TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

俺の……心臓をあげるよ

一覧ページ

「俺の……心臓をあげるよ」のメインビジュアル

俺の……心臓をあげるよ

第1話 - 俺の……心臓をあげるよ

40

2020年09月05日

#ミステリー

#SF

#ファンタジー

#高校生

#未来

#フィクション

wat/SuZu

シェアする

この作品はいかがでしたか？

40

wat/SuZu

プロフィール

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール

テラーノベルのスクリーンショット

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

トップ
SF
俺の……心臓をあげるよ
#1 俺の……心臓をあげるよ / wat/SuZu

ホーム

検索

通知

本棚

2165年

夏休み中の、とある高校生たちの物語

ミノル

俺、もう長くないんだ

ケン

ケン

……え？

ミノル

体育の時、俺たまに胸痛起こしてたろ？

ケン

ああ、そんなことあったな

ケン

俺がミノルを保健室に連れて行ったことがあるような気がする

ミノル

そう、それ

ミノル

年に何回かだったけど、

ミノル

発作みたいな感じで、たまーに胸に痛みがあったんだ。

ミノル

ミノル

実はあれ、不整脈を起こしていたから、心臓が痛かったらしい

ケン

…不整脈は、いつ分かったんだ？

ミノル

健康診断の時たまたま不整脈を起こしていて、

ミノル

精密検査したら、生まれつき心臓病があった、って分かった

ケン

ケン

そうだったのか……

ミノル

だから、これから病院に入院になるんだけど

ミノル

病院のベッドが空いたとしても、適合するドナーが現れなきゃ

ミノル

ミノル

俺は、死ぬ。

ケン

ケン

……そんなの、嫌だ

ミノル

俺だって、嫌だよ。

ケン

なあ、ミノル

ミノル

何だ？

ケン

心臓移植以外、方法無いのか…？

ミノル

それが……

ミノル

俺の場合は、それしか無いんだってさ。

ケン

ケン

そうか……

ミノル

こんなに医療が発展したのに

ミノル

おかしいよな…？

ケン

（もし、ドナーが見つかったとしても）

ケン

（今の時代でも、心臓移植はリスクが高い。）

ケン

（拒絶反応で、死んでしまうことだってある……）

ミノル

ケン？

ミノル

どうした？

ケン

あ…いや…

ケン

ごめん、あまりにも、びっくりした

ミノル

そうだよな。

ミノル

ミノル

実は、俺も全然実感無いんだ。

ミノル

家族ばっかり、慌ててる。

ケン

そうか……。

ケン

ミノル、ごめん

ケン

俺、何て言葉をかけたらいいのか分からなくて…

ミノル

いいんだよ

ミノル

お前に話を聞いてもらうだけで十分だ

ケン

ミノル…

ミノル

また入院する前、連絡する

別の日

ケンの部屋

ケン

ミノル…

ケン

俺、ミノルに本当のこと、言わなきゃならないよな…？

ケン

ケン

あいつには、一生秘密にするつもりだったのに……

プルルルルル

ケン

ミノルからだ

ケン

普通に、電話出なきゃ

ケン

ケン

…よし！

ミノル

もしもし、ケン？

ケン

おお、ミノル

ケン

どうした？

ミノル

…俺、今日から✗✗病院に入院したんだ。今は、通話可能区域から電話してる

ミノル

循環器科の病棟のベッドが、ようやく空いたから…

ケン

…そうか

ミノル

あとは、ドナーが見つかれば手術なんだけど、

ミノル

ドナーが現れる時は

ミノル

誰かが、死ぬ時…なんだよな

ケン

…そうだな

ミノル

俺、分からないよ。

ミノル

助かるか分からない手術を受けるなんて。

ケン

ミノル……

ミノル

だって、心臓の手術って

ミノル

1/4の人に拒絶反応が出たり、後遺症も残るかもしれない、って言うじゃないか

ケン

拒絶反応も、後遺症も出ない人、いるよ

ミノル

ミノル

お前、簡単に言うなよ！

ミノル

どうせ

ミノル

他人事だと思ってんだろ？！

ケン

……思ってないよ

ミノル

嘘つき！

ケン

嘘じゃない

ミノル

何が嘘じゃないって言うんだよ？！

ケン

（ミノル…相当参ってるな）

ケン

