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ガイド妖精
ガイド妖精の音声に、白い空間に集められた20人の生徒が注目する。
ガイド妖精の周囲に黒い煙に包まれた球が無数にあらわれた。
黒い球はグニグニと粘土のように変化して、狼や犬のような姿に変化した。
これは魔物、人工魔物《イミテーション》だ。
ガイド妖精
これは入学試験の最終試験の再現だ。
ガイド妖精
ガイド妖精
ガイド妖精
そのガイド妖精の発言に、場の空気が凍りついた。
入学してからのアミ戦で『戦う』ということにはある程度の耐性はついていたけど、ノービスクラスのアミ戦はレクリエーションに近いものが多かった。
まして、ここに集められた生徒達は魔法具《マギアツール》を持っていなかった。
最終試験の時はチームの仲間に助けてもらった子がほとんどで、真っ向から魔物に立ち向かうのすらはじめてだろう。
ぼくも最終試験の時は、アルクとユトリがいてくれたことと、闇《ケイオス》の魔法が発動してくれたことで、何とかクリアできた。
アルク
そんな空気の中で、最初に動いたのはアルクだった。
この思い切りの良さは、入学試験の時のシシロウを彷彿とさせる。
ショウリ
ショウリ
ショウリもダーツを持って前に出る。
そうだ。
ぼくだって、今は魔法具《マギアツール》のピストルを持っている。
武器として考えたら、最強と言っていいほどの魔法具《マギアツール》だ。
しかも相手は、1度は勝っている人工魔物《イミテーション》の魔物犬。
怯える理由はない。
ぼくもピストルを両手で構えて前に出た。
他の生徒もアルクやぼく達に感化されて、魔物犬に向かって挑みはじめた。
試験が始まり、魔物犬の群れが縦横無尽に走りはじめた。
アルク
アルクが扇子をあおぐと同時に風の魔法を発動する。
台風のようなものすごい突風が吹き荒れ、竜巻となって魔物犬の群れが砂埃のように軽々と舞い上がった。
上空高くまで持ち上げられた魔物犬達は、竜巻から吐き出されて、四方八方へと投げ出される。
何メートルも上空から落下した魔物犬達は、空中で体を反転させて、スタッと着地した。
動きは派手だったが、全員無傷だ。
アルク
幼少期から魔法教育を受けていて風を使いこなせるアルクだが、戦闘の手段としては習っていなかったみたいだ。
アルク
アルク
アルク
アルク
アルクが扇子を振り回して荒削りの嵐《インスタントストーム》を連発する。
魔物犬だけじゃなくて、他の生徒達も巻き込み始めている。
ガイド妖精
ガイド妖精が暴走するアルクを止めに入る。
アルク
ガイド妖精
アルクに声をかけたガイド妖精が扉に変形した。
アルク
ガイド妖精
ガイド妖精
アルク
なんだか被害が広がらないように、特別に合格扱いになったみたいだ。
アルク
アルクがぼく達に向かって手を振ると、上空に浮いていたガイド妖精が数体吹き飛んでいった。
扇子を持っている手を降ったから。
ガイド妖精
ガイド妖精
飛ばされていったガイド妖精が戻ってくると、アルクを扉に通そうと一丸になって押しはじめた。
アルク
アルク
合格じゃなくて退学じゃないか?
っていう流れで、アルクは試験会場をあとにした。
ショウリ
ユウゴ
次はぼく達が続く番だ。
気を取り直して、魔法具《マギアツール》のピストルを構えて、魔物犬に銃口を向ける。
魔物犬が目の前に来た時を狙って、引き金を引く。
発射された弾丸は一直線に魔物犬に向かっていく。
弾丸が魔物犬の前足をかすめる寸前で、魔物犬が右に方向転換、地面に着弾した。
となりの魔物犬を狙って、もう一度引き金を引く。
カチッ、カチッ。
引き金が軽く手応えがない。
まさか、1発しか撃てないの?
