ウィルミス
ウィルミス
と、邪魔するぜ
ユキナ
!
ユキナ
リューンお姉ちゃん!?
カザル
安心してこれから治療するからね
ユキナ
えっと…
ユキナ
カザル……お兄ちゃん?
カザル
正解
カザル
リューンさんを担いできた男の人はグルフの知り合いだから大丈夫だよ
ユキナ
それなら良かった
カザル
それとお部屋借りてもいいかな?
ユキナ
うん!
ユキナ
お姉ちゃん治してくれるんでしょ?
カザル
もちろん
ユキナ
じゃあお姉ちゃんの部屋に案内するね
ユキナ
お姉ちゃん大丈夫?
カザル
うん問題ないよ
カザル
とはいえ少しは安静にしてもらわないといけないけどね
ユキナ
そっか…
カザル
カザル
ねぇユキナちゃん?
ユキナ
うん?
カザル
もし俺が君に少し魔法を教えると言ったらどうしたい?
ユキナ
教えて欲しい!
ユキナ
私ずっと何も出来ないの嫌だ
ユキナ
自分の前でお姉ちゃんや騎士さんが戦ってくれてるのに
ユキナ
それを見てるだけ…
ユキナ
守られているだけなんて辛いもん
カザル
じゃあほんの少しだけだが俺も協力しよう
カザル
動きやすい服に着替えてお外においで
ユキナ
わかった!
ユキナ
準備できた!
カザル
よし!なら早速教えていこうと思うが
カザル
一つ最初に聞いておきたいことがある
ユキナ
?
カザル
ユキナちゃんが何になりたいか
カザル
どうなりたいかを知りたいんだ
ユキナ
私がどうなりたいか?
カザル
例えば攻撃魔法を沢山覚えて力になりたいとか
カザル
逆に補助魔法や治癒魔法を覚えて力になりたいか
カザル
こういったことを聞きたいんだ
ユキナ
私がどう、なりたいか………
ユキナ
カザル
(そうだいっぱい悩むといい)
カザル
(まだ君の年齢ではあまりに難しい問題なのは確かだ)
カザル
(けど、幼いながらに何とか結論を出すこと)
カザル
(それが正しい間違い関係なく)
カザル
(君が導き出した答えに意味があるんだ)
ユキナ
私は…
ユキナ
ユキナ
私はみんなを守る力が欲しい
カザル
守る力って例えばどんなことかな?
ユキナ
上手く言葉に出来ないけど
ユキナ
魔法をたくさん打つとは違う
ユキナ
みんなが傷ついたら癒してあげる
ユキナ
そんなのじゃなくてとにかく守ること
ユキナ
誰も傷つかない、傷つけない力が欲しい
カザル
カザル
そっか…
カザル
難しい質問に答えてくれてありがとう
カザル
ユキナちゃんなりに答えを見つけてくれたおかげで俺も覚悟ができたよ
ユキナ
?
カザル
これからユキナちゃんに教えるのは俺が得意としている結界魔法だ
カザル
とても複雑で難しいけど一つでも覚えることが出来たら
カザル
そしたらもう立派な結界師と言ってもいいよ
ユキナ
結界魔法…
カザル
誰も傷つけないし傷つかない魔法だ
カザル
結界を張れば相手の攻撃を防げる
カザル
対象の相手を囲むように結界を張れば両者ともに傷つかなくて済む
カザル
使い方次第で色んなことが出来るのがこの結界魔法だ
カザル
どう?ユキナちゃんが望む『みんなを守る力』にピッタリでしょ?
ユキナ
うん!
カザル
ただし、さっき言った通りとても複雑で難しいものだ
カザル
めげないってこと約束できる?
ユキナ
大丈夫!
ユキナ
みんなを守る力が手に入るならなんてことは無い!
カザル
よし!それじゃあ早速始めようか
リューン
リューン
うぅん…
ウィルミス
お目覚めかな姉ちゃん?
リューン
ここは?
ウィルミス
あんたの部屋だ
ウィルミス
あまりにもボロボロだったから部屋に運んで治療したんだ
リューン
そう…
リューン
ありがとうウィルミス
ウィルミス
別に大したことはしてない
ウィルミス
ウィルミス
一つ聞きたいことがある
リューン
?
ウィルミス
何故ドラゴンという種族なのに人の味方をしてる?
リューン
別に人の味方なんてしてない
リューン
私の目的はグルフに一度でいいから勝つこと
リューン
人の味方をしてるのはあくまでその通過点に過ぎない
ウィルミス
なるほどな
ウィルミス
だが、あいつから勝利をもぎ取るのは至難の業だぞ?
リューン
だとしてもやる
リューン
負けっぱなしはプライドが許さない
ウィルミス
んじゃ、ちょっと昔話でもしてやる
リューン
?
ウィルミス
まず俺とグルフは魔王軍にいたことは話したな?
リューン
えぇ
ウィルミス
だが、俺とグルフは所属が違う
ウィルミス
俺は隠密機動隊の一兵士
ウィルミス
対するアイツは黒騎士兵団の兵士だった
ウィルミス
一見してみると接点がないように見えるが
ウィルミス
今話したのは最終的に行き着いた先だ
ウィルミス
軍に入るとどの魔物も必ず一度騎士団に入れられ新兵から始まるんだ
ウィルミス
そこで俺とグルフは出会った
ウィルミス
この時点でアイツは化け物だった
ウィルミス
上下関係をしっかりさせるため新兵は程なくして隊長格と模擬戦をしなければならない
ウィルミス
大抵の場合はもちろん返り討ちに会うんだが
ウィルミス
グルフだけは違った
ウィルミス
模擬戦が開始したものの数分で隊長格を負かした
リューン
うっそ……
ウィルミス
その瞬間その場にいたやつらは複雑な気持ちになっただろうな
ウィルミス
隊長を倒したことの凄みと同時に倒してしまったという恐怖や焦り
ウィルミス
まぁアイツはそんなもの感じてなかったがな
ウィルミス
その出来事に触発された俺はグルフと同じように隊長格を負かした
ウィルミス
が、もちろんかなり時間を使ったがな
ウィルミス
そしてその後グルフに勝負を挑み案の定俺は為す術なくやられた
ウィルミス
それから一度でいいからアイツから勝利をもぎ取ろうと力をつけたが
ウィルミス
除隊する頃にですら1度も勝てなかった
リューン
そんなに強いのアイツ…
ウィルミス
どのくらい試合をしたか覚えてないが
ウィルミス
少なくとも千は超えてる
ウィルミス
ま、全敗してるけどな
ウィルミス
そんな化け物から勝利をもぎ取るのは至難の業ってものよ
ウィルミス
それでもやるのか?
リューン
えぇ、やらせてもらうわ
リューン
むしろ燃えてきたまである
ウィルミス
血気盛んな姉ちゃんだなアンタ
リューン
ドラゴンなんてそんなもんよ
ウィルミス
だが、あいつをやる前にまずは俺を越えないとアイツにはとどかないぞ?
リューン
余裕で超えてあげる
ウィルミス
隠密機動隊と言えど実力で言えばS級冒険者たちと肩並べるかそれ以上だぞ?
リューン
別に怖くないわよ
リューン
ドラゴンって生き物自体S級だからね
ウィルミス
そりゃそうか
ウィルミス
んじゃ傷が治ったらまた特訓だ
リューン
次は一発でも傷を付けてあげる
ウィルミス
期待せず楽しみにしておこう