（そりゃそうだ）

ケン

（自分が助かるには、他の人の心臓が必要なんだ）

ミノル

ミノル

何とか言ってみろよ！！

ケン

…ミノル、お前とは小５からの付きあいだったよな

ミノル

ミノル

それが何だよ…

ケン

俺がこの街に引っ越してくる前

ケン

何してたか、知らないか？

ミノル

ミノル

確か、お前の爺さんが亡くなって、

ミノル

こっちに引っ越してきたんだろう？

ミノル

それが、どう関係あるんだよ

ケン

俺

ケン

お前と同じで、

ケン

昔、心臓が悪かったんだよ

ミノル

ミノル

……は？

ケン

俺も、心臓の手術をした

ミノル

待てよ

ミノル

ミノル

それって、

ミノル

心臓移植したってことか？！

ケン

そうだ

ケン

ケン

でも、俺の場合は特殊だった

ミノル

…特殊？

ケン

そうだ

ケン

俺は、とある病院で治験を依頼された

ミノル

治験？新薬か何かか？

ケン

「人工心肺」の治験だ

ミノル

ミノル

人工心肺の、治験…？

ケン

当時、「R社」によって秘密裏に行われた、非人道的な研究・治験

ケン

それに協力したのが、俺だ

ミノル

な…何を言ってるんだケン

ミノル

SF映画の見過ぎで、頭おかしくなったか？？

ケン

本当の話だ。

ミノル

………………………

ケン

お前には、

ケン

親友には、絶対に話したくなかった。

ミノル

…何故、今になって話したんだよ？

ケン

ドナーに心臓をもらうくらいなら、自分が死んでしまいたい。

ケン

俺はそう思っていた。

ケン

でも、当時幼かった俺の意思は反映されず、親の意思により病院に入院し、ドナーを待っていた。

ミノル

俺と、似てる…

ケン

お前の辛い気持ち、俺にも覚えがあるから…話さずにはいられなくて…

ミノル

ケン…

ケン

当時、人工心肺の治験に協力した俺は、その研究をしていた「R社」からこう言われたんだ。

とうとう、ドナーのいらない心臓が出来た、と。

本来なら高額だが、今回は治験という扱いで無料で手術出来る。

「やってみませんか？」

ケン

俺は、迷わかなった

ケン

ドナーを必要とせず、手術して助かるのなら、そうしたい。

ケン

俺が元気になれば、毎日泣いていた父さんと母さんを笑顔に出来る。

ケン

元いた学校にも、また通えるようになるだろう。

ケン

それなら、迷う必要なんかない。

ケン

そう思い、書類にサインした。

ケン

…それが、間違いだった

ミノル

…え？

目が覚めた時から、違和感はあった

医師

ケンさん、目が醒めたみたいだね

ひやり。

医師

手術は大成功だよ！

自分の体の全てが、冷たい気がした。

医師

どうしたの？キョロキョロして？

ケン

体が、冷たい…！

医師

医師

…そんな訳ないけどな

ケン

ケン

……え？

医師

だって

医師

君の体

医師

医師

全身、サイボーグにしたんだから

医師

今までみたいな体の感覚なんて、ないはずだよ？

ケン

…は？！

医師

心臓を機械に変えるのなら、

医師

それに耐えられる強い体（うつわ）を用意しなくちゃ。

医師

今どき、拒絶反応で苦しむなんて、ナンセンスでしょ。20世紀じゃあるまいし。

ケン

何言って…？

医師

免疫抑制剤を飲むより、体ごと生まれ変わって全身が丈夫になったほうが、今後の人生、得するでしょ

ケン

な…

ケン

そんなこと、許可していない！

医師

君が許可したんだよ〰？

医師

手術をする前に、同意書渡したよねぇ？？

医師

小学生でも分かる漢字しか、使ってないよー？

医師

ちゃんと読まなかった、君が悪いのさ！あはは！

見た目こそ、今まで通りだが、

俺はこの手術のせいで、全身の肉体が機械になってしまった。

ケン

頼んでない…

医師

は？

ケン

こんな状態にしてまで生かせて欲しいとは、

ケン

頼んでないんだよ！！

医師

でも、君がこんな姿になっても、

医師

君の親は喜んでるよ

医師

ほらね！

病室についているガラス窓の向こうにいた両親は、明らかに喜んでいた。

ケン

ケン

嫌だ。

ケン

嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ

ミノル

そんなことがあったのか？！

ケン

…そうだ。

ケン

あれから立ち直るまで、かなりの時間が必要だった…。

