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食事を終えてから30分後、ぼく達は屋上に集まっていた。
他の関係ない生徒達も、食後で特にやることもないからか、結構な数が見に来ていた。
アミ戦がどういうものなのか、今後のためにも実際に見ておきたいという気持ちもあるのだろう。
ガイド妖精はずっと屋上で待っていた。
ユトリとメイカが、ガイド妖精の前に立つ。
ガイド妖精
ユトリ
メイカ
ユトリ
メイカが食い気味に名乗りを上げたので、ユトリが後から名乗り直した。
すでに気迫で負けている。
属性は2人とも、地《テラ》か。
ガイド妖精
ユトリとメイカが立っている場所を起点に、直線400メートルの地面が1メートルほど迫り上がった。
【バウンド短距離400】 ・距離400メートルの短距離走。 ・コースはやわらかく、力を込めると波打つ。 ・先にゴールに着いた者に、1ポイント。
アルク
あの時は、誰かとの競争ではなく、ただゴールに到着すればよかったのだけだけど。
シシロウ
シシロウが説明してくれた。
ショウリ
迷宮内を歩いて問題を通ったから、ショウリ達は別のルートだったみたいだ。
アルク
アルクの言う通りだ。
入学試験の時は、ユトリの不完全な魔法のおかげでゴールまで行けた。
今のユトリは魔法具《マギアツール》と魔法で物を自在にかたくできるから、あの時と同じ手段で400メートルを走破できる。
ガイド妖精
ガイド妖精
ガイド妖精の号令で、アミ戦がスタートした。
スタートと同時に、ユトリが魔法具《マギアツール》のハンマーを出し、自分の前のコースを叩く。
ユトリ
ユトリはかたくなったコースを走っていく。
が、5メートルほどで足を止めた。
もう一度、ハンマーでコースと叩いて、また5メートルほど進む。
ナミスケ
アルク
アルクの想像通りのようで、ユトリは走っては、足を止めてコースを叩くをくり返している。
追ってくるメイカの様子も気になるようで、チラチラと後ろを振り返りながらなので、さらに進みが遅くなっていた。
メイカの方は、やわらかいコースをバランスを取りながら、速歩き程度のペースで進んでいる。
ナミスケ
ホマレ
戦況を見てナミスケ、ホマレは、早くもユトリの勝ちを確信している。
アルク
アルクが言うように、少しずつユトリとメイカの差が縮まってきている。
その様子は、ちょっと違和感がある。
ユウゴ
以前、ユトリにハンマーを持たせてもらった時、ぼくは肩が外れそうなほどの重量を感じた。
だけど、ユトリは軽々と使いこなしていた。
シシロウ
シシロウが説明してくれた。
ユウゴ
ぼくとアルクは魔法具《マギアツール》を持っていないから、知らなかった。
ショウリ
ショウリがシシロウにたずねる。
シシロウ
シシロウ
ショウリ
普通に合格していたのかと思ったから、ちょっとだけショウリに親近感がわいた。
アルク
アルクが首を傾げる。
重さを感じず使っても疲れがほとんどないなら、ユトリにとっては普通の400メートルの短距離走と変わらないはずだ。
それにユトリは華奢に見えるけど、素潜りで魚を捕まえるほどにアクティブだから、運動も苦手ではないはず。
アルク
ちょいちょい後ろを振りかえって、メイカの様子を確認するのも、それなら合点がいく。
ただ足を止めてメイカを先にゴールさせてはあからさまだから、少し進んでは足を止めてを繰り返し、メイカが抜けるチャンスを作っているんだ。
ユウゴ
ホマレ
ユウゴ
9歳というと小学校3年生くらいか。
シシロウ
事情にくわしいシシロウが説明する。
ショウリ
ショウリが心配そうに言う。
コースの真ん中あたりの200メートル地点で、ついにメイカがユトリに追いつき、ユトリに向かって口を開く。
メイカ
ユトリ
突然の悪態に、ユトリは何も言い返せずに息をのんだ。
ぼく達をふくめたギャラリーもシーンと静まり返る。
メイカが両手を地面に向かってかざすと、足元にスケボーがあらわれた。
あれはメイカの魔法具《マギアツール》か。
スケボーに足を乗せると、一気に走り出した。
メイカ
やわらかいコースに力が加わり、大きく波打つ。
メイカは波に逆らわず、むしろ波打つ力を利用して、サーフィンのように乗りこなしていく。
あっという間に残り200メートルを走破して、ゴールに到着した。
ガイド妖精
ゴールで振り返ったメイカは、ショウリに向かって笑顔でピースサインを見せた。
ユトリは同じ場所で立ち尽くしたまま、いつの間にか負けていた。
ユウゴ
ショウリ
ショウリ
ショウリ
ショウリ
アルク
アルクが冷や汗を浮かべて、ゴールのメイカに視線を送っていた。
メイカを小さい子供だと思って見ていた他の生徒達も、顔をこわばらせている。
多分、ぼくも同じ表情をしているだろう。
ガイド妖精により、メイカにポイントが1入り、ユトリにペナルティが1付いたことが告げられる。
コースを元の屋上の地面に戻し、ガイド妖精は姿を消した。
勝負を終えた、ユトリとメイカが向かい合う。
ユトリ
ユトリがメイカに向かって深々と頭を下げる。
メイカ
メイカが不機嫌そうに言葉を返す。
ユトリ
メイカ
ショウリ
ショウリがメイカの頭を軽く小突いた。
ショウリ
ショウリ
メイカ
メイカが急にしおらしくなり、ユトリに頭を下げかえした。
ユトリ
ユトリもどう返事をしていいのかわからず、かわいた笑いがもれた。
一緒にいるとまたケンカになりそうなので、ショウリがメイカをつれて先に屋上を出ていった。
ユウゴ
ユトリに話しかけたけど、これであっているんだろうか。
ショウリならもう少し気の利いたことを言えるんだろうな、と思いながら、ユトリの返事を待つ。
ユトリ
ユトリが顔を上げる。
ユトリ
ユトリ