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髪を愛しそうに撫でられ シャツの襟を掴んで引き寄せられる
そのままソファーに押し倒され 首に顔を埋められる
彼は僕の身体の全てを知り尽くしている
逃げようとしたって
真っ黒の瞳に見つめられ 全てを読まれてしまう
離して欲しくても それは絶対に無理だ
正直にしかなれない 彼に嘘は通用しない
恥をしのいで伝えれば 目を細めて笑って
優しい言葉を降り注がれて また抜け出せなくなっていく
恋は愛に変わっていった そして僕ももう、彼から抜け出せない
虜になってしまったんだ
こんな恐怖にも似た日々が 永遠に続くと思ってた
ある日僕が帰ってくると 彼は真っ暗な部屋で 無言のまま表情を閉ざしていた
さかたの悲痛な声に 僕はどうにかなりそうで
次の日に お揃いのものを買いに行った
さかたが見つけたのは シルバーのピアス
彼の好みらしいペアリングで 僕も好きなデザインだった
彼が2人分を買ってくれて 嬉しくて仕方なくて
家に帰ってすぐつけようと思った
それでも彼には敵わない
気付いたら終わってて 全然…痛くなかった
彼はこうやって僕を焦らす
彼の手が僕の頭を撫でる
近づけたかな一歩でも
耳が火照っているのが 彼に近づけた証拠になるなら
2人を繋ぐ何かになるなら
僕は縛られ続けたい
僕が僕のままだったら 彼は彼のままになれないから
さかたと出会って 半年が経った
最近のさかたは いつにも増して怪しい
僕から彼を求めても 軽く受け流されてしまったり
家に帰ってきてもいなかったり
何かあったんじゃないか
不安になってしまう
しばらく彼が帰ってこなくて 不安に押し潰されそうだった そんなある日
久しぶりに彼が帰ってきて すぐに彼を抱き締めると
彼からは強い酒の臭いがして その身体は随分と 痩せ細っていた
ドンドンドン!!
いつもと変わらない笑顔 僕の頭を、優しく愛しそうに撫でる
初めて聞くさかたの強い声
このままドアの向こうへ行ったら 彼はもう 二度と戻って来ない気がして
怖くて寂しくて痛くて 涙が流れた
それからのことは あまりしっかりと覚えていない
慌てて彼を追い掛けて
ドアの向こうにいた人達に さかたを返せって叫んだら
殴られたんだっけ…?
さかたはやめろ、って 叫んでくれて…
泣いてくれた
でも、それが僕らの最後
僕が家に押し込まれたのを見届けたら
もう、さかたは振り返っては くれなかった