あの日心の儘走ったのは、無駄じゃ無かった。
依
何時も、ずっと、独りで、
依
哀しい。
私は只、夜、虫も居ない道端で嘆いているだけ。
憑
辛い、哀しい、憎しみ。
依
?
憑
消えぬ、癒えぬ、心の傷。
憑
僕には分かる。
依
…
依
愛して欲しい。
私は何も考えず、其の人に自分の強い願いを云った。
憑
傷は、癒えぬが、分かち合える。
憑
苦しくなるだけだとしても。
憑
愛されたいと言う願いを、此方も云わせて欲しい。
話の噛み合わない、不思議な人。
依
(でも…)
依
傷は、共有出来る、
依
なら、
依
愛し合う事は、出来る?
憑
…心さえ、有れば。
其の時に、私の心臓は動き出した。 有り得ない程速く。
依
え…
依
愛して呉れるの?
憑
望むなら。
依
本当に?
憑
此方の願いも聞いて呉れるなら。
単語で話している様な口調。心地良かった。
依
願い、聞かせて。
憑
僕も、
「愛して欲しい。」
依
…
憑
…
無言の時間は長かった。居心地が悪かったが、気持ち悪くは無かった。
依
望む、なら。
返事が弱々しく成ってしまった。 相手こそ無表情だが、目に輝く物が見えた。 美しかった。
憑
有難う。
感情をいっぱいに詰め込んだ様な声。
依
私は、依(ヨル)。
憑
僕は、憑(ツキ)。
何方も名前の所だけ声が小さくなった。 大嫌いな、自分の名前だから。
憑
良い、名前。
憑
美しい。
憑は言い表せない物をやっと、口にした様な声色だった。 少し冷たい、穏やかな声。
依
有難う。
夜で相手の顔が良く見えない。 今、お互い愛し合えているだろうか。