男
男
男
…また愚痴か。
名前を呼ばれたすずは、 気だるそうに顔をあげた。
すず
男
男
まったくこの男は。 いつも私の話なんか聞いちゃいない。
この情けない声をあげている男と 私はいつも一緒にいる。
すず
男
男
男
こっちの言うこともおかまいなしに、男はつらつらと事の経緯を話し始める。
付き合っていた彼女との喧嘩が絶えなく なり、自分から別れを切り出した。
その元彼女から、子供ができたから 結婚すると報告がきたと言うのだ。
すず
すず
男
それはそうだろう。
自ら別れを選んだとしても、一度は 好きになって付き合った相手だ。
その相手の気持ちが、もう自分ではない誰かに向いていると思うと表現しがたい 複雑な気持ちにもなるのだろう。
すず
すず
例えば、私みたいな。
友人
不在着信
男
男
そう言うと電話をかけ直し、 友人との会話を始める。
相手の声は聞こえないが、どうやら 飲み会をセッティングしてくれるだの 新しい女の子を紹介してくれるだの、 そんな浮かれた話のようだ。
すず
ふう、とため息が漏れる。
電話が終わったようで、少し明るさが 戻った表情で男がこちらを見ると、
くしゃくしゃと頭を撫でられた。
男
嬉しそうな顔しちゃって。
すず
男
うん、がんばって。
私はいつでもあなたの帰りを待って、 何かがあったらまた話聞いてあげるから
頭を撫でる手が離れると
首輪の鈴がりん、と小さく鳴った。
すず
男
男
また、くしゃくしゃと頭を撫でられる。
すず
私になんて名前を付けるか悩んで、 首輪の鈴を見て「すず」って つけちゃう安直なところもね。
男
男の横で丸まった猫は
にゃーん、と嬉しそうに鳴いた。
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