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今日はいろいろあって疲れた。
まだ入学式があった初日だというのに、本当にいろいろあった。
よくよく思い返してみれば、昨日の入場行進のフィールドビンゴから、まともに休んでいない気がする。
晩ご飯も食べ終わったし、あとはシャワーで体を洗って、すぐにでも寝たい。
部屋にシャワールームがあるから、順番で使うことになるだろう。
その順番を決めるのにもめて、またアミ戦にならないことを願いながら、みんなに話しかけた。
ユウゴ
ショウリ
ショウリに、そう話を切り返された。
ショウリ
ショウリ
シシロウ
ナミスケ
シシロウもナミスケも乗り気で立ち上がる。
ユウゴ
ぼくの左肩には大きな傷がある。
幼い頃にキャンプ場の林の中で魔物に咬みつかれた傷で、左肩から左胸にかけて、深く歯型が刻まれている。
ずっとからかわれたり、気味悪がられたりしていたので、コンプレックスになっている。
ショウリ
ショウリに手を引っ張られっる。
ユウゴ
ぼくよりショウリのほうが力が強くて、あっさりと立たされ、背中に回り込まれたかと思うと、両手で押されて部屋から外に出されていた。
ナミスケ
今後の生活で1番スタンドプレイをしそうなナミスケに、苦言を呈された。
ぼく達の部屋は3階建ての2階で、出るとすぐ目の前に上下階に行ける階段がある。
下に降りれば1階の食堂などがある共有スペースや外に出る玄関に、上に行けば屋上に出ることができる。
最初はひどい部屋に割り当てられた気がしたけど、生活する分には便利だ。
ストリクト先生
部屋を出てすぐにストリクト先生に見つかり、軽く叱られた。
ぼく達の部屋のとなりが教職員の宿直部屋になっているんだけど、出入口のドアを開けて、ひとりがけのソファを外に向けて新聞か何かを読んでいた。
宿直は1週間交代らしいけど、初週なので主任のストリクト先生がやるらしい。
ぼく達は、いろいろあったせいで、すでにストリクト先生から目をつけられている節がある。
ショウリ
ショウリがストリクト先生に声をかける。
それで付いて来られても困るんだけど。
ストリクト先生
ショウリ
ショウリが軽く頭を下げたので、ぼく達もストリクト先生に頭を下げてあいさつをしてから、階段を降りた。
1階まで降りてストリクト先生に声が届かない所まで来てから、ナミスケがショウリに話しかけた。
ナミスケ
言い方は汚いけど、ぼくも同じこと思った。
ショウリ
ショウリ
ショウリ
ナミスケ
ショウリ
ショウリ
シシロウ
ショウリ
シシロウの質問にも、ひょうひょうとこたえるショウリ。
彼女(?)のメイカもクセが強い女の子だけど、ショウリもさわやか少年に見えて一筋縄じゃいかないようだ。
そんな話をしているうちに、玄関と食堂の前を通って、大浴場に到着した。
脱衣所に入ると、他にも20人ぐらいの生徒がいた。
みんな腕や足など体のどこかに、獣に引っかかれたような傷がある。
シシロウ
シシロウが靴下を脱ぐと、右足のスネに大きな切り傷があった。
魔物に咬まれたり引っかかれたりすると、その傷から魔力が入り込み、やがて自分の力になる。
そうして魔法使いになる下地が作られる。
つまり、アミキティア魔法学校の生徒であれば、体の何処かに目立つ傷があるということだ。
シシロウ
ぼくがお風呂に行くのを渋っていたのは、傷を見られたくないからだと見抜かれていたみたいだ。
ショウリ
ユウゴ
ショウリが上着を脱ぐと、背中の傷があらわになった。
深くえぐれた3本の傷がななめに入っている。
ぼくの左肩の傷よりも、ずっと深くて大きい。
だけど、少し変だ。
3本の傷は右肩から左腰にかけて入っているけど、真ん中が途切れている。
つなげると3本の線になるけど、正確に言うと短い6本の短い傷があった。
ショウリ
ユウゴ
無意識のうちに、ショウリの傷をジロジロ見て観察していた。
なんでこんな傷になったのか気になるけど、深い話になりそうで聞いてはいけないと思う。
ぼくの傷をからかってきた子達も、こんな気持ちだったんだろう。
ショウリ
こっちの気になるオーラを察したショウリが、みんなに説明するように話し始めた。
ショウリとメイカは地方都市の同じ団地の棟に住んでいた。
団地には他に歳の近い子供がいなかったので、幼い頃から、よく2人で遊んでいた。
そんなある日、団地内の公園に真っ黒な野良犬が迷い込んできた。
今から思えば、その野良犬が魔物だった。
吠え続ける野良犬に、メイカは恐怖して泣き続け動けない。
その泣き声に対して、野良犬はさらに吠え続ける。
昼間だったこともあり、周りに大人はいなく、助けは来ない。
走って逃げたら追いかけてきてかえって危険だと思ったショウリは、とにかくメイカだけは守ろうと、メイカを抱きしめて野良犬からかばった。
恐怖するメイカは、泣きながらもショウリの体に身を隠す。
よりしっかりとショウリにくっつき、野良犬から隠れようとして、右腕をショウリの背中にまわして抱きついた。
そこに野良犬が飛びかかり、右前足の鋭い爪を振り下ろす。
ショウリの右肩、メイカの右腕、ショウリの左腰と、3本並びの深い傷をつけた。
ショウリ
ショウリ
ショウリは少し笑いながら、話を締めた。
ぼくがキャンプ上で魔物に襲われた時と、状況的には似ている。
