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あぁ、もう間に合わない

あと5分で終電が出るのに

こんな時に限って靴のヒールが折れてしまった

もう絶対に間に合わないという絶望と悲しみが一気に襲ってきた

道の端に座り込んで、ただ根元から折れたヒールを眺める

隣を歩く人達の冷たい目線が刺さる

私は目にうつるけど、それだけの存在

世界から1人取り残された気分になる

自分が情けなくて、恥ずかしい

不意に涙が頬をつたった。

その時

男性

大丈夫ですか!?

私は驚いて、男の人を見た

は…はい。

男性

お身体は……?

いえ。身体は大丈夫です。
ただ、ヒールが折れて…

男性

あぁ!本当だ!これでは歩けませんね……

まるで自分の事のように悲しんでいる

はい。でも、大丈夫です。
気になさらないでください。

何とか笑顔をつくってみせた

男性

……。

男性

どうやって帰られるんですか?

電車です。
ああ、もう後5分で終電過ぎちゃいますね汗

男性

後5分……

彼はチラリと腕の時計に目を落とした

男性

……いける!

え?

男性

ごめんなさい!少し失礼します!

その瞬間、彼は私の腰の下に手を入れ、私を持った。

お姫様だっこだ。

そして、勢いよく走り出した。

えっ……え?

男性

勝手な事をして本当にごめんなさい!

男性

だけど、間に合うはずです!

何が起こっているのか一瞬分からなかった

それでも、彼が私をお姫様だっこし、 駅へ走ってくれていることはわかった。

通りを歩く人の目線が突き刺さる 本日2度目だ。

それでも、なんだか嫌じゃなかった

お姫様だっこなんて何年ぶりだろう?

彼の顔を見る。

顔を赤くして、 一生懸命走ってくれているのがわかる

むかし、絵本で見た 王子様に見えた。

男性

ちょっ、なんだあいつら

女性

何あれ、ウケるんだけど

周りの人の声が聞こえる

でも今は、そんなの全然気にならない

本当のお姫様になったみたいだった

ただ、この時間がずっと続けばいいのに、なんて思っている自分に気づく。

男性

はぁっ…。あ!

男性

あの電車ですね!

は、はい!

急いで、今にも発車しようとしている電車に飛び乗る

男性

はあっはあっ。

男性

間に合ったぁ……。

あ、ありがとうございます!

女性

え?何あの人たち……??

その時、周りの目線と声で、 電車の中でなお、お姫様だっこをされている自分に気づく。

男性

あっ、あぁごめんなさい!

私を下ろす手つきからも 彼の優しさが感じられた

あの、本当にありがとうございます……。

でも、私の電車に乗らせてしまって……。

男性

いえいえ、私が自分からやったことですし、歩けない貴方を1人電車に置いていくことはできません。

男性

あ……
でも、さっき会ったばかりの人がついて行くのは嫌ですよね……ごめんなさい。

男性

え、ええと、あの、
近くでこの時間でも靴を売っている所を探しますね。

そう言って、荒く息を切らしながら携帯に向かう彼が愛しかった

あの……名前、教えてください。

男性

あ、涼太です。涼しいの涼に太陽の太。

私は茜です。茜色の茜。

あの、これ。

名刺を差し出した。

男性

あ、俺も。

さっき会ったばかり。

名前も今知った。

それでも、この胸の高鳴りは嘘じゃない

お姫様になった気分だった。

いい歳してこんな大人がって感じだけど、

それでも

あなたの

お姫様になってもいいですか?

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