ディストピア在住前【フタフタ編】

テンテンとのチャットや通話は その後もずっと続いていた。

彼はオレの話を心から楽しんでくれ、 軽い愚痴は2人で笑い飛ばし、 時に真剣に社会について話し合った。

どの話題一つとっても、オレには 宝石のように輝かしく大切なもので、 テンテンとの会話で得た新たな知見や 視点はかけがえのない財産として 脳内に蓄積されていく。

テンテンは時折、自分の性を恐れている ことをそっと教えてくれた。

どうしようもないこととは わかっているけど、と前置きをし、 毎回同じ話をするテンテン。

オレは自分でも驚くことに、変わらない 話題にうんざりするどころか何とか できないものかと毎回知恵を絞った。

世界屈指の科学者たちが頭を悩ませている 難題を、高校生のガキが解決できる わけがない。

そうわかっていても、テンテンのために 考えずにはいられなかった。

これをエゴと呼ぶのならそれで結構。

オレは、初めて出会った奇跡の人に、 オレの希望そのものの人に、 その性質のまま生きて欲しかった。

……そしてテンテンに、 あの時期がやってくる。