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宇宙

……これで、いいんだ

日付が変わったのと同時に ネカフェに入り 1人、部屋でそう呟く

にじさんじに、ネット上に、 僕の名前はない

検索しても出てこないのは ずっと前から知っている

僕は時渡家に生まれた

不思議な力を持つ懐中時計の 所持が可能らしい

"宇宙"(ほし)と名付けられた

いつか懐中時計の力を使い、 宇宙のように広大で素晴らしい人間になれるように、とのことだった

そんな素敵な意味がある名前が 僕は好きだった

あの日までは

あれは僕が幼少期の頃

生まれた時から、自分は特別な 人間だと教えられて育っていた

5歳の頃だっただろうか

近所に住んでいた子が居眠り運転を していた車に轢かれて亡くなった

近所に住んでいたということ、僕と 別れた後に轢かれたということもありとても悲しみ、泣きじゃくった

そうして暫くたったころ、 僕はふと思いついた

宇宙

あの子が車に轢かれる前に戻れたら……!!

僕なら、それが可能だ

その時懐中時計を使い、 初めて過去に戻った

宇宙

……戻れた?

亡くなったはずの女の子

どうしたの?

目の前には不思議そうな顔をした 女の子が僕のことを見ている

亡くなったはずの女の子

具合が悪くなっちゃった?

宇宙

ううん、大丈夫だよ!

亡くなったはずの女の子

そっか!じゃあそろそろ帰ろう!!

亡くなったはずの女の子

お母さんに怒られちゃう

宇宙

うん

僕は女の子の手を握った

宇宙

(絶対に、死なせない……!)

帰り道、手を繋ぎながら歩いて帰る

亡くなったはずの女の子

それじゃあ私、こっちだから

亡くなったはずの女の子

バイバイ!!

別れる道に来た時、 あの子はそう言った

宇宙

あ、ま、待って!!

亡くなったはずの女の子

え?

手が離れかけた時、 離すまいと手を掴む

亡くなったはずの女の子

どうしたの?

宇宙

(別れた後に、車に轢かれた)

宇宙

(だからーー)

宇宙

今日はお家まで送るね

亡くなったはずの女の子

え、でも宇宙ちゃんも早く帰らないとお母さんに怒られちゃうんじゃない?

宇宙

大丈夫だよ!

宇宙

一緒に帰ろ?

亡くなったはずの女の子

うん!いいよ!!

そう言って手を繋ぎ直し、歩き出した

家が近くなってきた時

宇宙

(……来た!)

車が近づいてきた

よく見ると運転手は居眠りをしている

宇宙

こっち!!

亡くなったはずの女の子

わっ!!

近くの家に入り、車をかわす

その直後、車は電柱に ぶつかり、止まった

宇宙

良かった……ホッ

家の住民

なんの音!?

家の住民

まぁ!!勝手に家の敷地に入って!!

家の住民

って、警察!!救急車!!

近くに入った家の人が出てきて僕達を見るなりそう言うが、車に気付き、 慌てて家に戻って行った

亡くなったはずの女の子

びっくりした……

宇宙

大丈夫?怪我はない?

亡くなったはずの女の子

うん!宇宙ちゃんが手を握っててくれたから!!

亡くなったはずの女の子

ありがとう!!

家の住民

貴方達、怪我はない?

家の住民

さっきはごめんなさいね、びっくりしてしまって

宇宙

僕達も、勝手に入ってごめんなさい

亡くなったはずの女の子

ごめんなさい

事故が起こると分かっていたから とはいえ、ドアの前だが勝手に 入ってしまったので謝る

家の住民

いいえ、私もごめんなさいね

家の住民

もし、入っていなかったら車とぶつかっていたかもしれないものね

家の住民

良かったわ、怪我がなくて

その後、警察と救急車が来て 僕らは家の人に迎えにきて もらうことになった

あの子が死ぬ運命は 回避する事が出来た

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