すぐ目の前まで魔物犬が迫る。
ユウゴ
とっさに右足で魔物犬を蹴り上げた。
ショウリ
ユウゴ
ショウリ
ユウゴ
ショウリ
ショウリ
ショウリが右の手のひらにぐっと力を込める。
するとブワッと光の粒子が集まってきて、ダーツの形になって実体化した。
ショウリ
ショウリ
ユウゴ
ピストルを両手で持って、弾倉があるだろうピストルの内部に意識を集中させる。
でも、何も感じない。
アドバイス自体はありがたかったけど、すぐに実行するのは難しそうだ。
ショウリ
ユウゴ
ショウリの声で振り返ると、魔物犬がすぐ真後ろにまで近づいていた。
あと一飛びで足にかじりつかれそうなほどの至近距離だ。
逃げるのは間に合わない。
迎撃しようにも、ピストルに弾はない。
魔物犬が跳び上がる。
反射的に後ろに走ろうとして足がもつれ、ぼくの体は後ろ向きに勢いよく倒れた。
仰向けになったぼくの真上を、魔物犬が飛んでいく。
早く起きないと!
今は運よく逃れたけど、次は逃げられない。
着地した魔物犬が方向転換して、ぼくに向かってきた。
魔物犬がぼくの肩に咬みつこうとした寸前、顔を伏せてその場にうずくまった。
ショウリ
ショウリが安堵の声を発しているのが聞こえた。
ショウリ
ユウゴ
理由はわからないけど魔物犬が動けない今がチャンス。
急いで起き上がると、ショウリのそばまで走って逃げた。
ユウゴ
ショウリ
うずくまっていた魔物犬が立ち上がり、ぐるるると唸り声をあげながら、ゆっくりとこっちに体を向けた。
右目にダーツの矢が刺さっていた。
ユウゴ
ショウリ
魔物犬の背後に目を向けると、何本もダーツの矢が落ちていた。
ショウリ
ユウゴ
何本も投げたうちの1本が魔物犬にヒットしたおかげで、ぼくは助かったらしい。
本当に運が良かった。
ショウリ
ショウリが右手に2本のダーツの矢を出現させた。
戦意を感知したのか、魔物犬がショウリに向かって走り出した。
ショウリ
ショウリが2本のダーツの矢を同時に投げた。
並んで飛んでいたダーツの矢は途中で二手に分かれて、魔物犬の左右の前足に1本ずつ刺さった。
魔物犬がその場で転がり、のたうち回る。
ユウゴ
ショウリ
ショウリが右手に、また新しいダーツの矢を1本出して持っていた。
よく見ると右手の袖が風もないのに、はためいている。
違う、風はあるんだ。
ショウリの右手の周りにだけ。
ショウリ
ショウリ
思ってね、って。
ショウリの魔法属性はアルクと同じで風《アエル》。
同じ属性の魔法をお手本にしたから応用しやすかったというのもあるかもしれないけど、思ったからって簡単に実現できるものじゃないだろう。
ショウリ
右目と両前足にダーツの矢を受けた魔物犬は、ふらふらで戦意喪失。
まともに歩くことも出来ていない。
ユウゴ
ショウリ
新しく出したダーツの矢を放つ。
魔物犬にまっすぐ向かっていき、眉間にストンと突き刺さった。
魔物犬は倒れて動かなくなった。
ショウリ
ユウゴ
ショウリ
ショウリ
ユウゴ
ショウリ
ガイド妖精の『魔法具《マギアツール》は各人の能力に合わせた物が選出される』の言葉そのままに、ショウリに1番合ったダーツが選ばれたみたいだ。
ぼくのピストルも、ぼくに1番合った魔法具《マギアツール》ということなのだろうか。
ガイド妖精
ガイド妖精が降りてきて扉に変形した。
ショウリ
ショウリの戦いを見て、ヒントをもらった。
魔法具《マギアツール》は自分に合った物が選ばれるのだとしたら、ぼくはピストルを使いこなせるはずだ。
ピストルのグリップを握り直し、落ち着いて意識を集中させる。
ガチャン。
手の中に重みを感じた。
弾丸が装填されたんだ。
この空間に残っているのも5~6人。
生徒も魔物犬もまばらになっている。
そのうちの1体に狙いを定めて、引き金を引く。
弾丸は魔物犬の後ろ足をかすめた。
ぼくに気づいた魔物犬が、こちらに向かって走って来た。
ユウゴ
ピストルに意識を集中させる。
さっきと同じようにしているつもりなのに、あせりのせいか弾丸が装填されない。
魔物犬が迫る。
迫る。
迫るっ!
銃口を向けて引き金を引くが、軽い。
手応えがない。
カチャ、カチャと軽い金属音しかたてないピストルから弾丸が出ることはなく。
魔物犬の鋭い牙が、ぼくの脇腹に深く突き刺さった。