ミノル

（そういや、ケンはこっちに引っ越してきた時、今よりも暗かったかもな…）

ケン

たとえ見た目が普通でも、

ケン

怪我をしたり、転ぶと血が出ても、

ケン

そう「造られた」サイボーグなのであって、

ケン

もう俺は、あの頃のような、全うな人間ではない。

ミノル

そんなことない！

ミノル

お前は、人間だし、友達だよ！

ミノル

何が、あっても…

ケン

…うん

ケン

ミノルなら、そう言ってくれると信じていた

通話中、ガサガサとノイズが入る。

ミノル

ケン？

ケン

その言葉を聞けただけでも満足……ｷﾞｷﾞｨ……！さ

ミノル

一体、何してるんだ？！

ケン

ミノル…俺…………心……を

ケン

お前…あげ………

ミノル

ミノル

え？！

ケン

明日、病院に持っていくから

ミノル

は？！

ミノル

一体、何を？！

ツー　ツー

ミノル

電波が悪かったのか？

ミノル

切れたぞ…

ミノル

ミノル

一体、何を伝えたかったんだよ…ケン…

翌日　早朝

ミノルが入院している病院

ケン

ミノル

ミノル

病室の窓からお前が見えて、びっくりしたぞ

ケン

良かった、起きてて

ミノル

トイレでたまたま目覚めただけだ

ケン

電話で言ってたやつ、持ってきた

ケンが手にしているのは、ありきたりな弁当箱だ。

ミノル

お前…この中に何が入ってるんだよ

ケン

？

ミノル

昨日の通話、最後の方、電波悪くて聞こえなかったんだよ

ケン

ああ…なるほど

ケン

じゃあ改めて、これをお前に…。

それを、開けてはいけない気がした。

ミノル

…………………

ケン

どうした？

ミノル

やっぱり、俺には開けられない

ケン

中身、何だと思ってるんだ？

ミノル

だってこれ

ミノル

ミノル

お前の、心臓なんだろ？！

ケン

ケン

………は？

ミノル

は？って、

ミノル

昨日電話で、お前が言ってたじゃんか

俺の心臓をあげる、って

ケン

ケン

違う

ミノル

はぁ？！

ケン

俺の、

ケン

祖父の人工心肺をあげる、って言ったんだよ

ミノル

な…どういうことだよ？！

脳の処理が　追いつかない。

ケン

俺の祖父が死ぬ前、遺言書にこう書いていたんだ。

ケン

「俺の体を使って、孫みたいな子供を救えるように、死後、遺体を技術提供をさせてくれないか」って

ミノル

それが、どうしてこんなことに…？

ケン

祖父が亡くなってしばらく経ったある日、「R社」の悪事が世間にバレて、治験や治療も永久凍結された

ケン

そんな治験、引き続き行う会社はないからな。

ケン

…祖父の肉体を研究し作られたこの人工心肺は、

ケン

サイボーグではなく、人間の体でも使えるように改良されていたんだ。

ミノル

もう、何がなんだか…！

ケン

この病院に、その技術がある医師がいることも、秘密裏に確認してある。

ミノル

…何でそんなこと、お前が知ってるんだよ？

ケン

治験やってた時のツテが、今でもあるんだ。

ケン

ケン

だからな、

ケン

お前は、もうドナーを待たなくていいし

ケン

拒絶反応に怯えなくて良くなるんだ

ケン

この、人工心肺を……使ってくれないか

ミノル

…はぁ？！

ケン

いきなり、こんな話ばっかりで信じられないのも分かる…

ケン

でも、本当の話なんだよ

ミノル

信じられないよ

ケン

…じゃあ、見る？

ミノル

え……？

ケン

俺の、造られた心臓

ミノル

ミノル

見ないでおくよ。

ケン

ケン

何故だ？

ミノル

ケンと、ずっと友達でいたいから…メカっぽいところは、見たくない。

ミノル

俺はこの話を聞いても、ケンはサイボーグなんかじゃなく人間だと思ってるし、これからもそう信じて、生きていきたい…

ケン

ミノル…

ケン

分かった。

ミノル

それより、いいのか？

ミノル

お前のじいさんから作られた人工心肺を、、俺か貰っちゃっても…

ケン

いいよ

ケン

俺と同じように疾患がある子供のために使ってほしいって

ケン

さんざん、祖父は話していたから……

ミノル

…そうか

ミノル

じゃあ、ありがたく使わせて貰うよ。

ミノル

それから、

ミノル

ミノル

こんな田舎の病院で、人工心肺の手術は本当にできるのか？

ケン

それは、安心してほしい

ケン

