短編集

堂村璃羽

" 日没 "

ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ

君がいない部屋は散らかるし

片付ける気も起こらないし

ｶﾞﾁｬ(玄関開)

君を呼ぶ口実にしたいから

でも君は僕とは居られないし

広く感じるソファで夜が

明けるのを待ってる様子は

ｶﾀﾝ(傘立てに傘を入れる音)

見られたくないし、知られたくない

ぶっちゃけ、

僕の愛に気付いてそうだよね笑

抱いたあとの"愛してる"と

ハグの数が真の愛を示す

見せる君への涙の価値は

昔とは違って無くなったから

背中を向けるベッドの上

君のスマホは月明かりのよう

君の顔は照らしきっても

僕の心は沈みきって暗いまま

キスをした

数え切れないほど

週末に溶けてく

淡い、淡い、淡い、

奇跡が。

もしもあの日

今日を知っていたら

いつもよりも長く、

抱きしめていたんだろう。

気持ち的にキツくなった時

ベランダ来ちゃう癖、治さないと

でもやっぱり景色綺麗だなぁ

大切な人が出来たんだ

ごく普通な会話で日は昇った

タンスの中の君の洋服が

小さなキャリーに迎えられてく

そして...

君からの別れの言葉で

君が居なくなるとやっと気付く

もう抱くことは出来ないって思いより

最後の雨が頬を伝う

"君の恋人はどんな人？"

って聞くと君は僕に一言

"あなたには理解出来ない人。"

ｶﾞﾁｬﾝ(扉閉)

その言葉とドアの音が部屋に響く

キスをした

数え切れないほど

週末に溶けてく

淡い、淡い、淡い、

奇跡が。

もしもあの日

今日を知っていたら

いつもよりも長く、

抱きしめて居たんだろう。

彼と沢山交わった部屋

でももうそんな彼の面影はなく

僕の涙だけが残っていた

彼への気持ちを

何処へ追いやればいいかも分からず

僕は、彼の匂いが染み込んだ

タオルを握りしめ、

一人で泣いていた

徐にスマホを手に取り、

僕は彼の連絡先を

迷わず消去した

そして思い出した

彼と偽りの愛を作っていた日没を

...ごめん、

好きになってごめん

いつの間にか愛してた

...ごめんね。

僕の分も含めて、

沢山幸せになってね。