コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
澪の朝は静かだ。
笑顔を貼り付けるのは慣れた作業。
挨拶も、相槌も。
教科書を開く手つきも完璧に整えられている。
でも、心は無音のまま。
耳に入る声。
わざと聞こえるように言っているのも知ってる。
無視するのも慣れている。
反応したら負け。
彼女達は反応を餌にして、笑うのだから。
(ここでも同じ…か)
みおの心はいつからか諦めでいっぱいだった。
中学の時たった一度信じた友達に裏切られて、
笑い者にされてから人間関係は演技になった。
完璧な仮面を被り、誰にも見せずに過ごす術を覚えた。
でも、それを見透かしてくる目がひとつだけあった。
放課後。
いつものように無人の体育館。
ベンチの隅に座るひなたの隣へ、澪は黙って腰を下ろす。
今日は何故か手にボールが握られていた。
日向 翔陽
ポツリと漏らされた言葉。
それだけで、澪の胸が少しだけ軋む。
霧島 澪
日向 翔陽
日向 翔陽
手のひらの感覚を思い出すように、ボールをゆっくりと撫でるその仕草。
ひなたは今もバレーを、コートを
忘れていないのだとわかった。
日向 翔陽
唐突な問いに澪は視線を逸らした。
霧島 澪
日向 翔陽
霧島 澪
霧島 澪
しばし沈黙が流れた。
そのあと彼は少しだけ笑った。
日向 翔陽
霧島 澪
日向 翔陽
日向 翔陽
日向 翔陽
彼の横顔はどこか遠くを見ていた。
今の自分と、かつての自分の間にある、
深くて長い溝を見つめているようだった。
澪もまたそっと目を伏せる。
自分も同じだ。
今の自分が本当の自分なのかすらもう分からない。
日向 翔陽
霧島 澪
日向 翔陽
その一言に心臓が飛び跳ねた。
喉がきゅっと締め付けられて、言葉が出ない。
霧島 澪
やっと絞り出した言葉はかすれていた。
でも日向は何も言わずただ小さく頷いた。
そしてぽつりと呟いた。
日向 翔陽
その声には少しだけ震えがあった。
澪は思った。
この人なら少しだけ、檻の中から
手を伸ばしてみてもいいかもしれない。
そう思えたのは生まれて初めてだった。