昔、「R社」にいて、治験をしていた循環器内科の執刀医がここにいるから、

ケン

これを見せたら、間違いなく手術に使うはずだ。

ミノル

ミノル

分かった

ミノル

…ところで、お前は人工心肺のメンテナンスとか、どうしてるんだよ？

ケン

それが…

ケン

サイボーグの俺は、メンテナンスフリーらしい

ミノル

はぁ？！

ケン

自己修復プログラムがある

ケン

まぁ、プログラムがあっても、いずれボディは朽ち果てるから寿命がないとは言えないが……

ミノル

（俺は人間の体に機械の心臓を入れるんだ）

ミノル

（ケンとは違って、手術が成功しても、長生きできないかもしれない…）

ケン

…この人工心肺は、体内に入れてから25年間は間違いなく持つよ。

ミノル

25年…か

ケン

今、来るか分からないドナーを待ち、術後も拒絶反応に怯えるくらいなら、

ケン

25年先が限界だとしても、俺はミノルといたい。

ケン

これを……使ってほしい

ケン

伸ばせる寿命なら、伸ばしてほしい…

ミノル

ケン…

ケン

もちろん、強制はできないからお前の判断に任せる

ミノル

ミノル

うん

ミノル

…………………そうだな。

ミノル

俺、もっとお前と一緒にいたい。

ミノル

そのために手術を、受けることにするよ！

その後、無事ミノルの手術は成功した。

ミノルは予後も良く、あっという間に退院した。

ミノル

何か、俺

ミノル

夢を見てるような気分だ

ケン

…実は、俺も。

ミノル

死にそうだったのに、

ミノル

今じゃ、こんなに元気で…。

ミノル

信じられないよ

ケン

助かって、本当に良かった。

ミノル

ああ

ミノル

ケンのお陰だ。

ミノル

ありがとう

ケン

お礼なら、祖父に言ってくれ

ミノル

ケンの爺さん、ありがとうー！

ミノルは空に向かって声を張り上げる。

ミノル

もう、こんな大声を出しても、なんとも無いんだ。

ミノル

本当に不思議だよな

ケン

ケン

そうだな

ミノル

また、二人で一緒に学校に行けるんだよな…

ミノル

楽しみだ

ケン

そうだな。

ケン

ケン

あ、ミノル

ケン

危ないっ！

ド　ン

ミノル

ミノル

…は？

ミノル

何が、起きたんだ…？

ミノルの視界は　真っ白だ。

ミノル

（これ、砂埃か…？）

砂埃の中、目を凝らすー。

ミノル

車が…何で歩道に上がって…？！

ミノル

ケン！どこに行った？！

ミノル

ケンー！

ミノル

ケン！しっかりしろ！

ケンに反応はない。

ミノル

ケン！

ミノル

おいっ！目を覚ましてくれ！

ピー！

ミノル

（何の音だ？）

ミノル

どこからこんな音が…

自己修復プログラム…

修復に　失敗しました。

ミノル

これ、ケンが前に言ってた、自己修復プログラムが作動しているのか……！

エラーNo.52

管理者に問い合わせて下さい。

ミノル

管理者…？！

ミノル

ケンをサイボーグにした「R社」って、もう治療とか管理やってないんだよな…？

ミノル

どうしたら…！

ミノル

（まずい、事故を見た人が通報したらしい…人が集まってきた）

ケンの正体がバレたら、きっと悪いことに利用されてしまう。

ミノル

（とりあえず、人目につかない場所まで運ぶ…！）

ミノル

はあっ、はぁ……

ミノル

くそ、術後の運動不足の体に響くぜ！

ケンは目を閉じたまま、ピクリともしない。

ミノル

（俺に人工心肺の手術をした執刀医なら、ケンのこと、何か知っているか…？！）

ミノル

ミノル

とりあえず、F先生に相談して、サイボーグのこと、人工心肺のこと、「R社」のことを教えてもらおう…！

ミノルはケンを✗✗病院へ運んだ。

ミノル

あのっ！先日人工心肺の手術をした、ミノルです！

ミノル

F先生、お願いします！

F先生は、人工心肺のことには詳しかったが、サイボーグのことと、自己修復プログラムについては何も知らなかった。

ミノル

どうしたらいいんだよ……！

ミノル

俺だけが助かったって、意味ねぇよ！！

医師

…一つだけ、方法がある

ミノル

何ですか？！

ミノル

俺、ケンのためなら

ミノル

何でもします！

医師

君が、ケン君の体の、自己修復プログラムを書き換えるんだ

ミノル

え？！

ミノル

ミノル

どうやって？！

医師

「R社」は、悪事が世間に露呈してから一切の情報を破棄している。

医師

