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匿名海老fly
3,324
IKA
97
桜空

800
澪の朝は静かだ。
笑顔を貼り付けるのは慣れた作業。
挨拶も、相槌も。
教科書を開く手つきも完璧に整えられている。
でも、心は無音のまま。
耳に入る声。
わざと聞こえるように言っているのも知ってる。
無視するのも慣れている。
反応したら負け。
彼女達は反応を餌にして、笑うのだから。
(ここでも同じ…か)
みおの心はいつからか諦めでいっぱいだった。
中学の時たった一度信じた友達に裏切られて、
笑い者にされてから人間関係は演技になった。
完璧な仮面を被り、誰にも見せずに過ごす術を覚えた。
でも、それを見透かしてくる目がひとつだけあった。
放課後。
いつものように無人の体育館。
ベンチの隅に座るひなたの隣へ、澪は黙って腰を下ろす。
今日は何故か手にボールが握られていた。
日向 翔陽
ポツリと漏らされた言葉。
それだけで、澪の胸が少しだけ軋む。
霧島 澪
日向 翔陽
日向 翔陽
手のひらの感覚を思い出すように、ボールをゆっくりと撫でるその仕草。
ひなたは今もバレーを、コートを
忘れていないのだとわかった。
日向 翔陽
唐突な問いに澪は視線を逸らした。
霧島 澪
日向 翔陽
霧島 澪
霧島 澪
しばし沈黙が流れた。
そのあと彼は少しだけ笑った。
日向 翔陽
霧島 澪
日向 翔陽
日向 翔陽
日向 翔陽
彼の横顔はどこか遠くを見ていた。
今の自分と、かつての自分の間にある、
深くて長い溝を見つめているようだった。
澪もまたそっと目を伏せる。
自分も同じだ。
今の自分が本当の自分なのかすらもう分からない。
日向 翔陽
霧島 澪
日向 翔陽
その一言に心臓が飛び跳ねた。
喉がきゅっと締め付けられて、言葉が出ない。
霧島 澪
やっと絞り出した言葉はかすれていた。
でも日向は何も言わずただ小さく頷いた。
そしてぽつりと呟いた。
日向 翔陽
その声には少しだけ震えがあった。
澪は思った。
この人なら少しだけ、檻の中から
手を伸ばしてみてもいいかもしれない。
そう思えたのは生まれて初めてだった。