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月曜日。

なんとなく気まずくて… いつもより早く家を出た。

2本も早い電車に乗った。

教室に入ると待ち構えてた亜矢が

亜矢

果歩ーっ!

っと、抱きついてきた。

果歩

お、おはよ、亜矢

亜矢

おはよ!…うん、カワイくなってる!

果歩

だ、大丈夫かな?

亜矢

ステキよ!惚れ直しちゃうーっ!

果歩

土曜日はもっと、クルクルしてたんだけど、自分じゃできないから

亜矢

クルクル見たかったなー!写メは?

果歩

あ、撮ってない

亜矢

えー!なんでー?

果歩

ゴメン、なんか、忘れてた

亜矢

もー。まあいいわ。
今度アイロンも持ってくるから

果歩

いいってばー。もう。

亜矢

今日はね、メイク道具持ってきたから、昼休みに盛ろうねっっ!

果歩

!!ホントに持ってきたの?

亜矢

そうだよ。今日は果歩をオンナにしてあげるっ

果歩

げー

昼休み、本気で逃げなければ。

慎吾

おーす

慎吾が教室に入ってきた。

チラッとこちらを見て、 ちょっと驚いた顔をしたけど、 すぐ背を向けられてしまった。

いつもだったら何か言ってくるのに。

『なんで先に行くんだよー』とか。

また、涙が出そうになってきた。

亜矢の背中に ギュッと泣きそうな顔を押し付けた。

亜矢

果歩?…後悔してるの?

果歩

え?後悔?

圭くんと仲良くしてたこと?

亜矢

…髪型変えたことよ

あ、そっち

果歩

ううん、してないよ。すごく気に入ってるし

亜矢

だったらいいんじゃない?顔上げて!笑って!

亜矢はそう言うと、私の両頬を手のひらでギュッと包んだ。

果歩

うん。そうする

亜矢

さあ、みんなの視線をしばらく集めるわよ!

みんなーっ!果歩のイメチェンに注目ー!

あれ?果歩?

いいね、カワイイ!

どこの美容室行ったの?

しばらくクラスのみんなに囲まれて

慎吾の姿が見えなくなった。

亜矢って、なんでもわかってるのかな?

…助かったかも。

昼休み…

捕まった。

亜矢は、数人に協力させて 私を拉致したっ。

亜矢

おとなしくしていれば命だけは助けてやる

とか言って、教室の後ろで、メイク道具を広げはじめた。

果歩

ひー

亜矢

暴れると、パンダになるわよ

…観念しましょう…

数分後…

亜矢

でーきたっ!どう?

モブ

果歩、つけまナシでもイケるー!

私の左腕を押さえてたリサが言った。

モブ

ホントだ!まつ毛長い!

同じく右腕を押さえてたミキが言った。

亜矢

ほら、果歩、見て

亜矢が鏡を目の前に置いた。

違和感。

かわいくないとは言わないけど、なんか、作り物みたいな。

拉致隊3人は満足そうだけど。

果歩

えーっと、もういいかな?

亜矢

なんで?気に入らない?

亜矢が不満そうに言う。

果歩

だって、カワイイかどうかわかんないよ。テレビで見たことある顔みたい

亜矢

それって、『テレビに出るレベルのアイドルくらいにはカワイイ』ってことじゃないの?

果歩

うん、そうかも。でも、いいや、ゴメン

同じく不満そうだったリサが

モブ

あ、慎吾、ちょっと見てよ!

と慎吾を引っ張ってきた。

リサお願いっ!空気読んでっっ!

モブ

ね、今日の果歩、カワイイでしょ?いつもと違って!

ミキが言った。

慎吾

…キモイ

果歩

え?

慎吾

気持ち悪りーって言ってんの!

亜矢

ちょっと!慎吾!

亜矢が怒鳴る。

慎吾

キモイよ。果歩じゃないみたいだ

もうダメだ。

朝からこぼれそうになってた 不安な気持ちが

涙と一緒にあふれ出す。

教室を飛び出して、トイレに駆け込んだ。

どのくらい洗ってただろう。

いいかげん 目の周りが擦れて痛くなってきた。

さっき亜矢が

亜矢

ごめんね

って、小さく言って、 タオルを置いてった。

鏡を見たら、 すっかりメイクは落ちていた。

髪も袖もビショビショ。

トイレから出ると、 瑞樹とバッタリ会ってしまった。

決壊したダムのように、 涙が溢れて止まらなくなった。

瑞樹

どうしたっ!果歩?

果歩

瑞樹いー。エ〜ン。

号泣って、ホントにエ〜ンって言っちゃうんだね

瑞樹に連れられて、 トイレ横の階段を上って、

屋上の入り口まで来た。

瑞樹は、私が泣き終わるまで、 ずっと黙って横に座ってた。

瑞樹

終わった?涙

果歩

瑞樹

どうした…って聞くか?

果歩

なにそれ

瑞樹

言いたくないとか、あるだろ

今日の瑞樹は、優しい。

果歩

…慎吾にキモイって言われた

また泣きそうになる。

瑞樹

え?

それから、さっきのコトを、 瑞樹に話した。

瑞樹

なるほどな

瑞樹は、フーッとため息をつくと、

瑞樹

いいか、果歩

果歩

うん?

瑞樹

慎吾は国語が苦手だろ?

果歩

う、うん?

瑞樹

アイツは、語彙が異様に少ないんだ

果歩

ゴイ…?

瑞樹

ボキャブラリーだよ。ボキャ貧てやつ

果歩

あ、うん

瑞樹

だからな、自分の中で処理し切れないもの見ると、何でも『キモイ』『ヤバイ』なんだよ

果歩

あー

瑞樹

亜矢にどんな化粧されたのか知らねーけど、きっと慎吾の中にない果歩だったんだよ

納得……。

瑞樹は、もうイジワルじゃなかった。

とても、とても優しかった。

ずっと昔から、そうだった。

泣く時は、 いつもそばにいてくれた気がする。

瑞樹

髪、切ったのか

果歩

おかしい?

瑞樹

似合ってるよ

瑞樹の手が頭にのった。

瑞樹

でも、約束の長さだな

果歩

うん。約束だからね

瑞樹

…次は切ってもいいぞ

果歩

え?

瑞樹

約束は、もうおしまい。
ずっと守ってくれて
サンキュ

果歩

うん…?

瑞樹は笑ってた。

約束って、終わりがあるんだね。

それが恋だとわかるまで

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