まずは、彼がどんな素材で造られているのか調べ、どんなシステムで動いているのか突き止め、君がプログラムし直すんだ

ミノル

そんな、ゲームみたいに言わないでくださいよ！！

医師

それしか、方法がないんだよ

医師

やるか、諦めるか

医師

決めるのは君だ。

ミノル

………………………

医師

…君が悩んでいるこの間にも、ケン君のお父さんとお母さんは、ケン君が目覚めてほしいと、祈り続けているはずだ

医師

彼らは、ケン君がサイボーグだって知らないから

ミノル

…分かりました

ミノル

やれるだけ、やってみます！！

インターネット、過去の新聞、書籍など様々な媒体で「R社」のことを調べた。

ミノル

全く、情報がない…

ミノル

もっと、ケンから色々話を聞いておけば良かった……！

次に、例の人工心肺をしていた病院や、ケンが手術を受けた病院を回ったが、やはり資料は残っていなかった。

ミノル

くそっ、どうしたらいいんだ！

「自己修復プログラムがあっても、いずれは体は朽ちる」

ミノル

ケンが、そう言ってたよな…

ミノル

俺の生きられる時間にも、限りがある…

ミノル

ミノル

俺の残りの寿命…25年の間に

ミノル

ミノル

ケンを直したい

ミノル

まずは、ケンを構成している材料を特定するために、ロボットを開発している企業に、1件ずつ話を聞いてみよう！

長い道のりになる、ミノルはそう確信していた。

自分の残りの寿命で解決できる自信は一切無かったが、何もせず、諦めることはできなかった。

ミノル

（残された人生、ケンのために使う…！）

数十年後

ミノル

…できた！

ミノル

ついに、やったぞ！！

ギシ、と軋む音がする。

ケン

………………………

ミノル

久しぶりだな。

ケン

……………

ミノル

…俺が誰だか、

ミノル

わかるか…？

ケン

ケン

ミノ、ル…？

ミノル

そうだよ

ミノル

ケン……！！

ケン

俺、確か車にはねられて…

ケン

自己修復プログラムが勝手に起動して…それから…

ミノル

それから、全く目覚めなかったんだぞ！

ミノル

自己修復プログラムにエラーが生じたんだ！

ミノル

あれから、どれだけ時間かかったと思ってんだ？！

ケン

…まさか、あれから何十年か経ったのか…？

ミノルの顔には、以前無かったシワやシミが沢山あった。

それだけの年月が経っていると、ケンにはすぐに理解できた。

ミノル

そうだ！馬鹿！

ケン

ミノル、ありがとう…

ケン

まさか、お前に直してもらえるなんて思ってなかった…びっくりした

ミノル

ミノル

そうだよな…

ミノル

俺だって、まさかケンを直すためにこんなに勉強やるようになるとは、思わなかったよ

ケン

ミノルは、あれから体調は大丈夫なのか…？

ミノル

お陰様で、あれから全く問題無し。夜ふかしして勉強もしてきたけど、何とも無かったぞ

ケン

それなら…良かった

ミノル

ケン、お前はやっぱりサイボーグなんだよな。

ミノル

俺はあれから老けたけど、ケンはあのまま、時が止まったみたいだ。

ケン

…俺だけ若いままなんて、嫌だ

ミノル

ははっ

ケン

？

ミノル

そう言うんじゃないか、って思ったんだ。

ミノル

はい、これ

ミノル

俺からケンへ、プレゼント

ケン

これは…………？

ミノル

補修パーツ

ケン

補修…？

ミノル

「各世代バージョン」作ってみた。

ミノル

これを顔に付けたら、年相応になるんだよ

ケン

なんて、素敵なパーツなんだ…！

ケン

これなら、またミノルと並んで歩ける…！

ミノル

おまけに、これも作ったんだ

ケン

ケン

これ、何だ？

ミノル

自動車が基準のスピードより早く、なおかつこちらに近づいてきたら、警告音を鳴らして使用者に知らせるブザー、だ

ケン

これで車が近づいてきても安心だな

ミノル

そういうことだ

ケン

あははっ

ミノル

…俺、嬉しいな

ミノル

はじめて、ケンが声出して笑ってる姿、見た気がする

ケン

確かに、この姿になってから笑ったのは…はじめてかも

ミノル

良かった

ケン

これから、どちらかが寿命が来るまで

ケン

ずっと一緒にいよう

ミノル

そうだな

ミノル

ケンがサイボーグでも、俺は構わない。

ミノル

一緒に生きていこう

ケン

ああ

ケン

これからも、よろしくお願いします

f i n