというんだ？

平澤由佳里

…え？

菱木

イジメなんて、今の時代珍しいことでもないだろう…

菱木

この広い全国津々浦々の学校で…必ずそういった存在の生徒一人は存在してるものなんだよ

菱木

…あのな、平澤

菱木

先生は金八でもなければ、グレートティーチャーでもないんだ

菱木

教師だからって、何でもかんでも解決してくれると思ってたら大間違いなんだぞ？

平澤由佳里

……！！

菱木

それに…

菱木

そんなイジメに遭ってるお前にも…それ相応の原因があるんじゃないのかぁ…？

平澤由佳里

せ、先生…っ

クラスメイト

先生ひどーい（笑）

クラスメイト

でも、現実ってそんなもんだよねー（笑）

クラスメイト

私の妹の中学でも一人、いじめられてる子がいるんだってー

クラスメイト

…でも、誰も助けたがる奴なんていないみたいだよ（笑）

クラスメイト

だってやっぱ…自分までいじめられるのだけは勘弁じゃん？（笑）

平澤由佳里

………

平澤由佳里

私は…

平澤由佳里

私は、イジメという存在が許せません

宮坂樹里

…何？いきなり改まっちゃって（笑）

平澤由佳里

…だから、私は闘います！！

平澤由佳里

イジメは、その加害者も傍観者も、見て見ぬふりをする先生も

平澤由佳里

みんな、やってることは同じ…

平澤由佳里

こんな…誰かを理不尽に傷つけて、追い詰めることが許されていいわけがない…！

平澤由佳里

だから、だから私は…

平澤由佳里

ここにいる加害者全員に、必ず罰が下るんだと、私はここに宣言します！！

宮坂樹里

……っ

力強い意志が、教室中を静まり返らせた瞬間だった

姫川麗蘭

ゆ、由佳里ちゃん…

姫川の手を、由佳里はギュッと握りしめた

宮坂樹里

…へぇー

宮坂樹里

あんた…けっこう根性あるんだね

宮坂樹里

クラス中はもちろん、先生にも親友にも見放されちゃってるのに（笑）

平澤由佳里

ま、真世は…違う！

平澤由佳里

きっと、誰かに何か吹き込まれたに違いないから…

平澤由佳里

私は、真世のこと信じてる！！

姫川麗蘭

……！！

宮坂樹里

ふーん

宮坂樹里

…そう

宮坂樹里

なら…今度は…

宮坂樹里

もう、そんな強気なこと言えないぐらいまでやっちゃうしかないよね

平澤由佳里

それでも…

平澤由佳里

私は負けない！！

茂山

何言ってんのよ！

茂山

樹里の好きな人…奪おうとしたくせに！！

青山

そうそう、男なら誰でもいいヤリマンのくせに…

青山

善人ぶって、偉そうにほざいてんじゃねーよ！

田中

樹里のこと傷つけたのはお前だろ？！

田中

容赦しないからね…！

樹里を含めた数名が、由佳里の方へとにじり寄ってくる

平澤由佳里

……っ

平澤由佳里

行こう！姫川さん！！

姫川麗蘭

えっ？！

姫川麗蘭

あ…待って、由佳里ちゃん！

身の危険を感じた由佳里は、姫川の手を引いて教室の外へ、走り出した

人に優しくしたら、自分が壊れた。

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