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怪盗時雨桜

第11話 - 新たな怪盗

2021年12月02日

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かえで🍁✒️

〜彩莉 side〜

ニュースキャスター

『昨夜○○氏の屋敷に、怪盗時雨桜に続く、新たな怪盗が現れました』

朝ごはんを食べながら、いつも通りニュースを見ていた

「時雨桜にライバル現る！？」という見出しと共に、その屋敷らしき場所が映し出されている

彩莉

（時雨桜に続く、新しい怪盗……？）

ニュースキャスター

『怪盗の名はブラッドムーン。』

ニュースキャスター

『時雨桜と同様、姿は確認できなかったようですが、盗まれた宝石のあった場所に、このようなカードが置いてあったことから判明しました』

画面が、アナウンサーの女性からそのカードの写真に切り替わる

……あ、本当だ、カードに “Blood Moon”って文字が書いてある

裏面には、赤い三日月も描かれている

ニュースキャスター

『そして同じ場所に時雨桜も出現し、こちらはなんと、姿を完全に確認できたとのことです』

えっ、“姿を確認できた”？

ニュースキャスター

『その姿が、こちらです』

また画面に、一枚の写真が映った

くノ一の格好、長身で、長い白髪のポニーテール

噂と全く同じ姿で、隠されていない顔の目元は、目の色は違えど、真冬そのものだった

コメンテーター

『広まっている噂と同じ姿ですね』

コメンテーター

『手足も細いですし、見たところ女性のように見えますが……』

この様子だと、年と性別については、気づかれていないらしい

でも、どうしてこんなことに……？

ニュースキャスター

『この現場には警察に加えて、とある探偵も同行しており、その探偵の手柄で、建物の屋上まで追い詰めることができたそうです』

ニュースキャスター

『ですがあと一歩のところで、時雨桜が屋上から飛び降り、そのまま逃走したとのことです』

彩莉

飛び降りた！？

あまりの驚きに、つい言葉を口にしてしまう

彩莉母

彩莉ー、朝からうるさいわよー

そのあとすぐ、お母さんに注意されてしまった

でも、真冬が逃げられたのならよかった

彩莉

（この後、学校の屋上で話せるかな……？）

〜真冬 side〜

授業が終わって、彼方さんの生徒会の仕事も終わって、ボクらは屋上に集まっていた

それぞれ、柵に寄りかかったり、パソコンをいじったり

真冬

…………

彼方

…………

あの夜から、家に帰ってもお互い無言のまま

必要最低限の会話ぐらいしか言葉を交わしていない

学校には浦田先輩と優もいるし、出来るだけ普通に振る舞うようにはしてたけど

ガチャッ

不意に屋上のドアが開いて、人が入ってきた

彩莉

……あ、やっぱりここにいた

って、彩莉？

真冬

どうしたの？

寄りかかっていた柵から離れて、彩莉の方に歩いていく

彩莉

今朝、ニュース見たんだけど……大丈夫だった？

ニュース……あぁ、彩莉も見たんだ

真冬

うん、何とか逃げれたし、大丈夫だよ

彼方

…………

ソラは、無言のまま……

真冬

……ごめん、ボクがあそこですぐに動けていれば……

そうしたら、追い詰められることも、ましてや姿を見られることだってなかったはず

ソラはちゃんと指示を飛ばしてくれてたのに……ボクのせいだ

彼方

……“ブラッド”が来ることもあいつらがいたことも、気づかなかったのは俺の調査不足だった。

彼方

全部がお前の責任じゃない

全部がボクの責任じゃない……？

真冬

……うん。ごめん、ありがとう

ソラのおかげで、心のもやが晴れていく

何はともあれ、やっと昨日のことについて話すことができた

真冬

（お互いに、反省点があるってことだね）

彼方

