生暖かい風を感じて、
僕はふと目を覚ます。
気がつけば。
僕は、一面に咲き誇る 菜の花に囲まれていた…。
何故だろう。
いつもは強く、美しい花々が…
なんだか儚げに、弱々しく 咲いていた…。
…いや、
そんな気がした_。
そういえば。
この光景、前も何処かで…。
そう思った瞬間、突然
僕は激しい目眩と頭痛に 襲われる。
意識が朦朧とする中、
ただ一つ覚えている事は…
君がくれた、 五文字の言葉だけ_。
ジリリリリ!!
大きなアラーム音に、
僕は堪らず飛び起きる。
目覚まし代わりにつけた テレビに映る…
「立春」 の文字。
そうだ。
今日から…
「春」なんだ…!!!
そう知った途端、僕は勢いよく
カーテンと窓を開けて。
深く息を吸ってみる。
暖かな日差しと 春の柔らかな香りが
僕を優しく包み込む_。
その時…
庭に咲く一輪の花に、 目が溜まる。
その花を見つけた僕は、
軽やかに階段を降りて、
引き戸を開けて、
その花に向かって…
一直線に、走って行く。
着替えもせずに。
そして…
あの夢と同じ、どこか儚げな
この花を摘んだ僕は、
真っ先に「君の部屋」へと 足を運んだ。
「君の部屋」に 足を踏み入れた僕は、
君の部屋に置かれた
枯れてしまった花の入った 花瓶を手に取る。
水道で花瓶を綺麗に洗って、
水を花瓶の中に入れる。
そして最後に…
さっき摘んだ、菜の花を 花瓶に生ける。
そしてもう一度、
君の部屋に足を踏み入れた…。
君の部屋に、もう君はいない。
その代わり、眩しすぎるほどの笑顔の君の写真がある。
僕は、その写真の近くに 菜の花の入った花瓶を
丁寧に置いて。
僕は、線香をあげた…。
僕があげた線香の香りが 立ち込める中。
目を瞑り、君の写真に向かって 手を合わせた_。
君に出会えて、 本当に良かった。
君には、本当にたくさんの 思い出と勇気をもらった。
ずっとずっと、大好きだよ。
だから。
今はゆっくり休んで いいからね…。
僕もいつか、今君がいる世界に
行く時が絶対に来る。
その時は。
あの日と変わらない、
僕には眩しすぎるぐらいの 笑顔を見せてよ。
…なーんてね。
最後に、一つだけ言わせて。
ありがとう。
僕があげた線香が優しく香る、
暖かな春の日に。
僕は静かに、
一人で、
眩しすぎる笑顔の君に向かって
涙を零した_。
コメント
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素敵な表現の中に切なさがあって、より悲しくなりました.......綺麗でした。
めっちゃいいお話……! また巡り会えたら良いな… 読むの遅くなってごめんね!