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コメント
1件
もし見てくれる人がいるなら続き書こうと思います!
十年後
蒼は久しぶりに、あの町へ戻ってきた。
仕事の都合で立ち寄っただけの、短い滞在のはずだった。
風鈴坂は、昔より少しなだらかに見えた。
けれど、風が吹くとー
あの頃と同じ音が、確かに聞こえた。
蒼
坂の途中のバス停はまだそこにあった。
紬
聞き慣れた声に振り返ると、
そこにいたのは紬だった。
大人びた服装で、髪も少し短くなっている。
それでも、風に手を細める癖は変わっていなかった。
蒼
しばらくして、言葉が出なかった。
十年分の時間が、二人の静かに横たわっていた。
蒼
紬
風が通り、どこかで風鈴が鳴った。
紬
と紬が微笑む。
紬
俺はうなずいた。
忘れるわけがなかった。
ここで初めて、誰かを大切に思った気持ちを。
二人は並んで坂を見下ろす。
あの夏の続きが、今も風中に残っているようだった。
再会は偶然だったけれど、同じ風を聞いた瞬間、蒼は思った。
ーこれは、終わりじゃない。