とにかく今は、次のことを考える。あれはもう諦めるとして、次のターゲットに切り替えるぞ

真冬

分かった

もしかしてソラは、そのためにさっきからパソコンをいじってたの？

……やっぱりボクは、まだ感情に左右されやすいらしい

いちいち悔しがってたら、この先やっていけないのに

ソラはボクとは違って、今みたいにすぐ頭を切り替えられる

やっぱり、そういうのは羨ましい

〜彩莉 side〜

彩莉

えーっと……一つ、聞いていいですか？

昨夜の反省会と、仲直り？　ができたらしく、やっと聞くことができた

真冬

聞きたいこと？

彩莉

その、ブラッドムーンのことが、少し気になって

ニュースを見てから、なんとなく引っ掛かっていた

彼方

俺らと同じようなやつらだよ。同じ目的で活動してる

彩莉

目的？

そういえば、聞いたことがなかったけど、この二人はどうして怪盗なんてしてるんだろう

真冬

あ〜……うん。まぁちょっとね。

真冬

そうだ。昨日来た九葉も、ブラッドムーンの一人だよ

ちょっとね、とだけ言われて、話を変えられてしまった

あんまり、触れない方がいいのかな

……って、あの子、ブラッドムーンだったの？

彩莉

“一人”ってことは……

真冬

もう一人が、九葉の兄の友弥君。

やっぱり、こっちも複数人いたんだ

真冬

昨日九葉が来ることを教えてくれたのがこの人で、昨日ボクをハメたのもこの人

兄ってことは、兄妹で怪盗をやってるらしい

九葉ちゃんが来ることを教えてくれたなら、私達の味方側ってこと？

でも、ハメたとも言ってるし……

真冬

ハメられたのは昨日が初めてだよ。

真冬

ターゲットも被らなかったし、今まで仲良くやってたんだけどね

彩莉

（じゃあもしかして、裏切り……？）

彼方

……友弥はどちらかと言うと中立。九葉側で、唯一彩莉のことを知ってる存在

私の疑問に気づいたのか、一ノ瀬会長がそう教えてくれた

友弥さんは、中立？

彩莉

どうして間に……？

〜真冬 side〜

真冬

さぁ……友弥君って、昔からよく分からないんだよね。

真冬

自由奔放というか、何にも縛られてないというか

当主側の、ましてや香月側の人間のはずなのに、ボクらの見方もしてる

友弥君はいつもニコニコしてるから、何を考えているのか、全く読めない

何だか、本人が楽しんでるようにも見えるんだよね

掴み所が無い。逆に言うと、人を惑わせて、自分のペースに持っていくのが得意

だから昨日、ボクも自分のペースを持っていかれた

プルルル……

って、ボクに電話だ

真冬

（相手は……って……）

真冬

……もしもし？

友弥

『あ、もしもし真冬？』

友弥

『昨日はほんとごめんね、九葉にそうしろって言われたからさ〜。あ、大丈夫？　あの後ちゃんと逃げられた？』

真冬

大丈夫だよ、今こうやって話せてるんだし

友弥

『まぁ、たしかにそっか』

昨日、屋敷で会ったばかりの友弥君

一体何の用なんだろう

友弥

『昨日は敵対しちゃったけど、あの子のことはちゃんと隠してるから安心して。』

友弥

『じゃ、それだけだから。またどこかで〜』

そう言われた後、一方的に電話が切られた

彼方

…………

真冬

……友弥君から。昨日は九葉に言われてやっただけで、彩莉のことはちゃんと隠してるって

ソラからの問いの視線を感じて、そう答える

彼方

九葉がまた何かしてくるかもしれない。これからはあいつも疑うことになる

今まで真正面から信じてたわけじゃないけど、たしかにボクも、昨日の今日で友弥君に対する疑念は増した

真冬

（もう、心置きなく頼れない、か……）

思い返すと、九葉が彩莉に会いに来た昨日から、どんどんボクらの計画が崩されていってる

昨日のターゲットだって、本来ならあっちは狙わないものだったのに

“ブラッド”は、一体何がしたいんだろう

怪盗時雨桜

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