ただ、ぼくは思い出すだけでも怖いから、人に話したことはない。
ユウゴ
ショウリ
ショウリ
ナミスケ
ナミスケが深くうなずく。
それでもメイカは少しヤンデレっぽいところがある気がするけどね。
シシロウ
ユウゴ
シシロウ
十二月三十一日《ひづめ》家(アルクの家)では、一晩魔物と蔵に閉じ込められると言っていたから、かなりソフトなやり方だ。
ナミスケ
ユウゴ
今の話を聞いて多少は気が楽になったので、服を脱いで左肩の傷を見せた。
ユウゴ
服は全部脱いだのに、目立つ傷は見当たらない。
ナミスケ
ナミスケ
何かを思い出したようで、首をくいっと上げて、こっちに見せてきた。
ナミスケ
ナミスケ
シシロウ
シシロウが断定したってことは、間違いないんだろう。
ぼくは病院のベッドで、何日か生死をさまよったんだけどな。
ショウリ
ショウリは特に気にする様子もなく、洗い場に歩いていった。
お風呂は湯船も温泉のように広くて、とても気持ちよかった。
傷のコンプレックスも少しだけ解消されたし、みんなと入りに来てよかったと思う。
体を拭いたあとで、シシロウは髪をドライヤーで乾かしていた。
シシロウ
ユウゴ
ナミスケ
ぼくとナミスケは先にパジャマ(学校が用意してくれた部屋着用のジャージ)に着替えずみだ。
シシロウ
魔法の使い方は大雑把なのに、こういうところだけは細かい。
ショウリ
ショウリは手グシで濡れた髪を直している。
シシロウ
ショウリ
よく見るとショウリの髪の毛からみるみる水気がなくなり、フワッとしてきた。
シシロウ
ショウリ
そういえば、アルクも風《アエル》だから、手のひらから温風を出していたな。
不慮の事故でスカートの中を見てしまい目を乾かされそうになったことを思い出して、少し顔が熱くなった。
ショウリ
ユウゴ
すっかり髪を乾かしたショウリに話しかけられ、上ずった声で返してしまった。
かんぐられることはないと思うけど、恥ずかしい。
ナミスケ
ナミスケが右手に魔法具《マギアツール》のダガーナイフを出した。
ユウゴ
ナミスケ
ナミスケの髪から無数の水滴が飛び出した。
ナミスケの魔法の属性は水《アクア》で水を操ることができる。
髪の毛から離れた水滴を操って、洗面台の排水口に向かって落とした。
ナミスケ
満足そうな顔で水気が取れてサラサラになった髪を手で触れる。
ダガーナイフを持ったままで。
ゴボゴボっと言う音と共に、排水口から水が噴水のように吹き出した。
洗面台の前に座っていたシシロウに頭から汚水が降り注いだ。
ナミスケ
どうやらダガーナイフを持った手を動かすと、意志とは関係なくに水を動かしてしまうらしい。
シシロウ
ナミスケ
シシロウはもう一度お風呂に体を洗いに行った。
シシロウが体を洗い直して戻ってくるのを待っていたら、すっかり遅くなってしまった。
シシロウ
シシロウのあたりがちょっと強い。
ナミスケ
さすがのナミスケもやっちまったと思っていたらしく、一緒に待っていた。
ホマレ
メイカ
女子風呂の出入口から、ドライヤーを持ったホマレとビチャビチャの長い髪を引きずったメイカが飛び出してきた。
メイカはTシャツとジャージズボンだが、ホマレはバスタオルを巻いただけの格好だ。
シシロウ
ホマレ
シシロウ
メイカを追いかけているうちに、脱衣所の外に出ていたのに気づかなかったみたいだ。
ホマレ
ホマレは顔を真赤にして、女子風呂に戻っていった。
ショウリ
メイカ
メイカがショウリに正面から抱きついた。
髪の毛が濡れっぱなしだから、廊下が水浸しになっているし、ショウリのジャージも濡れてしまっている。
過去の話を聞いたあとだと、この溺愛っぷりもわからなくもないけど、やっぱり少しは周りを見たほうがいいと思う。
ショウリ
ショウリ
メイカ
ショウリはメイカの頭を両手で包むように持つと、手のひらから温風を出して髪を乾かし始めた。
髪が長いから時間はかかっているけど、手グシですきながら温風を送って、毛先まで乾かしていく。
メイカ
ショウリ
メイカ
ホマレ
髪を乾かしジャージに着替えたホマレが、脱衣所から出てきた。
シシロウ
そういうシシロウも、結構向こう見ずだと思うけど。
ホマレがシシロウの顔を見て顔をしかめる。
ホマレ
シシロウ
ホマレに言われたシシロウが、ナミスケをにらみつける。
さっきまで排水のにおいがしていたとは言いたくないだろう。
ユトリ
ホマレに続いて、ユトリも脱衣所から出てきた。
ユトリも部屋着用のジャージを着ている。
まだ授業は始まっていないけど、みんなで同じ服を着ていると、学校なんだなって感じがする。
それよりも目を引いたのが、ユトリの顔だった。なんと前髪を上げてドライキャップでまとめていた。
いつも前髪に隠れている両目だけでなく、隠していたおでこの傷もあらわになっている。
ユトリ
ユトリ
ユウゴ
ユトリも、自分以外の魔力根がある生徒を見て、傷のコンプレックスが少し癒えたみたいだ。
アルク
最後に出てきたアルクが付け加える。
ユウゴ
アルク
ユトリ
アルク
アルクが手グシで髪をすきながら、手のひらから出る温風で髪を乾かしている。
風《アエル》の魔法使いのあるあるなんだろうか。
ショウリ
アルク
メイカ
メイカ
メイカが体を震わせながら、アルクの顔を見上げる。
メイカ
震える唇でそう言うと、走っていってしまった。
ホマレ
ユトリ
アルク
女子は女子で大変そうだ。