最近飼い始めた家畜

注意事項は一話をご覧下さい

触れようとお腹に伸ばす手を思いっきり 掴み遠ざけた

自分の発言で怒られないように 補足説明をし、口を閉じた

願うように言われても私は、可愛い返しなんて出来ない

感情を押し殺すことには、もう慣れている

ご主人から顔を背け、ご主人を置いて 歩みを進める

話す度目元に涙が滲み声が震える

追いかけるご主人を無視し、 また一歩歩みを進める

追いつかれ手を握られた頃には、 服の袖は拭った涙で湿ってしまった

今度は後ろを見てから一歩踏み出す

今度は逃げないという意思を含めて 先を歩く

からかいたくて笑みを浮かべながら 後ろを振り返る

黙ったままのご主人が私を見て嬉しそうに微笑む

今度は、ちゃんと歩幅を合わせて

手を繋いでご主人と共に歩き出した

鼻を啜る音が聞こえた後初兎は口を開く

笑みを浮かべ腕を掴みながら初兎の様子を伺った

頬を膨らませ服の裾を掴みそっぽを向かれた

エプロン姿のほとけを見送り、近くの椅子に座った

自分のことで手一杯なくせに 人の心配ばかりする

頭を撫でられた時に、傷と血だらけの 手首が見えた

腕を隠し手を合わせた後、暗い表情で食事をする

心配されたくないのか見えない箇所に 傷を作る

ほとけの分の食器も持ち、キッチンの洗い場に食器を置いた

悠くんが入ってこないように部屋のドアの鍵を閉め、ベッドに座る

カッターを握り締め太腿に刃を当て、 スライドさせる

切られた肉からたらりと真っ赤な血が滲む

全部全部…嫌になる

押し付けられた子供の面倒を見ることも 生きることも全部

刃を肩に当てる手が震える 怖さの震えではなく痛みが欲しい震え

僕は、ストレスに耐えられず 体が痛みを求めるようになった

無意識に手が動き、刃を体に当てる

刃を仕舞うとタイミングを見計らったように、がたんと物音が聞こえた

苦しそうに呻く声が、聞こえる 痛みに耐え大丈夫と口にした子供の声

急いで腕に包帯を巻き、首元の傷を隠さないことに気づかなかった

キッチンに着いた頃にはお腹を抑えて蹲っていた

近寄ると白い球体が足元に転がっていた

背中を撫でると安心したように微笑む

悠くんの小さな手を掴み、指を絡める

自分なんかを心配しなくても良いのに悠くんが言ったことに驚いてしまった